真実を映す鏡 1
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「なんであなたはいつもそうなんですか!!!!!」
病院の敷地内に怒声が響き渡る。
私はというと声を荒げている看護師に「すみません……」と頭を下げるしかない。
腕の中にはサッカーボール。いつものメンバーでひっそりとサッカーをしていたのだが。目の前にいる説教看護師に見つかってしまい、今にいたる。
「体が悪いのに無茶ばかりして!!!」
「……ぐっ」
それはよくよく分かっている。この説教看護師は私の体を心配してくれて言っている。誰かが私の心配をしてくれている。それはとっても嬉しいことだ。
……けど! それはそれ!
いくら体が弱くたって、運動したい時はある。
…………そんなこと言ったらお説教の時間が長引いちゃうから、口が裂けても言わないけれど。
「そもそも! それだけじゃないんですよ! 病院の窓ガラスを何枚割ってると思うんですか! あなたももうお姉さんなんだから、年下の子たちを上手くまとめあげて。それで」
あー。こりゃ長いぞ。
私は説教看護師に気付かれないようにため息を吐いた。
お説教が終わった頃には夕方になっていた。橙色が桜の木を照らす。だが、枝に桜の花は無い。
気温が暖かくなって、すっかり花びらは落ちてしまった。
桜といえば……。
私は寂しくなった枝を見て、前に出会った死神を思い出す。
――――朽木 白哉。
桜の花びらとともに現れたからか、白哉のことを思い出してしまう……。
頭に白哉の整った顔を思い描きながら、私は左の小指を上げた。
「……会いに来るって言ったのに。白哉のバカ」
一人呟く。と、長いため息とともに「兄は余程私に来てほしくなかったようだな」と後ろから話しかけられた。
「!」
このかたい言葉遣いと色気のある声は……。
「白哉!」
バッと勢いをつけて後ろを振り返った。やはり、白哉が後ろに立っていた。
私は思わずパッと顔を明るくしてしまう。
「もしかしてっ、私に会いに!?」
「いや、任務だ」
「……オイ」
私のツッコミを無視して、白哉はわずかに眉を寄せると「運動をしていたようだが」と話しかけてきた。
こ、これはまた長いお説教が始まりそうな予感。
「えーと、まぁ、はい。だ、だって。病院の外から出られないし。暇なんだもん」
「……だからといって毎日のように運動をしなくてもいいだろう」
「な、何故それを」
「そう怒られていたようだが」
「ゔ……」
どうやら説教看護師に怒られていたのを見られていたらしい。
私が何も言えないでいると、ふと白哉は暗い顔をして目線を下に落とした。
「体は大事にしたほうがいい」
まただ――。最初に会った時と同じ。
聞くなら今しかない。
私はゴクリと唾を飲みこんで、「あの」と恐る恐る切り出した。
「もしかして誰か、亡くなったの」
「…………ああ」
白哉の瞳が陰る。
やっぱり聞いちゃいけなかったかも……。
私が何も言えないでいると、白哉はポツリと語りだした。
「亡くなったのは緋真。…………妻だ」
「…………」
白哉、奥さんいたんだ……。そりゃそうか。こんなに顔立ちよくて、声も良くて、背も高い。
そんな白哉の奥さまだ。きっと綺麗で美しくて。それでいて外見だけじゃなく、内面も素晴らしい人だったんだろうな。
モヤモヤとした感情に心の内で首を傾げながら、白哉の話に耳を傾ける。
「緋真も体が弱かった。なのに気丈に振る舞い、妹を探し歩いて。最後には――」
「……」
「梅が咲く前に亡くなった」
シンとした空気が流れる。
こういう時、何と声をかけたらいいのか。分からない。
私にできる精一杯は、ただ黙って話を聞くことしか出来ない。
「だから……。頼むから体を大事にしてくれ」
「…………うん」
白哉の左右に揺れ動く影の差した瞳を見ていると、私には頷く以外の選択肢がなかった。
病院の敷地内に怒声が響き渡る。
私はというと声を荒げている看護師に「すみません……」と頭を下げるしかない。
腕の中にはサッカーボール。いつものメンバーでひっそりとサッカーをしていたのだが。目の前にいる説教看護師に見つかってしまい、今にいたる。
「体が悪いのに無茶ばかりして!!!」
「……ぐっ」
それはよくよく分かっている。この説教看護師は私の体を心配してくれて言っている。誰かが私の心配をしてくれている。それはとっても嬉しいことだ。
……けど! それはそれ!
いくら体が弱くたって、運動したい時はある。
…………そんなこと言ったらお説教の時間が長引いちゃうから、口が裂けても言わないけれど。
「そもそも! それだけじゃないんですよ! 病院の窓ガラスを何枚割ってると思うんですか! あなたももうお姉さんなんだから、年下の子たちを上手くまとめあげて。それで」
あー。こりゃ長いぞ。
私は説教看護師に気付かれないようにため息を吐いた。
お説教が終わった頃には夕方になっていた。橙色が桜の木を照らす。だが、枝に桜の花は無い。
気温が暖かくなって、すっかり花びらは落ちてしまった。
桜といえば……。
私は寂しくなった枝を見て、前に出会った死神を思い出す。
――――朽木 白哉。
桜の花びらとともに現れたからか、白哉のことを思い出してしまう……。
頭に白哉の整った顔を思い描きながら、私は左の小指を上げた。
「……会いに来るって言ったのに。白哉のバカ」
一人呟く。と、長いため息とともに「兄は余程私に来てほしくなかったようだな」と後ろから話しかけられた。
「!」
このかたい言葉遣いと色気のある声は……。
「白哉!」
バッと勢いをつけて後ろを振り返った。やはり、白哉が後ろに立っていた。
私は思わずパッと顔を明るくしてしまう。
「もしかしてっ、私に会いに!?」
「いや、任務だ」
「……オイ」
私のツッコミを無視して、白哉はわずかに眉を寄せると「運動をしていたようだが」と話しかけてきた。
こ、これはまた長いお説教が始まりそうな予感。
「えーと、まぁ、はい。だ、だって。病院の外から出られないし。暇なんだもん」
「……だからといって毎日のように運動をしなくてもいいだろう」
「な、何故それを」
「そう怒られていたようだが」
「ゔ……」
どうやら説教看護師に怒られていたのを見られていたらしい。
私が何も言えないでいると、ふと白哉は暗い顔をして目線を下に落とした。
「体は大事にしたほうがいい」
まただ――。最初に会った時と同じ。
聞くなら今しかない。
私はゴクリと唾を飲みこんで、「あの」と恐る恐る切り出した。
「もしかして誰か、亡くなったの」
「…………ああ」
白哉の瞳が陰る。
やっぱり聞いちゃいけなかったかも……。
私が何も言えないでいると、白哉はポツリと語りだした。
「亡くなったのは緋真。…………妻だ」
「…………」
白哉、奥さんいたんだ……。そりゃそうか。こんなに顔立ちよくて、声も良くて、背も高い。
そんな白哉の奥さまだ。きっと綺麗で美しくて。それでいて外見だけじゃなく、内面も素晴らしい人だったんだろうな。
モヤモヤとした感情に心の内で首を傾げながら、白哉の話に耳を傾ける。
「緋真も体が弱かった。なのに気丈に振る舞い、妹を探し歩いて。最後には――」
「……」
「梅が咲く前に亡くなった」
シンとした空気が流れる。
こういう時、何と声をかけたらいいのか。分からない。
私にできる精一杯は、ただ黙って話を聞くことしか出来ない。
「だから……。頼むから体を大事にしてくれ」
「…………うん」
白哉の左右に揺れ動く影の差した瞳を見ていると、私には頷く以外の選択肢がなかった。