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第16話 土【しんぱん】

 ジョースター一行は紅海を渡ってエジプトへ入ろうとしていた。その道中、ジョセフは『この旅にとって大切な男』に会うために、とある小さな島に立ち寄ることを告げた。


「ジョースターさんもアヴドゥルさんも、さすがに意地が悪すぎると思います」

 島に一軒だけ建つ小さな家の中で、弥子は呆れた顔で言った。

「すまんな、小芝居に付き合わせてしまって」
「まったくだぜ、わざわざ白髪にしてまでよくやるな」
「でもまあ、これでポルナレフのやつも懲りるじゃろう」

 にひひ、と笑うジョセフを見て、弥子はいたずら好きの子どもを相手にしている気分になった。

「それにしても、元気なようで何よりです。ーーアヴドゥルさん」

 花京院がアヴドゥルを見て言う。怪我のため、これまで離脱していたアヴドゥルが大きな買い物を終えて合流することになったのだ。

「心配かけてすまなかったな、花京院。だが、私はもう大丈夫だ」

 すっかり回復したアヴドゥルを見て、弥子は安堵したのだった。


「…ポルナレフのやつ、遅くないか? もう夕方だぞ」

 しばらく談笑した後、いつまで経っても戻ってこないポルナレフを心配して、皆で探すことになった。しかし、乗ってきた船にも浜辺にも見当たらず、アヴドゥルが島の奥まで探しに行った。

「まさか敵と出会ってるんじゃああるまいな」

 承太郎が言う。
 暗雲が弥子の胸を立ちこめた。


▼▲▼▲▼


「おい!! みんな驚くなよッ! 誰に出会ったと思うッ!」

 ポルナレフの声に皆が振り向く。今までどこで何をしていたのか、と思えば体のあちこちに傷を負っていた。

「ポルナレフ! 心配したぞッ!」
「どうした、その傷は?」
「傷のことはどうでもいいんだよッ! なんとッ、喜べ!」

 パンパカパーン、と浮かれた声音でポルナレフが言ったと同時に、アヴドゥルが現れた。

「アヴドゥルの野郎が生きてやがったんだよォ!」

 と、しばらく茶番を続けた後、

「さ! 出発するぞ」

 仕切り直すようなジョセフの言葉を皮切りに、ぽかんとするポルナレフを置いて、それぞれ荷物を持って出立の準備を始めた。
 戸惑うポルナレフに皆で種明かしをする。一人騙されていたことにずっこけながら、ポルナレフは少しむくれていた。

「ごめんね、ポルナレフさん」
「あっ! ヤコォ~、お前も俺を騙してたんだな~!」
「ホントにごめん! ジョースターさんが、敵を騙すにはまず味方からって言ってたから、つい」
「敵にバレないためもあるが、アヴドゥルにはある買い物をしてもらっていたのだよ」
「ある買い物?」

 ポルナレフが聞き返すと同時に、水中から潜水艦が浮かび上がった。
 その潜水艦に乗って、一行は紅海を渡る。

(もうすぐエジプトだ…!)

 弥子の脳裏には、あの吸血鬼と相まみえた夜が描かれていた。

(あのヒトは一体、どんな動機があってスタンド使いを集めているんだろう)

 探偵としての部分がうずくのを感じながら、弥子は窓から海の景色を眺めた。
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