GS3嵐×バンビ
その手に送るもの
※
お誕生日祝いに書いた作品です。
バンビの名前がフォロワさんのお名前になっています。
「なぁ、サヤ。帰りちょっと寄りたいとこあるけどいいか?」
練習後、着替えも終わり、肩にスポーツバッグをかけた格好で部室に鍵をかけながら不二山が顔をあげた。
「え?うん、いいよ」
「よし、寒いから外じゃなくて下駄箱んとこで待ってろ。鍵、職員室に返したらすぐ行く」
「うん、後でね」
じゃあなと手を振って、白い息を吐きながら弾んだ足取りで先に校舎へと走っていく。
いつもとちょっと違う妙に楽しそうな不二山の様子に少し首を捻りながらカバンを片手にその後をゆっくり追った。
下駄箱前、外と比べて風はないがやはり身を切るように寒い。時折見知った顔が通りがかっては手を振って帰っていくのを見送って不二山が戻ってくるのを待つ。
カバンを下に置いて両手に息を吹きかける。年明けからこの所ずっと冷え込む日が続いていて、擦り合わせた手は冷たく冷え切っていた。
伸ばした手を広げてじっと見る、マネージャーの仕事は掃除や片付けなどの水作業も多いせいで随分手が荒れている。
「後でハンドクリーム塗らなきゃ」
両手で擦り合わせていると、遠目に駆け足でこっちに向かってくる姿が目に映った。
「おかえり、嵐くん」
「ああ、寒かっただろ?」
手がふわりと暖かくなる。
「手、冷てぇな。悪いな、待たせて」
「う、ううん、平気」
ここまだ学校、と。口に出そうになったのを飲み込んでもごもごとうつむく。
「よし、いこ」
しっかりと指を絡めて握った手、すっぽりと包む程大きいのにぽかぽかと子供のように温かい。
「ねぇ、どこ寄るの?」
「行けばわかる、ほら」
「あ、うん」
手を引かれるまま、後を追う。
夕暮れ過ぎの商店街。帰宅ラッシュよりは少し早く、夕飯の買出しには少しだけ遅い時間帯。
頬を撫でる風は冷たいけれど握り合った手は温かくて、一緒に歩いているだけで胸の奥からじわじわと暖かくなる気がする。
「ほら、ここ」
「え?」
足を止めて指差したのは、ジュエリーホイップの前。
「え、ここって」
サヤ自身は普段買い物でよく訪れるが、男の不二山にとってはしょっちゅう訪れる店とは言いがたい。疑問を口にする前にさっさと手を引いて店へと入っていく。
「いらっしゃいませ」
店内には数名の客があれこれアクセサリーを眺めたり手に取っている姿が見える。
「ね、嵐くん。えっと」
ここに何の用?と言葉にする前に。
「なあ、お前どれが1番いい?」
「えっ」
指差した先にはシルバーのリングが並んだカウンター。
「ええっ」
「こないだも見に来たけど、サイズとかわかんなくて。サイズ見るついでにお前に1番いいの選んでもらった方がいいかと思って」
「ちょ、ちょっと待って、えっと」
突然の展開に頭がぐるぐると混乱している。
「あの、それって、あの」
「ほら、誕生日だろ」
「あ、うん。えっと……それって、プレゼント」
「うん」
あっけらかんと頷く。
いつの間にか遠巻きに見ていた女学生の集団から小さな歓声と囁きあう声が聞こえて真っ赤になる。
「えっと、いいのかな。ほら、私、手荒れてるし」
「そうか?お前の手、綺麗だぞ」
「だ、だっていつも水仕事ばっかりでカサカサで」
「そんなことねーよ、俺、お前のそういう頑張ってる手のほうが好きだ」
火に油を注ぐ発言にきゃあ、と周囲の騒ぐ声が重なるのを聞いて真っ赤になって手で遮る。
「あ、ありがとう。じゃ、じゃあその、選んでもいい?」
「ああ、サヤが気に入った奴買う」
「うん……」
一気に熱くなった両頬を押えて。
「ありがと、嵐くん」
END
※
お誕生日祝いに書いた作品です。
バンビの名前がフォロワさんのお名前になっています。
「なぁ、サヤ。帰りちょっと寄りたいとこあるけどいいか?」
練習後、着替えも終わり、肩にスポーツバッグをかけた格好で部室に鍵をかけながら不二山が顔をあげた。
「え?うん、いいよ」
「よし、寒いから外じゃなくて下駄箱んとこで待ってろ。鍵、職員室に返したらすぐ行く」
「うん、後でね」
じゃあなと手を振って、白い息を吐きながら弾んだ足取りで先に校舎へと走っていく。
いつもとちょっと違う妙に楽しそうな不二山の様子に少し首を捻りながらカバンを片手にその後をゆっくり追った。
下駄箱前、外と比べて風はないがやはり身を切るように寒い。時折見知った顔が通りがかっては手を振って帰っていくのを見送って不二山が戻ってくるのを待つ。
カバンを下に置いて両手に息を吹きかける。年明けからこの所ずっと冷え込む日が続いていて、擦り合わせた手は冷たく冷え切っていた。
伸ばした手を広げてじっと見る、マネージャーの仕事は掃除や片付けなどの水作業も多いせいで随分手が荒れている。
「後でハンドクリーム塗らなきゃ」
両手で擦り合わせていると、遠目に駆け足でこっちに向かってくる姿が目に映った。
「おかえり、嵐くん」
「ああ、寒かっただろ?」
手がふわりと暖かくなる。
「手、冷てぇな。悪いな、待たせて」
「う、ううん、平気」
ここまだ学校、と。口に出そうになったのを飲み込んでもごもごとうつむく。
「よし、いこ」
しっかりと指を絡めて握った手、すっぽりと包む程大きいのにぽかぽかと子供のように温かい。
「ねぇ、どこ寄るの?」
「行けばわかる、ほら」
「あ、うん」
手を引かれるまま、後を追う。
夕暮れ過ぎの商店街。帰宅ラッシュよりは少し早く、夕飯の買出しには少しだけ遅い時間帯。
頬を撫でる風は冷たいけれど握り合った手は温かくて、一緒に歩いているだけで胸の奥からじわじわと暖かくなる気がする。
「ほら、ここ」
「え?」
足を止めて指差したのは、ジュエリーホイップの前。
「え、ここって」
サヤ自身は普段買い物でよく訪れるが、男の不二山にとってはしょっちゅう訪れる店とは言いがたい。疑問を口にする前にさっさと手を引いて店へと入っていく。
「いらっしゃいませ」
店内には数名の客があれこれアクセサリーを眺めたり手に取っている姿が見える。
「ね、嵐くん。えっと」
ここに何の用?と言葉にする前に。
「なあ、お前どれが1番いい?」
「えっ」
指差した先にはシルバーのリングが並んだカウンター。
「ええっ」
「こないだも見に来たけど、サイズとかわかんなくて。サイズ見るついでにお前に1番いいの選んでもらった方がいいかと思って」
「ちょ、ちょっと待って、えっと」
突然の展開に頭がぐるぐると混乱している。
「あの、それって、あの」
「ほら、誕生日だろ」
「あ、うん。えっと……それって、プレゼント」
「うん」
あっけらかんと頷く。
いつの間にか遠巻きに見ていた女学生の集団から小さな歓声と囁きあう声が聞こえて真っ赤になる。
「えっと、いいのかな。ほら、私、手荒れてるし」
「そうか?お前の手、綺麗だぞ」
「だ、だっていつも水仕事ばっかりでカサカサで」
「そんなことねーよ、俺、お前のそういう頑張ってる手のほうが好きだ」
火に油を注ぐ発言にきゃあ、と周囲の騒ぐ声が重なるのを聞いて真っ赤になって手で遮る。
「あ、ありがとう。じゃ、じゃあその、選んでもいい?」
「ああ、サヤが気に入った奴買う」
「うん……」
一気に熱くなった両頬を押えて。
「ありがと、嵐くん」
END