真実を映す鏡 1
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――年を経て 待つしるしなき わが宿を
花のたよりに 過ぎぬばかりか――
(長年待っていたわたしの住処を、あなたは藤の花を見るついでに立ち寄っただけなのですね)
「おーい、紫乃姉ちゃん! ボール、そっちにいったぞぉ~!」
「はいよ~!」
サッカーボールはちょうど私の目の前で止まる。
ナイスコントロール!
私は心の中でガッツポーズをしながら、数メートル先にあるサッカーボールに狙いを定める。
そして。
思いっきりボールを蹴り上げた。――――が。
ボールは私の予想より遥か上へ舞い上がる。
空は雲一つない青空。
こういう日は病院の敷地内にある藤の花が綺麗に見えるだろうなぁ……と現実逃避をしてみるものの。現実は変わらず。
ボールはぐんぐんと飛んでいき、そして。
ガチャン!!!
大きな音を立てて、病院の三階の窓が割れた。
「ヤバい……」
「ど、どうするんだよ。姉ちゃん」
「そんなの、決まってるでしょ。…………逃げるぞ~!!!」
その言葉に、病院サッカーチームの面々が散り散りになっていく。
さて。私も逃げなきゃ。
グッと足に力を入れた。その瞬間、大きな影がかかった。
? さっきまで雲一つなかったよね。
自身の記憶力を辿りながら、空を見上げた。そこには――――大きな白い化け物がいた。
何度かあの化け物を見たことがある。とはいっても、あの化け物は私にしか、いや。私と一護にしか見えない。あの化け物はどうも幽霊……。つまりこの世のモノでないもの、らしい。
私が幼い頃から病弱だったからか。この世のモノではないものが見える。
それにしても今日はなんだか様子がおかしい。
化け物の目は黒光りしていて、キョロキョロと忙しなく辺りを見回している。……かと思えば。
視線がとある一点を捉えた。
その一点とは私――――ではなく。私の後ろ。
「!」
病院サッカーチーム、最年少の男の子が体育座りをしていた。男の子は逃げるときに転んだらしく、膝を擦りむいている。
化け物は男の子をただひたすら真っすぐ見据えて、ゆっくりとこちらに迫っていた。
「どうしたの!?」
そう叫んでみるも、私の声は化け物には届かない。
どうして。あの化け物は今までこんな行動を見せなかった。
そう考えてみるものの、化け物はすぐそこまで差し迫っている。
「っ!」
私は化け物に背を向けて、一気に男の子の元へ駆けた。その勢いのまま、男の子を自身の腕で抱える。
男の子の目が驚きで見開かれたが、それを気にしている余裕はない。
今は走らなきゃ――。
男の子を抱え、走る。走る。走る。
だが50メートル程走ったところで、ドクン、と心臓が大きく跳ねた。
「っ……」
思わずその場に座り込む。
体が弱いのに無理をしたからだ。
ヒュウ、ゼェ、ハァ……と荒く息を繰り返す。
その間にも化け物はこちらに迫ってきている。私に出来ることといえば、化け物に背を向け、男の子を抱えることだけだ。
化け物と私との距離はあと三歩。化け物の手がこちらに伸ばされる。
私の瞳はただただ化け物を見ることしか出来ない。
終わった……。
そう覚悟した瞬間。桜の花びらとともに、白い羽織が目の前いっぱいに広がった――――。
花のたよりに 過ぎぬばかりか――
(長年待っていたわたしの住処を、あなたは藤の花を見るついでに立ち寄っただけなのですね)
「おーい、紫乃姉ちゃん! ボール、そっちにいったぞぉ~!」
「はいよ~!」
サッカーボールはちょうど私の目の前で止まる。
ナイスコントロール!
私は心の中でガッツポーズをしながら、数メートル先にあるサッカーボールに狙いを定める。
そして。
思いっきりボールを蹴り上げた。――――が。
ボールは私の予想より遥か上へ舞い上がる。
空は雲一つない青空。
こういう日は病院の敷地内にある藤の花が綺麗に見えるだろうなぁ……と現実逃避をしてみるものの。現実は変わらず。
ボールはぐんぐんと飛んでいき、そして。
ガチャン!!!
大きな音を立てて、病院の三階の窓が割れた。
「ヤバい……」
「ど、どうするんだよ。姉ちゃん」
「そんなの、決まってるでしょ。…………逃げるぞ~!!!」
その言葉に、病院サッカーチームの面々が散り散りになっていく。
さて。私も逃げなきゃ。
グッと足に力を入れた。その瞬間、大きな影がかかった。
? さっきまで雲一つなかったよね。
自身の記憶力を辿りながら、空を見上げた。そこには――――大きな白い化け物がいた。
何度かあの化け物を見たことがある。とはいっても、あの化け物は私にしか、いや。私と一護にしか見えない。あの化け物はどうも幽霊……。つまりこの世のモノでないもの、らしい。
私が幼い頃から病弱だったからか。この世のモノではないものが見える。
それにしても今日はなんだか様子がおかしい。
化け物の目は黒光りしていて、キョロキョロと忙しなく辺りを見回している。……かと思えば。
視線がとある一点を捉えた。
その一点とは私――――ではなく。私の後ろ。
「!」
病院サッカーチーム、最年少の男の子が体育座りをしていた。男の子は逃げるときに転んだらしく、膝を擦りむいている。
化け物は男の子をただひたすら真っすぐ見据えて、ゆっくりとこちらに迫っていた。
「どうしたの!?」
そう叫んでみるも、私の声は化け物には届かない。
どうして。あの化け物は今までこんな行動を見せなかった。
そう考えてみるものの、化け物はすぐそこまで差し迫っている。
「っ!」
私は化け物に背を向けて、一気に男の子の元へ駆けた。その勢いのまま、男の子を自身の腕で抱える。
男の子の目が驚きで見開かれたが、それを気にしている余裕はない。
今は走らなきゃ――。
男の子を抱え、走る。走る。走る。
だが50メートル程走ったところで、ドクン、と心臓が大きく跳ねた。
「っ……」
思わずその場に座り込む。
体が弱いのに無理をしたからだ。
ヒュウ、ゼェ、ハァ……と荒く息を繰り返す。
その間にも化け物はこちらに迫ってきている。私に出来ることといえば、化け物に背を向け、男の子を抱えることだけだ。
化け物と私との距離はあと三歩。化け物の手がこちらに伸ばされる。
私の瞳はただただ化け物を見ることしか出来ない。
終わった……。
そう覚悟した瞬間。桜の花びらとともに、白い羽織が目の前いっぱいに広がった――――。