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第4話 銀【せんしゃ】

 ジョースター一行はチャーターした船に乗るために、香港のとある港に来ていた。
 その場には、先ほどまで戦っていたポルナレフもいる。
 額に埋め込まれた肉の芽がなくなった彼は、やけにすっきりとした顔つきになっていた。

「ムッシュジョースター。ものすごく奇妙な質問をさせていただきたい」

 そのポルナレフが口を開く。拒否は許さないという頑とした口調で。

「詮索するようだが、あなたは食事中も手袋を外さない…。まさかあなたの『左』腕は『右』腕ではあるまいな?」
「………? 『左』腕が『右』腕…左が右? 確かに奇妙な質問じゃ…一体どういうことかな?」

 たしかに奇妙な質問だった。
 どういう意味だ、と問い返されたポルナレフは、瞳の中に僅かに憎悪を浮かべる。

「妹を殺した男を探している。顔は分からない。だがそいつの腕は、両腕とも右腕なのだ」

 それを聞いたジョセフが手袋を外して義手を見せる。それを確認した後、ポルナレフはジョセフに詮索したことを謝罪し、自分の妹とその友人の身に起こった出来事を話し始めた。

(ひどい……)

 雨の中。友だちが突然切り裂かれて。何もできないまま陵辱を受けて。そして殺されるなんて。どれだけ無念だっただろう。
 ポルナレフの話を聞いた弥子は思った。

 探偵業をする中で、弥子は似たような話を聞いたことが何度もあった。実際に被害者と話をすることも。その現場に居合わせることも。
 慣れることはない。慣れてはいけない。本当はそんな話を聞きたくはない。できれば自分とは遠い現実であってほしいし、何より、自分の無力さを改めて思い知らされるから。
 しかし自分は、耳を塞がないと決めたのだ。
 被害者の気持ちや犯人の動機に興味がないネウロの分まで、彼らを理解しようと決めたのだ。
 だから弥子は、どんな凄惨な話を聞いても、どんなに凶悪な犯罪者に出会っても、慣れることなく感情を揺さぶられ続けるのだろう。

 そしてポルナレフの話はDIOへと移り、一行の旅に同行する旨を示した。



 仇。
 弥子も前世で、家族を殺された。
 殺されたのは父親で、殺したのは刑事だった。
 ネウロと出会ったきっかけであり、探偵『桂木弥子』が最初に解決した事件。
 事件を解決した後、母の遥は「お父さんのかたきを取ってくれてありがとう」と言った。あの時母は、どんな気持ちで言ったのだろうか。

 前世の両親に想いを馳せていると、観光客の女性達が承太郎に話しかけていた。それを怒鳴って追い返そうとする承太郎をなだめたのは、先ほどまでシリアスに身の上話を語っていたポルナレフであった。

「ずいぶん気分の転換が早いな」
「あーゆーところ、フランス人って感じだよねー」
「やれやれだぜ」
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