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第5話 月【ぐんじょう】

 一行と少女の押し問答がしばらく続いた後、船の船長が少女を拘束した。かなり強い力で拘束する船長に、弥子はムッとして声を上げた。

「ちょっと! 相手は女の子なんだからそんな乱暴にしないであげてください!」
「…君はお客だが、これは私の船だ。船の上にいる以上、私の指示に従ってもらおう…それから!」

 船長が承太郎から煙草を取り上げて、こう言った。

「甲板での喫煙はご遠慮願おう…」

 そして煙草の火を承太郎の学生帽のバッジで消した後、吸い殻を承太郎のポケットに入れた。
 プライドの高い承太郎がプッツンしてしまうのではないかと、仲間のうち何人かが不安になるが、それは杞憂であった。

「待ちな」

 承太郎は誰よりも冷静に、少女を連れて船内に戻ろうとした船長を呼び止めた。


▼▲▼▲▼


「スタンド使いはこいつだ」

 承太郎に制止をかけるジョセフに対して、承太郎は宣言した。しかし他のメンバーはそれを信じ切れていない。
 そこで承太郎はひとつ、賭けをした。

「スタンド使いに共通する見分け方を発見した。それは…スタンド使いは煙草の煙を少しでも吸うとだな…鼻の頭に、血管が浮き出る」

 その言葉に思わず鼻に手をやって確認してしまったのは、

「えっ!」
「うそだろ承太郎!」

 ジョセフ、花京院、アヴドゥル、ポルナレフ、弥子、そして…。

「ああ、うそだぜ! だが…マヌケは見つかったようだな」

 先ほどまですっとぼけていたテニール船長だった。


▼▲▼▲▼


 帽子を取り、顔つきが変わったテニール船長は、どうやら偽物らしい。本物の船長は、既に殺されているようだ。
 少女を人質に取り、海に飛び込もうとした偽船長だが、落下するより早く攻撃した承太郎により少女は無事救出された。
 しかし星の白金スタープラチナの腕についたフジツボにより、承太郎は水中に引きずり込まれてしまう。
 花京院、ポルナレフ、アヴドゥルは海面にできた巨大な渦に向かおうとしたが、渦に漂う無数の鱗に阻まれて手もスタンドも出せない。
 しばらくの間見守っていると、海面に承太郎が顔を出した。
 それは承太郎の勝利によって海中での戦いが終わったことを示していた。

「浮き輪を投げるんだ! それから手当ての準備を!」

 アヴドゥルが指示する中、弥子はジョセフに話しかけた。

「ジョースターさん、ちょっといいですか?」
「? なんじゃ、どうした桂木」
「あの、爆弾って解除したことあります? なんか船内に爆弾が仕掛けられているみたいで…」
「なに!? それは本当か!?」
「なんで分かったんだよ、そんなこと!」
「私のサブスタンドが見つけたんです。なんかもう作動しちゃってるみたいで…」
「早く言わんかい、そういうことは! それで、どこじゃ!」
「こっちです!」

 案内を始めた弥子の左目が茶色から暗い緑色に変わる。彼女に先導されたジョセフが船内の貨物室に辿り着くと、棚の隅に追いやられるように既に爆発まで五分を切った爆弾が鎮座していた。その傍らには、目玉を象ったような奇妙な虫が爆弾をジロジロと眺めている。

「な、なんじゃあ、コイツは! 新手のスタンドか!」
「ちがいますちがいます! それ私のサブスタンドです! それよりジョースターさん、爆弾どうにかしなくちゃ!」
「ああ、それなら大丈夫だ。このタイプなら解除するのは難しくはない。桂木、ハサミを持っていないか?」
「えっと、裁縫用の小さいものなら」
「充分じゃ。ちょっと離れていなさい」

 爆弾の内部の導線を何本か切った後、ジョセフは爆弾を持って貨物室を出た。

「も、もう解除したんですか!?」
「いや。だがここは海の上。陸からだいぶ離れておるし、爆発直前に海に投げれば問題ないじゃろう」

 甲板に戻ると、ちょうど帰ってきた承太郎が手当てを受けているところだった。

「承太郎。悪いがカウントダウンが五秒前になったら、これを星の白金スタープラチナで投げてくれんか」
「やれやれ、人使いの荒いジジイだぜ」
「大丈夫かよ~、急に爆発したりしない?」
「乱暴に扱わない限りは大丈夫じゃよ」
「しかし、爆弾なんてよく見つけたなかつr………その目玉はなんだ?」
「私のサブスタンドの魔界の凝視虫イビルフライデーです。船内にスタンド使いが潜んでいるんじゃないかと思って放ったら、偶然爆弾を見つけたようで…」

 苦笑しながら話す弥子の背中には目玉が大量にくっついていた。彼女の華奢な背中にもっっっさあと貼り付いたイビルフライデーたちは、あっちを見たりこっちを見たりと忙しなく瞳孔を動かしている。

「前々から思ってたけど…弥子ちゃんのスタンドはなんというか、独特だな」
「きもちわりぃ~~」
「そいつらが見つけたのか。いつの間に…しかし、先ほどまで君の周りにはいなかったような…」
「こいつらの目と私の目が連動しているんです。テレビのチャンネルを切り替えるみたいにして見ているものを共有する…みたいな」

 そう言う弥子の左目は螺旋状の緑色の目に変化していた。今まさに、視界を共有しているのだろう。
 若干微妙な目線を向けてくる一同に、弥子は(結局ドン引きされたな~)と遠い目をした。


 ちなみに、爆弾は承太郎の星の白金スタープラチナの全力投球により、花火のごとく打ち上げられたとさ。
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