真実を映す鏡 5
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―一護視点―
ケータイ電話からやけに冷静な声が聞こえてくる。いや、緊急事態だからこそ阿 近 さんは冷静なのかもしれないが……。
『現時点でこちらの損害は、霊圧消失隊士二千二百四十名。席官五十六名。副隊長一名。数値は秒単位で増加している』
「待ってくれ、霊圧消失ってのは……。……死んだって事か?」
『不明だ。だが副隊長一名は朽木ルキアと阿散井恋次じゃない』
「そういう事を訊いてんじゃ……」
『必要な情報として伝えたまでだ。他意は無い』
――――…………。
俺は軽く目を閉じる。
焦る心が少し落ち着く。
ルキアと恋次のことを聞いたわけじゃなかったが。……阿近さんに感謝だな。
「……敵の能力は?」
目をしっかりと開けて尋ねる。
『残念だが滅却師 という以上の情報は、こっちの技術開発局には入っていない。それほど戦況は逼迫 している。ただ――』
一拍、間が置く。
『一つだけ解っているのは、敵は“卍解を奪い取る”能力を持っているという事だけだ』
「! 何言ってんだ!? そんなことできる訳が――」
「俺だって疑いてぇ。だが議論の余地は無ぇ。これは――――。既に卍解を奪われた二・六・七・十番隊、隊長達からの情報だ」
! 嘘だろっ――――……!!!
隊長達の強さはよく分かっている。だからこそ、そう簡単に信じられない。
嫌な汗が頬を伝う。
緊急事態、逼迫した戦況と言っていたが。これは……。思っている以上にマズいんじゃないか。それも死神代行を頼らずにはいられないくらいに……。
そこにザザッとノイズが走る。
『敵サンの能力はこちらからお伝えします』
「!」
浦原さんの声だ。
『先程の黒崎サンの戦闘で敵サンのデータを収集・解析しました。滅却師側の能力で特筆すべきは大きく3点。
1つ目は「滅却師 完聖体 」。彼等の能力の中で最も明確に形状と戦闘能力が変化します。
2つ目は「ブルート」と呼んでいた能力で、自らの血管の中に直接霊視を流し込んで攻撃能力と防御能力を飛躍的に上昇させます。ただこの能力には大きな欠点があります。攻撃と防御の2つを同時に行う事ができないんです。先程彼は卍解後の黒崎サンに対して効果的な攻撃を加えられませんでしたが、防御用の「ブルート」の方に霊視を割り振らざるを得なかったからです。アタシが彼に決定打を与える事ができたのもこれです。
そして最も重要な3つ目が』
思わず唾を飲みこんだ。
阿近さんが言っていた――。
『「卍解奪略」』
『彼らは自らの持つ金属盤を用いて卍解を奪う事ができます。原理についてはこれから彼の持っていた金属板を解析してみますが――――。ここで重要なのは、彼等は「黒崎サンの卍解だけは奪う事ができない」という事です』
何故、と疑問を言葉にしそうになるが口を閉じる。
『アタシは――敵サン達は黒崎サンが虚圏 から動けないタイミングを狙って尸魂界 に侵攻したんじゃないかと思っています。敵は黒崎サンを警戒しています。だからこそ黒崎サンが尸魂界へ行く意味があるんです』
刀を握る手に一層力がこもる。
『危険な戦いです。じきにアタシもそちらへ向かいます。…………くれぐれも無理はしないで下さい』
「……ああ」
強く頷いた。通話を切ろうとわずかにケータイ電話を耳から離した。その瞬間。
ヒュッと青白い光が真横を横切った。かと思うと、青白い光は目の前の穿開門 の出口に当たり大きく広がった。
「な……!?」
青白い光は出口をみるみるうちに閉じていく。
早く浦原さんに、と一度耳から離したケータイ電話を当てる。だがその瞬間、バンッと完全に出口が塞がってしまった。
「浦原さん! どうなってんだ!?」
応答はない。
「浦原さん!!!」
やはり、応答はない。
出口が閉ざされたせいで周囲は暗闇に包まれる。
一体何が。何があったんだよ。
すると真っ暗闇の中、周囲が急に青白い光で明るくなる。俺は後ろを一気に振り返った。青白い光が矢のように真っすぐにこちらに迫ってきている。
「!」
咄嗟に刀で受け止める。だが。青白い光は穿開門の出口を閉じた時と同様、大きく広がり囲まれる。
っ! 出られねぇ。
取り囲まれた光に向かって大きく刀を振り下ろすが、ビクともしない。
まるで――――監獄のような。
『どうした黒崎!? 何があった!?』
ケータイ電話から阿近さんの声が聞こえてくる。
俺は咄嗟に「阿近さんか!?」とケータイ電話に向かってまくし立てる。
「すまねぇ。何か分かんねぇけど閉じ込め――」
『おい! 応答しろ黒崎!』
「阿近さん!? 応答してる!」
『黒崎!! 黒崎!!』
「聞こえねぇのか!?」
『……ダメだ。応答が無え…………』
こっちからの音が届かねぇのか――……!
必死に何か聞こえないかと耳を澄ます。
『すぐに調査しろ』と指示を出す声が聞こえてくる。
助けにきてくれそうだ、と息を吐き出した。だが。
『ぐあッ!?』『ぎゃあ!!』
すぐに悲鳴が電話から響き渡る。
「どうした!? 何があった阿近さん!?」
答える声は無い。ただ悲鳴が聞こえるのみだ。
『どうした!? 技術開発局!! 何があったのだ!?』
! ルキア!?
どうしてルキアの声が。それどころか。
『うおォッ!?』
『どうなってんの!?』
『構うな! 今は敵に集中しろ!!』
「なんで技術開発局に居ねえ筈の、みんなの声が聞こえてきてんだよ!?」
何も分からない。どうなってんだ。何が起こってる。皆、無事なのか。
グルグルと思考が巡る。
その間にも、皆の声が周囲の暗闇から浮かぶように聞こえてくる――。
『うあああああッ!!』
『隊長!!』
『いやだよ、もういやだああああああ』
『絶対に許さねえぞ!!!』
『なんで死んじゃうの。なんでえええええ』
やめろ。やめてくれ。
一人、何も出来ず置き去りにされる。
あの時と同じ。母さんが亡くなった時のように。
何も出来なかった、弱い自分自身――――。
『耐えろ! 絶対に堪えるのだ!!』
………………。
『必ず……』
…………。
『必ず一護が来てくれる!!!』
!
悲鳴の中に、力強い言葉が聞こえた。
違う。ガキの頃とは。――……今は誰かを護ることの出来る、力を手に入れたんだ。
俺はありったけの力を込めて、刀を振り下ろした。
ケータイ電話からやけに冷静な声が聞こえてくる。いや、緊急事態だからこそ
『現時点でこちらの損害は、霊圧消失隊士二千二百四十名。席官五十六名。副隊長一名。数値は秒単位で増加している』
「待ってくれ、霊圧消失ってのは……。……死んだって事か?」
『不明だ。だが副隊長一名は朽木ルキアと阿散井恋次じゃない』
「そういう事を訊いてんじゃ……」
『必要な情報として伝えたまでだ。他意は無い』
――――…………。
俺は軽く目を閉じる。
焦る心が少し落ち着く。
ルキアと恋次のことを聞いたわけじゃなかったが。……阿近さんに感謝だな。
「……敵の能力は?」
目をしっかりと開けて尋ねる。
『残念だが
一拍、間が置く。
『一つだけ解っているのは、敵は“卍解を奪い取る”能力を持っているという事だけだ』
「! 何言ってんだ!? そんなことできる訳が――」
「俺だって疑いてぇ。だが議論の余地は無ぇ。これは――――。既に卍解を奪われた二・六・七・十番隊、隊長達からの情報だ」
! 嘘だろっ――――……!!!
隊長達の強さはよく分かっている。だからこそ、そう簡単に信じられない。
嫌な汗が頬を伝う。
緊急事態、逼迫した戦況と言っていたが。これは……。思っている以上にマズいんじゃないか。それも死神代行を頼らずにはいられないくらいに……。
そこにザザッとノイズが走る。
『敵サンの能力はこちらからお伝えします』
「!」
浦原さんの声だ。
『先程の黒崎サンの戦闘で敵サンのデータを収集・解析しました。滅却師側の能力で特筆すべきは大きく3点。
1つ目は「
2つ目は「ブルート」と呼んでいた能力で、自らの血管の中に直接霊視を流し込んで攻撃能力と防御能力を飛躍的に上昇させます。ただこの能力には大きな欠点があります。攻撃と防御の2つを同時に行う事ができないんです。先程彼は卍解後の黒崎サンに対して効果的な攻撃を加えられませんでしたが、防御用の「ブルート」の方に霊視を割り振らざるを得なかったからです。アタシが彼に決定打を与える事ができたのもこれです。
そして最も重要な3つ目が』
思わず唾を飲みこんだ。
阿近さんが言っていた――。
『「卍解奪略」』
『彼らは自らの持つ金属盤を用いて卍解を奪う事ができます。原理についてはこれから彼の持っていた金属板を解析してみますが――――。ここで重要なのは、彼等は「黒崎サンの卍解だけは奪う事ができない」という事です』
何故、と疑問を言葉にしそうになるが口を閉じる。
『アタシは――敵サン達は黒崎サンが
刀を握る手に一層力がこもる。
『危険な戦いです。じきにアタシもそちらへ向かいます。…………くれぐれも無理はしないで下さい』
「……ああ」
強く頷いた。通話を切ろうとわずかにケータイ電話を耳から離した。その瞬間。
ヒュッと青白い光が真横を横切った。かと思うと、青白い光は目の前の
「な……!?」
青白い光は出口をみるみるうちに閉じていく。
早く浦原さんに、と一度耳から離したケータイ電話を当てる。だがその瞬間、バンッと完全に出口が塞がってしまった。
「浦原さん! どうなってんだ!?」
応答はない。
「浦原さん!!!」
やはり、応答はない。
出口が閉ざされたせいで周囲は暗闇に包まれる。
一体何が。何があったんだよ。
すると真っ暗闇の中、周囲が急に青白い光で明るくなる。俺は後ろを一気に振り返った。青白い光が矢のように真っすぐにこちらに迫ってきている。
「!」
咄嗟に刀で受け止める。だが。青白い光は穿開門の出口を閉じた時と同様、大きく広がり囲まれる。
っ! 出られねぇ。
取り囲まれた光に向かって大きく刀を振り下ろすが、ビクともしない。
まるで――――監獄のような。
『どうした黒崎!? 何があった!?』
ケータイ電話から阿近さんの声が聞こえてくる。
俺は咄嗟に「阿近さんか!?」とケータイ電話に向かってまくし立てる。
「すまねぇ。何か分かんねぇけど閉じ込め――」
『おい! 応答しろ黒崎!』
「阿近さん!? 応答してる!」
『黒崎!! 黒崎!!』
「聞こえねぇのか!?」
『……ダメだ。応答が無え…………』
こっちからの音が届かねぇのか――……!
必死に何か聞こえないかと耳を澄ます。
『すぐに調査しろ』と指示を出す声が聞こえてくる。
助けにきてくれそうだ、と息を吐き出した。だが。
『ぐあッ!?』『ぎゃあ!!』
すぐに悲鳴が電話から響き渡る。
「どうした!? 何があった阿近さん!?」
答える声は無い。ただ悲鳴が聞こえるのみだ。
『どうした!? 技術開発局!! 何があったのだ!?』
! ルキア!?
どうしてルキアの声が。それどころか。
『うおォッ!?』
『どうなってんの!?』
『構うな! 今は敵に集中しろ!!』
「なんで技術開発局に居ねえ筈の、みんなの声が聞こえてきてんだよ!?」
何も分からない。どうなってんだ。何が起こってる。皆、無事なのか。
グルグルと思考が巡る。
その間にも、皆の声が周囲の暗闇から浮かぶように聞こえてくる――。
『うあああああッ!!』
『隊長!!』
『いやだよ、もういやだああああああ』
『絶対に許さねえぞ!!!』
『なんで死んじゃうの。なんでえええええ』
やめろ。やめてくれ。
一人、何も出来ず置き去りにされる。
あの時と同じ。母さんが亡くなった時のように。
何も出来なかった、弱い自分自身――――。
『耐えろ! 絶対に堪えるのだ!!』
………………。
『必ず……』
…………。
『必ず一護が来てくれる!!!』
!
悲鳴の中に、力強い言葉が聞こえた。
違う。ガキの頃とは。――……今は誰かを護ることの出来る、力を手に入れたんだ。
俺はありったけの力を込めて、刀を振り下ろした。