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GS3嵐×バンビ

甘味処 テーマ:嵐さんと甘味処

 古い日本家屋をそのまま改装した店内はほぼ九割以上が女性客に占められている。
 そんな中を物怖じすることなく美奈子の手を引いてずんずんと奥へと足を踏み入れていく。
「向うの奥、空いてるぞ」
 通る間、席についた数名の若い女の子がちらっと不二山と美奈子の姿を見てきゃあきゃあと語りあうのが見える。
「うん」
 内心恥ずかしさを感じつつも手を引かれるままに一番奥のテーブル席へと向かう。
 どっしりした重みのある黒いテーブルの上に置かれた布張りに紐で止められたメニューをめくって達筆で書かれたお品書きと写真を指先で辿る。
「こんなお店あったんだ、すごく雰囲気いいね」
「だろ?ここ、前に見つけて、次は絶対お前を連れてこようって思ってた」
「それ、一人で?」
「うん」
 メニューをめくる手を止めて思わずまじまじと不二山の顔を見る。この女の子だらけの店に一人で入っていって注文をする姿を想像してしまう。もっともじろじろ見られていたとしても全く物怖じしないであろうことは想像に難くなかったが。
「どれにしよう、かな」
「前はこれ食ったな、特選あんみつセット。これに一緒についてくる抹茶が苦くて、あんみつにすげー合う」
「へぇ」
「今度はどうすっかな、豆葛餅の黒蜜かけもうまそうだよな」
「どうしよう、あ、この白玉栗ぜんざいと煎茶セットもおいしそう」
 メニューをめくって写真を見比べつつ、ウキウキと頭を悩ませる。
「よし、決めた。俺この抹茶あんみつにする」
「うん、私は白玉栗ぜんざいセットにするね」
 和服姿の給仕に注文を済ませて水を一口飲んだ。

 湯気に混ざって甘い香りがふわりと鼻をくすぐる。
 漆塗りの木製トレイに乗ったぜんざいと、手作り感のある陶磁器の湯のみに入った熱い煎茶。
「いただきまーす」
 木の匙で白玉を掬い上げて軽く息を吹きかけてから口に含む。口の中に広がるあっさりとした甘さと餡の絡んだ白玉の感触。
「おいしい!」
「うん、こっちもうまい」
 頬を押えて嬉しそうに笑う美奈子の顔をじっと見る。
「どうしたの嵐くん?」
「いや、やっぱりなって」
「何が?」
「そういう顔するだろうなーって、この店見つけた時から思ってた」
「え?」
「お前が幸せそうに甘いもの食べる顔見たかったから」
「そ、そ、そう、かな」
 なんの前触れもなく平然と言われた言葉に真っ赤になる。
 近くの席でちらちらこちらを見ていた女の子数名が顔を見合わせてきゃあきゃあつぶやきあうのが見えて、耳まで真っ赤になってしまう。
「どした?」
「な、なんでも……ほら、た、食べよう?」
「ん?うん」
 無自覚の殺し文句にはいつまでたっても慣れそうにない。

END
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