GS3嵐×バンビ
ときめきメリーゴーランド(シチュエーション習作)
お題:遅刻寸前の少女が交差点で衝突した男子に一目惚れ
驚きの連続だった高校初日。
久しぶりに帰ってきたはばたき市、でも街並みに懐かしさを感じるには当時の自分は幼くて、今の街は変わりすぎていて、何がどう変わってしまったかよく思い出せない。
そして何よりも、何年かぶりに再開した二人の幼馴染。毎日一緒に過ごしていたあの頃とすっかり変わってしまった姿に驚きと戸惑いを隠せなかった。
これから高校生活いいことありそう?
掛け布団を抱えたままころんと横に転がって、半分夢心地で考えてみる。
どうかな?
まだ何もかもが始まったばかりでまだよくわからない。昔、あの二人に抱いていた想いは今はどう変わっているのか。それともまた新しい出会いがあるのかもしれない。
例えば。
「ん……」
それにしても、このふわふわとしたココアみたいな心地いい時間、いつまで続いてるのかな。
「えっ?」
ふと、頭の中でぐるぐると渦巻く霧が晴れる。
勢いよく掛け布団を跳ね上げて枕元を見ると、目覚まし時計の針はちょっと信じがたい時間を差していた。
「きゃあああああ!」
ええい、最悪。なんで入学二日目で目覚ましかけ忘れるの、自分。
慌ててパジャマを脱ぎ捨ててタンスから着替えとブラウスを引っ張り出してホックを止める。うわぁ、この調子じゃ今日もBダッシュ確定かも。
廊下を走りながらブレザーを羽織って、リビングのドアを開ける。
「お母さんおはよっ!」
「あら、美奈子ちゃんおは……」
目を丸くするお母さんを尻目に食卓に置かれたトーストを一枚引っつかんでまたダッシュ。
「いってきまーす!」
一応、これだけは言い残して。
玄関を出て、流石に今日はコウくんとルカくんの姿は無い。そりゃあ高校生にもなって毎日お出迎えとかないよね、普通。
「よしっ」
位置について。
「Bダーッシュ!」
トーストをくわえて、よーいスタート。
昨日も三人で走った道を今日は一人で疾走中、道はしっかり覚えてるから昨日よりハイペースかも。それにしても昨日といい今日といい、これじゃ日からの学校生活先が思いやられそう、これは生活改善必須?
そういえば昨日はコウくんとルカくんの印象が強すぎて、ろくにクラスの子の顔と名前も覚えてなかったような気がする、しょっぱなからダメダメすぎるなこりゃ。
大通りを走りながらふと周りに目をやる、昨日は気づかなかったけどこの辺は確かにちょっと見覚えがあるかも知れない。
久しぶりに帰ってきたはばたき市、新しい学校、高校生活。
新しい何かが始まったりしないかな。
なんてほんのり感慨にふけってしまったその一瞬。
すぐ前の曲がり角から現れた制服姿の男の子の姿。
「ん?」
危ない、と思ったけど、もう勢いはそのまんまで止まれない。
止まろうとしてもつれた足がバランスを崩して、そのまま衝突……
あれ?
勢いはそのままで、いきなり感じる浮遊感。
コマ送りみたいにゆっくりと進む時間、腰に回した太い腕が私の体ごと持ち上げてその場でくるりくるりと回転する。
微かに触れる頬の感触とか、思わずしがみついた太い首とか、視界に飛び込んできた明るい茶色の固そうな髪とか、制服越しに感じるがっしりした体とか。
「よっ……と」
時間にしたら一秒もない、はず。ゆっくり地面に足がついて、抱き上げられた手が離れた。そこに立ってるのは同じはば学の制服姿の男の子、大きな目が睨むようにこっちを見る。
「そんな走ってたら危ねえぞ、気つけろ」
優しい扱いとは逆にちょっと尖った口調で諭される。というか何一つ言い返せないのが痛い。慌ててくわえたままのトーストを手にとって頭を下げた。
「ごっ、ごめんなさいっ」
思わず縮こまる頭を軽くつかむように叩いて。
「怪我ねえか?まだ時間は平気だ、そんな走んなくったって間に合う」
「……はい」
じゃあな、と。歩いていく後姿。
誰だろ、あの人。どっかで見たような見ないような。
あの勢いでぶつかりそうになった自分を抱き上げてぐるぐると、ぐるぐる。
なんだろ、これ。私の頭もぐるぐるしてる。
さっきの感触とか太い腕とか睨まれた目とか、なんだかぼぉっとする。
「よし、ガッコいこ」
またここでぼーっとしてて遅刻したら目も当てられない。
頭がぐらぐらするのは回転のせい、そういうことにしておこう、まだ、今は。
END
お題:遅刻寸前の少女が交差点で衝突した男子に一目惚れ
驚きの連続だった高校初日。
久しぶりに帰ってきたはばたき市、でも街並みに懐かしさを感じるには当時の自分は幼くて、今の街は変わりすぎていて、何がどう変わってしまったかよく思い出せない。
そして何よりも、何年かぶりに再開した二人の幼馴染。毎日一緒に過ごしていたあの頃とすっかり変わってしまった姿に驚きと戸惑いを隠せなかった。
これから高校生活いいことありそう?
掛け布団を抱えたままころんと横に転がって、半分夢心地で考えてみる。
どうかな?
まだ何もかもが始まったばかりでまだよくわからない。昔、あの二人に抱いていた想いは今はどう変わっているのか。それともまた新しい出会いがあるのかもしれない。
例えば。
「ん……」
それにしても、このふわふわとしたココアみたいな心地いい時間、いつまで続いてるのかな。
「えっ?」
ふと、頭の中でぐるぐると渦巻く霧が晴れる。
勢いよく掛け布団を跳ね上げて枕元を見ると、目覚まし時計の針はちょっと信じがたい時間を差していた。
「きゃあああああ!」
ええい、最悪。なんで入学二日目で目覚ましかけ忘れるの、自分。
慌ててパジャマを脱ぎ捨ててタンスから着替えとブラウスを引っ張り出してホックを止める。うわぁ、この調子じゃ今日もBダッシュ確定かも。
廊下を走りながらブレザーを羽織って、リビングのドアを開ける。
「お母さんおはよっ!」
「あら、美奈子ちゃんおは……」
目を丸くするお母さんを尻目に食卓に置かれたトーストを一枚引っつかんでまたダッシュ。
「いってきまーす!」
一応、これだけは言い残して。
玄関を出て、流石に今日はコウくんとルカくんの姿は無い。そりゃあ高校生にもなって毎日お出迎えとかないよね、普通。
「よしっ」
位置について。
「Bダーッシュ!」
トーストをくわえて、よーいスタート。
昨日も三人で走った道を今日は一人で疾走中、道はしっかり覚えてるから昨日よりハイペースかも。それにしても昨日といい今日といい、これじゃ日からの学校生活先が思いやられそう、これは生活改善必須?
そういえば昨日はコウくんとルカくんの印象が強すぎて、ろくにクラスの子の顔と名前も覚えてなかったような気がする、しょっぱなからダメダメすぎるなこりゃ。
大通りを走りながらふと周りに目をやる、昨日は気づかなかったけどこの辺は確かにちょっと見覚えがあるかも知れない。
久しぶりに帰ってきたはばたき市、新しい学校、高校生活。
新しい何かが始まったりしないかな。
なんてほんのり感慨にふけってしまったその一瞬。
すぐ前の曲がり角から現れた制服姿の男の子の姿。
「ん?」
危ない、と思ったけど、もう勢いはそのまんまで止まれない。
止まろうとしてもつれた足がバランスを崩して、そのまま衝突……
あれ?
勢いはそのままで、いきなり感じる浮遊感。
コマ送りみたいにゆっくりと進む時間、腰に回した太い腕が私の体ごと持ち上げてその場でくるりくるりと回転する。
微かに触れる頬の感触とか、思わずしがみついた太い首とか、視界に飛び込んできた明るい茶色の固そうな髪とか、制服越しに感じるがっしりした体とか。
「よっ……と」
時間にしたら一秒もない、はず。ゆっくり地面に足がついて、抱き上げられた手が離れた。そこに立ってるのは同じはば学の制服姿の男の子、大きな目が睨むようにこっちを見る。
「そんな走ってたら危ねえぞ、気つけろ」
優しい扱いとは逆にちょっと尖った口調で諭される。というか何一つ言い返せないのが痛い。慌ててくわえたままのトーストを手にとって頭を下げた。
「ごっ、ごめんなさいっ」
思わず縮こまる頭を軽くつかむように叩いて。
「怪我ねえか?まだ時間は平気だ、そんな走んなくったって間に合う」
「……はい」
じゃあな、と。歩いていく後姿。
誰だろ、あの人。どっかで見たような見ないような。
あの勢いでぶつかりそうになった自分を抱き上げてぐるぐると、ぐるぐる。
なんだろ、これ。私の頭もぐるぐるしてる。
さっきの感触とか太い腕とか睨まれた目とか、なんだかぼぉっとする。
「よし、ガッコいこ」
またここでぼーっとしてて遅刻したら目も当てられない。
頭がぐらぐらするのは回転のせい、そういうことにしておこう、まだ、今は。
END