第6話 力【さる】
「『飛んで虫に入る火イビルファイヤー』……解除」
スズメバチを模した大きな羽が弥子のスタンドの背中にしまわれる。彼女の隣には承太郎が立っていた。
「わずか数十秒で着けるとはな…。おい、大丈夫か。キツそーだぜ」
「うん…ごめん。やっぱり戦闘には参加できないかも」
「いい。俺に任せろ」
▼▲▼▲▼
数分前。チャーター船の甲板にて。
「私のスタンド能力で向こうの船まで飛ぶことができます。でも、飛ぶだけです。中にどうやって入るかを考えなくちゃいけないし、かなりエネルギーを消費するから、私は足手まといになると思う」
「飛べるのか、桂木のスタンドは!?」
「はい。でもみんなを運ぶってなると(筋肉量的な意味で)重量オーバーなので……一人運ぶのが限界かも…」
申し訳なさそうに弥子が呟くが、その肩を承太郎がぽん、と叩いた。
「なら俺が行くぜ。船の中には星の白金スタープラチナで壊して入る」
「そうか。連戦だが頼めるか?」
「ああ」
▼▲▼▲▼
こうして、二人は潜水艦の甲板まで辿り着いたのだった。
「さて、どこを壊すか…」
「承太郎くん、見てあれ!」
見ると、甲板のハッチが開いていた。まるで獲物を待つ深海魚の口のように。
「誘われてるみてーだな…。いくぞ」
「うん」
ハッチから中に入り、警戒しながら船内を歩く二人。と言っても潜水艦の内部はそんなに大きくはなく、すぐにメインルームでもある潜舵室に辿り着いた。しかしそこにも敵と思われる人物はいなかった。そんな二人の耳に、水が流れる音が聞こえる。
「……? なんだ? 海の水音じゃあねえな」
「あ、あそこじゃない? シャワー室って書いてある」
承太郎がシャワー室の扉をそっと開ける。しかしそこはシャワーが流れているだけで、誰もいなかった。
(ここにもいねえ。となると、一体誰がこの船を操作してやがるんだ…)
「きゃあっ!」
弥子の悲鳴に振り向くと、彼女の右腕とスタンドの大部分が、潜水艦の壁に飲み込まれていた。
「桂木!?」
「承太郎くん、この船変だよ! 壁とか天井とかが動いて…っっっ!」
弥子の口を塞ぐように、毛むくじゃらの腕がにゅっと伸びた。その腕は潜水艦の壁からはえているように見える。
そこから出てきたのは、オランウータンであった。オランウータンが出てきた後、壁はでこぼことうごめき、やがて元の平らな壁に戻った。
「オランウータン…!?」
「危ない! うしろ!」
弥子の声に承太郎がとっさに体をひねると、天井についていた扇風機が高速回転し、承太郎の肩をかすめた。扇風機はその勢いのまま、床に突き刺さる。
それを見たオランウータンが笑った。
「こ…こいつが外したのか、扇風機を! このエテ公がスタンド使いか…。しかしスタンドの像ヴィジョンはどこだ?」
承太郎が星の白金スタープラチナを出現させようとしたとき、床に突き刺さったはずの扇風機がガタガタと動き、プロペラが勢いよく回って、承太郎へと向かってきた。
「なに!?」
避けようとした承太郎だったが、狭い船内では難しく、プロペラは承太郎の腹を引き裂き、奥のシャワー室まで吹き飛ばした。
オランウータンは奇声を上げながら承太郎へと向かった。それと同時にシャワー室の鏡がひとりでに割れ、承太郎へと襲いかかる。
今度こそ星の白金スタープラチナを出現させた承太郎は、割れた鏡を全てつかみ、そのこぶしでオランウータンに殴りかかろうとした。しかしオランウータンは先ほどと逆の要領で壁にめりこみ、その姿を消してしまう。
「承太郎くん! もしかしたら、この『船自体』が…!」
「『スタンド』は、この潜水艦かッ!」
二人が答えに辿り着くのと同時に、承太郎の後ろから配管やパイプが伸びて、承太郎を壁に拘束した。
「しまった!」
二人が身動きを取れないでいると、再び壁がうごめき、オランウータンが現れた。オランウータンは海兵服と船長帽を身につけて、パイプを口にくわえ、辞書を片手に持っていた。
オランウータンが開いて見せたページには、『Strength(力)』の項目。その九つ目の意味として、『タロットで、八番目のカード。挑戦、強い意志、秘められた本能を暗示する』とある。
オランウータンストレングスは余裕綽々といった様子で、のん気にルービックキューブを解き始めた。承太郎はスタンドでパイプを引き抜き攻撃しようとするが、再びスタンドの腕が縫いとめられてしまう。
そしてルービックキューブの絵柄が全て揃ったと同時に、ストレングスはルービックキューブを破壊し、おもむろに弥子に手を伸ばした。
「………っ!」
オランウータンの、まるで欲情したかのような気味の悪い視線に、弥子は身を竦ませた。
その時、ストレングスの頭に、学生服のボタンがぶつけられた。
振り向いたストレングスに、承太郎は、
「そのボタンはてめーのスタンドじゃあねーぜ」
と、挑発するように言い放った。
いともたやすく挑発に乗せられたストレングスは怒りの咆哮を上げる。
ボタンをつかんだまま承太郎に襲いかかろうとするストレングスに対し、承太郎は『スターフィンガー』でボタンを弾いてストレングスの額を攻撃した。
敗北を悟り、自身の腹を見せて許しを請おうとするストレングスだったが、承太郎のオラオラッシュにあえなく沈んだのだった。
ストレングスが気絶したのと同時に、潜水艦の内部がぐにゃぐにゃとうねり始めた。弥子と承太郎を拘束していた壁も力を失い、二人は難なく抜け出した。
「崩壊し始めてる…この船自体がスタンドだったから……」
「脱出するぜ。ひとまず外まで逃げれば、後は泳いでチャーター船までいける」
スズメバチを模した大きな羽が弥子のスタンドの背中にしまわれる。彼女の隣には承太郎が立っていた。
「わずか数十秒で着けるとはな…。おい、大丈夫か。キツそーだぜ」
「うん…ごめん。やっぱり戦闘には参加できないかも」
「いい。俺に任せろ」
▼▲▼▲▼
数分前。チャーター船の甲板にて。
「私のスタンド能力で向こうの船まで飛ぶことができます。でも、飛ぶだけです。中にどうやって入るかを考えなくちゃいけないし、かなりエネルギーを消費するから、私は足手まといになると思う」
「飛べるのか、桂木のスタンドは!?」
「はい。でもみんなを運ぶってなると(筋肉量的な意味で)重量オーバーなので……一人運ぶのが限界かも…」
申し訳なさそうに弥子が呟くが、その肩を承太郎がぽん、と叩いた。
「なら俺が行くぜ。船の中には星の白金スタープラチナで壊して入る」
「そうか。連戦だが頼めるか?」
「ああ」
▼▲▼▲▼
こうして、二人は潜水艦の甲板まで辿り着いたのだった。
「さて、どこを壊すか…」
「承太郎くん、見てあれ!」
見ると、甲板のハッチが開いていた。まるで獲物を待つ深海魚の口のように。
「誘われてるみてーだな…。いくぞ」
「うん」
ハッチから中に入り、警戒しながら船内を歩く二人。と言っても潜水艦の内部はそんなに大きくはなく、すぐにメインルームでもある潜舵室に辿り着いた。しかしそこにも敵と思われる人物はいなかった。そんな二人の耳に、水が流れる音が聞こえる。
「……? なんだ? 海の水音じゃあねえな」
「あ、あそこじゃない? シャワー室って書いてある」
承太郎がシャワー室の扉をそっと開ける。しかしそこはシャワーが流れているだけで、誰もいなかった。
(ここにもいねえ。となると、一体誰がこの船を操作してやがるんだ…)
「きゃあっ!」
弥子の悲鳴に振り向くと、彼女の右腕とスタンドの大部分が、潜水艦の壁に飲み込まれていた。
「桂木!?」
「承太郎くん、この船変だよ! 壁とか天井とかが動いて…っっっ!」
弥子の口を塞ぐように、毛むくじゃらの腕がにゅっと伸びた。その腕は潜水艦の壁からはえているように見える。
そこから出てきたのは、オランウータンであった。オランウータンが出てきた後、壁はでこぼことうごめき、やがて元の平らな壁に戻った。
「オランウータン…!?」
「危ない! うしろ!」
弥子の声に承太郎がとっさに体をひねると、天井についていた扇風機が高速回転し、承太郎の肩をかすめた。扇風機はその勢いのまま、床に突き刺さる。
それを見たオランウータンが笑った。
「こ…こいつが外したのか、扇風機を! このエテ公がスタンド使いか…。しかしスタンドの像ヴィジョンはどこだ?」
承太郎が星の白金スタープラチナを出現させようとしたとき、床に突き刺さったはずの扇風機がガタガタと動き、プロペラが勢いよく回って、承太郎へと向かってきた。
「なに!?」
避けようとした承太郎だったが、狭い船内では難しく、プロペラは承太郎の腹を引き裂き、奥のシャワー室まで吹き飛ばした。
オランウータンは奇声を上げながら承太郎へと向かった。それと同時にシャワー室の鏡がひとりでに割れ、承太郎へと襲いかかる。
今度こそ星の白金スタープラチナを出現させた承太郎は、割れた鏡を全てつかみ、そのこぶしでオランウータンに殴りかかろうとした。しかしオランウータンは先ほどと逆の要領で壁にめりこみ、その姿を消してしまう。
「承太郎くん! もしかしたら、この『船自体』が…!」
「『スタンド』は、この潜水艦かッ!」
二人が答えに辿り着くのと同時に、承太郎の後ろから配管やパイプが伸びて、承太郎を壁に拘束した。
「しまった!」
二人が身動きを取れないでいると、再び壁がうごめき、オランウータンが現れた。オランウータンは海兵服と船長帽を身につけて、パイプを口にくわえ、辞書を片手に持っていた。
オランウータンが開いて見せたページには、『Strength(力)』の項目。その九つ目の意味として、『タロットで、八番目のカード。挑戦、強い意志、秘められた本能を暗示する』とある。
オランウータンストレングスは余裕綽々といった様子で、のん気にルービックキューブを解き始めた。承太郎はスタンドでパイプを引き抜き攻撃しようとするが、再びスタンドの腕が縫いとめられてしまう。
そしてルービックキューブの絵柄が全て揃ったと同時に、ストレングスはルービックキューブを破壊し、おもむろに弥子に手を伸ばした。
「………っ!」
オランウータンの、まるで欲情したかのような気味の悪い視線に、弥子は身を竦ませた。
その時、ストレングスの頭に、学生服のボタンがぶつけられた。
振り向いたストレングスに、承太郎は、
「そのボタンはてめーのスタンドじゃあねーぜ」
と、挑発するように言い放った。
いともたやすく挑発に乗せられたストレングスは怒りの咆哮を上げる。
ボタンをつかんだまま承太郎に襲いかかろうとするストレングスに対し、承太郎は『スターフィンガー』でボタンを弾いてストレングスの額を攻撃した。
敗北を悟り、自身の腹を見せて許しを請おうとするストレングスだったが、承太郎のオラオラッシュにあえなく沈んだのだった。
ストレングスが気絶したのと同時に、潜水艦の内部がぐにゃぐにゃとうねり始めた。弥子と承太郎を拘束していた壁も力を失い、二人は難なく抜け出した。
「崩壊し始めてる…この船自体がスタンドだったから……」
「脱出するぜ。ひとまず外まで逃げれば、後は泳いでチャーター船までいける」
