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GS3嵐×バンビ

紅葉狩り テーマ:山道で二人きり

「嵐くん」
「ん?」
「重くない?少し休憩しようか?」
背中ごしから遠慮がちにかけてくる声に進む足を緩める事無く、ごつごつした登山道を歩いていく。
「平気だ、これくらい」
「でも」
秋の山道。日は少し傾いて、頬を撫ぜる空気は大分冷たい。
朝から二人で紅葉狩りで山に登ったものの、帰り道で足首を痛めた美奈子をずっと背負って歩いていた。
「俺は平気だから無理すんな、まだ痛むか?」
「ううん、大分おさまったよ。歩くくらいなら平気だから下りても大丈夫」
「ダメだ」
「う……はい」
頑として譲らない不二山の声に背中にしがみついたまま縮こまる。
「も少ししたら休憩所つく、そこついたら足の調子見てみよう。それまで我慢しろ」
「うん、ありがと、嵐くん。ごめんね」
「いいよ、謝らなくて」
でも、ごめん。と心の中で付け加えてペースを落とさずに歩く不二山の背中にぎゅっとしがみついた。

靴の裏に感じる細い枝を踏みしめる乾いた感触。
ずっと歩き尽くめで来ていたがペースはさほど良くはない、見あげた空は思ったより暗くなっている。
さっきは美奈子の手前平気だ、とは言ったものの。この調子だと山を下りるまでに夕暮れをかなりすぎてしまいそうだ。けれど、足を痛めた美奈子を無理に歩かせるわけにも行かない。休憩所についたら家に帰りが遅くなるよう連絡を入れさせたほうがいいかもしれない。
背中に感じる重み、首にしっかりと回った細い腕、抱えた足の感触、時折頭越しに感じる息遣い。
普段からストレッチで触れたり、二人で出かけた帰りに美奈子に触れられたりはするが、これだけ長い間ぴったりとくっついていることはあまりなかった。首の辺りに触れている腕と時折耳元にかけられる声、背中に感じている柔らかい感触、背中全体から伝わってくる温かさ。なんだか、急かされているわけでもないのに進める歩が早くなる。
ぱき、と。踏みしめた枝の折れる音で我に返る。
一端足を止めて、美奈子の体を背負いなおす。
早く下りよう、そうしなければいけない気がする。
「なあ。足、どうだ?」
顔を見られないように声をかけるが返答はない。
「美奈子?」
さっきまで背負っていた重さとはまた違う、ずしりととした重みが背中全体に掛かってきた。
「美奈子……」
力が抜けた状態のまま首の後ろにぺったりと頭を乗せて寝息を立てている。寝た子は重いというが、まさに全体重を乗せた重みがのしかかってくる。
「寝ちまったか」
少しホッとしたように、横にずり落ちそうになった体を背負いなおして歩き出す。
「確かにちょっと重いな、こうなると。いい訓練になるかもしんねーけど」
こうして全てを預けられた状態に不思議な心地よさも感じる。
「……よくねえか、やっぱ」
少しモヤモヤした頭を払うべく、小さく首を振ってまた山道を下りていった。

END
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