GS3嵐×バンビ
犬猿の仲? テーマ:強気バンビ
廊下から響いてくる足音。
教室のドアの前で一旦止まり、続けて勢いよくドアが開く音が教室に響いた。
残っていた生徒が一斉に向いた先には小柄な体に精一杯肩をいからせた美奈子が仁王立ちで立っている。釣りあがった目がすぐ近くにいた一人の男子生徒ときろんと睨んだ。
「ねぇアイツどこ行った?」
可愛らしい姿に似合わないドスの利いた声に、思わず首を竦めて恐る恐る口を開く。
「ええと、不二山くんなら、すぐ教室出て……中庭だった、かな?あっちの方に」
「もうっ、アイツ素早いなっ。ありがとちょっと行ってくる」
ぴしゃんと叩きつけるように勢いよくドアを閉めて、またドタバタと廊下に響く足音が遠ざかっていく。
足音が完全に聞こえなくなったのを合図に、静まり返った教室全体が安堵の息に包まれる。
「また小波さんと不二山か」
「いい加減、慣れればいいのにねぇ」
溜息交じりにつぶやきあう。
小波美奈子と不二山嵐。
大迫クラスでは犬猿の仲の代名詞として何かとぶつかり合うことで評判になっていた。いや正確にいえば少し天然っ気のある不二山のちょっとした男尊女卑めいた発言に美奈子が一方的に噛み付いているというのが正しい表現といえる。
廊下を抜けて階段を二段抜かしで駆け抜けて最後の残り五段を一気に飛び降りる。
「よっ、と」
花椿カレンにつけられたバンビのあだ名に相応しくふわりと飛び上がって着地。軽くスカートを払って、また駆け出す。
「ろ、廊下を走るのは禁止!」
既に走り去った後に注意の声が虚しく響いた。
地面に響くような足音にノートにメモする手を止めて不二山が後ろを振り向いた。
「なんだ、お前か」
「お前か、じゃない」
中庭の端、柔道着姿で胡坐をかいたまま柔道同好会用の活動ノートを閉じる。
「不二山、あんたこないだ石井さんに失礼なこといったでしょ」
「石井?誰だ」
「クラスの女の子の名前くらい覚えなさいよ!」
「ん、俺なんか言ったか?」
「またとぼけて、アンタみたいな時代錯誤の男尊女卑発言、今じゃ立派にハラスメントなんだからね」
発端の発言というのも実際問題ちょっとした言葉の捉え方の違いでしかない。男ならこうあるべき女ならこうあるべきというのを自分考えを思ったままに口にしただけであり、言われた側である石井本人ですら気にしていなかったのだが、運悪く美奈子が聞きつけてしまった為、一方的に抗議するという形になってしまっている。
「ふーん、そうか?」
当の不二山としては、自分の発言の何に不満があって噛み付いてくるかが理解できない上に当事者でないはずの美奈子から何故怒鳴られなければならないのか不思議でしょうがない。
「ちょっと不二山!聞いてんの」
「聞いてる。つーか、そんなでけー声ださなくても聞こえる」
腕組みして仁王立ちする美奈子の前で、手にしたノートを開く。
「ぜんっぜん反省の色がない」
「てか、俺お前には何も言ってねぇじゃん」
「あたしに言ってなくても、アンタの男尊女卑発言は見逃せません。ていうか、そーいう頭の固い女の敵はこのあたしが許しません」
「女の敵なぁ」
ぽりぽりと興味なさそうに頭をかいて、ふと何かを思いついたように顔を上げる。
「そこまで言うなら、お前、俺を矯正してみるか?」
「は?」
ぱらりと広げたノートを掲げてみせる。
「前も声掛けたろ?柔道部マネージャーの話。今は俺一人だし、ここでお前の言う女の敵を一から叩きなおしみろ」
眉根を寄せて睨み合う。
「それとも無理か?」
「よーし、わかった。アンタのその古臭い考え、徹底的に教育し直してやる。覚悟しときなさい」
「押忍、望むところだ」
してやったり、と。悪い笑顔を浮かべてノートに挟んだ入会届けを引っ張り出した。
「つーかさ、あれ最初っから奴の作戦じゃねーの?」
「お前知らねぇのか?不二山の奴、ああ見えて結構狡猾だぞ」
END
廊下から響いてくる足音。
教室のドアの前で一旦止まり、続けて勢いよくドアが開く音が教室に響いた。
残っていた生徒が一斉に向いた先には小柄な体に精一杯肩をいからせた美奈子が仁王立ちで立っている。釣りあがった目がすぐ近くにいた一人の男子生徒ときろんと睨んだ。
「ねぇアイツどこ行った?」
可愛らしい姿に似合わないドスの利いた声に、思わず首を竦めて恐る恐る口を開く。
「ええと、不二山くんなら、すぐ教室出て……中庭だった、かな?あっちの方に」
「もうっ、アイツ素早いなっ。ありがとちょっと行ってくる」
ぴしゃんと叩きつけるように勢いよくドアを閉めて、またドタバタと廊下に響く足音が遠ざかっていく。
足音が完全に聞こえなくなったのを合図に、静まり返った教室全体が安堵の息に包まれる。
「また小波さんと不二山か」
「いい加減、慣れればいいのにねぇ」
溜息交じりにつぶやきあう。
小波美奈子と不二山嵐。
大迫クラスでは犬猿の仲の代名詞として何かとぶつかり合うことで評判になっていた。いや正確にいえば少し天然っ気のある不二山のちょっとした男尊女卑めいた発言に美奈子が一方的に噛み付いているというのが正しい表現といえる。
廊下を抜けて階段を二段抜かしで駆け抜けて最後の残り五段を一気に飛び降りる。
「よっ、と」
花椿カレンにつけられたバンビのあだ名に相応しくふわりと飛び上がって着地。軽くスカートを払って、また駆け出す。
「ろ、廊下を走るのは禁止!」
既に走り去った後に注意の声が虚しく響いた。
地面に響くような足音にノートにメモする手を止めて不二山が後ろを振り向いた。
「なんだ、お前か」
「お前か、じゃない」
中庭の端、柔道着姿で胡坐をかいたまま柔道同好会用の活動ノートを閉じる。
「不二山、あんたこないだ石井さんに失礼なこといったでしょ」
「石井?誰だ」
「クラスの女の子の名前くらい覚えなさいよ!」
「ん、俺なんか言ったか?」
「またとぼけて、アンタみたいな時代錯誤の男尊女卑発言、今じゃ立派にハラスメントなんだからね」
発端の発言というのも実際問題ちょっとした言葉の捉え方の違いでしかない。男ならこうあるべき女ならこうあるべきというのを自分考えを思ったままに口にしただけであり、言われた側である石井本人ですら気にしていなかったのだが、運悪く美奈子が聞きつけてしまった為、一方的に抗議するという形になってしまっている。
「ふーん、そうか?」
当の不二山としては、自分の発言の何に不満があって噛み付いてくるかが理解できない上に当事者でないはずの美奈子から何故怒鳴られなければならないのか不思議でしょうがない。
「ちょっと不二山!聞いてんの」
「聞いてる。つーか、そんなでけー声ださなくても聞こえる」
腕組みして仁王立ちする美奈子の前で、手にしたノートを開く。
「ぜんっぜん反省の色がない」
「てか、俺お前には何も言ってねぇじゃん」
「あたしに言ってなくても、アンタの男尊女卑発言は見逃せません。ていうか、そーいう頭の固い女の敵はこのあたしが許しません」
「女の敵なぁ」
ぽりぽりと興味なさそうに頭をかいて、ふと何かを思いついたように顔を上げる。
「そこまで言うなら、お前、俺を矯正してみるか?」
「は?」
ぱらりと広げたノートを掲げてみせる。
「前も声掛けたろ?柔道部マネージャーの話。今は俺一人だし、ここでお前の言う女の敵を一から叩きなおしみろ」
眉根を寄せて睨み合う。
「それとも無理か?」
「よーし、わかった。アンタのその古臭い考え、徹底的に教育し直してやる。覚悟しときなさい」
「押忍、望むところだ」
してやったり、と。悪い笑顔を浮かべてノートに挟んだ入会届けを引っ張り出した。
「つーかさ、あれ最初っから奴の作戦じゃねーの?」
「お前知らねぇのか?不二山の奴、ああ見えて結構狡猾だぞ」
END