第2話 芽【せんのう】
次の日。
昨日たくさん食べてしまったし、今日こそはちゃんとお手伝いしよう、と朝の支度を終えた弥子は台所に来ていた。しかし、料理をしていた形跡はあるものの、ホリィの姿はなかった。
「ホリィさん?…いないのかな?」
とりあえず開きっぱなしになっている冷蔵庫の扉を閉めよう、と台所に入ると、その奥に倒れているホリィがいた。
「ホリィさん! 大丈夫ですか!?」
あきらかに体調を崩している様子の彼女を抱き起こすと、額に大量の汗をかいており、体は熱を持っていた。
「すごい汗…。病院に連れて行ったほうが…。あれ、なんだろう。背中に何か…」
服の間からのぞくツタのような何かに触れようとした。が、弥子の手はツタを通り過ぎてしまう。
「透ける…まさか、スタンド!?」
ホリィを抱き寄せて、弥子はスタンドを自分の傍らに浮かび上がらせる。そして周囲を警戒し始めた。
(スタンド攻撃? 私や花京院くんのように、DIOってヒトの命令で…)
「どうしたんだ、桂木…なっホリィさん!?」
「倒れていたんです。アヴドゥルさん、これは一体…」
「これは…、ホリィさんのスタンドだ。ホリィさんにもスタンドが発現している!」
アヴドゥルによれば、DIOの影響によってジョセフや承太郎だけでなく、ホリィにまでスタンドが発現したとのこと。けれど平和な性格の彼女にはスタンドを制御できないこと。そして…。
「言え! 対策を!」
低く、唸るような声で、承太郎が祖父に問う。
それを弥子は、静かに、けれど確かな意思を心に決めて、聞いていたのだった。
▼▲▼▲▼
「やはりエジプトか…いつ出発する? わたしも同行する」
「花京院」
承太郎のスタンドの観察眼によってDIOの位置を割り出したとき、いつの間にそこにいたのか、弥子と同じように頭に包帯を巻いた花京院が立っていた。
「同行するだと? なぜ? お前が?」
「そこんところだが、なぜ同行したくなったのかはわたしにもよく分からないんだがね…」
「ケッ」
「お前のおかげで目が覚めた。ただそれだけさ」
「私も、ついていっていい?」
花京院に向けられていた視線が、今度は弥子に集中する。
「危険だぞ。女の子がついてくるような旅ではない」
諭すようにジョセフが言うが、弥子はもう心を決めてしまった。
言うか言うまいか悩んでいたことが、するりと口からこぼれる。
「あのDIOってヒト、知り合いに似ているんです。私の相棒に…」
弥子の脳裏に、ドSで食欲旺盛で、時折こどものように無邪気になる魔人の姿が浮かぶ。
そして次に、夜のエジプトで邂逅した吸血鬼のことが思い起こされる。
理不尽で横暴なところ。猫をかぶるのがうまそうなところ。化け物ですごい力を持っているところ。
二人の間に共通点は多い。
しかし、その本質はどちらかというとシックス寄りなのではないかと弥子は推測した。
他人を扇動して、自分の欲望のままに動くところ。放っておくと、何か大変なことが起こるんじゃないかと、不安を煽るようなその存在感。
できることなら二度と対峙したくないと思わせる、弥子にとって恐怖そのものみたいな男にも、DIOは似ている気がした。
「止めたいんです。彼を止める人がいなくなる、その前に」
その場にいる一人一人の顔を見ながら、弥子は曲げるつもりのない想いを告げた。
「それになにより、ホリィさんのご飯、また食べたいしね」
今は布団に横たわって目を閉じているホリィ。
彼女を助けたい気持ちは、弥子とて同じであった。
昨日たくさん食べてしまったし、今日こそはちゃんとお手伝いしよう、と朝の支度を終えた弥子は台所に来ていた。しかし、料理をしていた形跡はあるものの、ホリィの姿はなかった。
「ホリィさん?…いないのかな?」
とりあえず開きっぱなしになっている冷蔵庫の扉を閉めよう、と台所に入ると、その奥に倒れているホリィがいた。
「ホリィさん! 大丈夫ですか!?」
あきらかに体調を崩している様子の彼女を抱き起こすと、額に大量の汗をかいており、体は熱を持っていた。
「すごい汗…。病院に連れて行ったほうが…。あれ、なんだろう。背中に何か…」
服の間からのぞくツタのような何かに触れようとした。が、弥子の手はツタを通り過ぎてしまう。
「透ける…まさか、スタンド!?」
ホリィを抱き寄せて、弥子はスタンドを自分の傍らに浮かび上がらせる。そして周囲を警戒し始めた。
(スタンド攻撃? 私や花京院くんのように、DIOってヒトの命令で…)
「どうしたんだ、桂木…なっホリィさん!?」
「倒れていたんです。アヴドゥルさん、これは一体…」
「これは…、ホリィさんのスタンドだ。ホリィさんにもスタンドが発現している!」
アヴドゥルによれば、DIOの影響によってジョセフや承太郎だけでなく、ホリィにまでスタンドが発現したとのこと。けれど平和な性格の彼女にはスタンドを制御できないこと。そして…。
「言え! 対策を!」
低く、唸るような声で、承太郎が祖父に問う。
それを弥子は、静かに、けれど確かな意思を心に決めて、聞いていたのだった。
▼▲▼▲▼
「やはりエジプトか…いつ出発する? わたしも同行する」
「花京院」
承太郎のスタンドの観察眼によってDIOの位置を割り出したとき、いつの間にそこにいたのか、弥子と同じように頭に包帯を巻いた花京院が立っていた。
「同行するだと? なぜ? お前が?」
「そこんところだが、なぜ同行したくなったのかはわたしにもよく分からないんだがね…」
「ケッ」
「お前のおかげで目が覚めた。ただそれだけさ」
「私も、ついていっていい?」
花京院に向けられていた視線が、今度は弥子に集中する。
「危険だぞ。女の子がついてくるような旅ではない」
諭すようにジョセフが言うが、弥子はもう心を決めてしまった。
言うか言うまいか悩んでいたことが、するりと口からこぼれる。
「あのDIOってヒト、知り合いに似ているんです。私の相棒に…」
弥子の脳裏に、ドSで食欲旺盛で、時折こどものように無邪気になる魔人の姿が浮かぶ。
そして次に、夜のエジプトで邂逅した吸血鬼のことが思い起こされる。
理不尽で横暴なところ。猫をかぶるのがうまそうなところ。化け物ですごい力を持っているところ。
二人の間に共通点は多い。
しかし、その本質はどちらかというとシックス寄りなのではないかと弥子は推測した。
他人を扇動して、自分の欲望のままに動くところ。放っておくと、何か大変なことが起こるんじゃないかと、不安を煽るようなその存在感。
できることなら二度と対峙したくないと思わせる、弥子にとって恐怖そのものみたいな男にも、DIOは似ている気がした。
「止めたいんです。彼を止める人がいなくなる、その前に」
その場にいる一人一人の顔を見ながら、弥子は曲げるつもりのない想いを告げた。
「それになにより、ホリィさんのご飯、また食べたいしね」
今は布団に横たわって目を閉じているホリィ。
彼女を助けたい気持ちは、弥子とて同じであった。
