主人と僕の旅路 5 【完結】
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―殺生丸視点―
鈴の匂いが変わっていく。酸っぱい臭い。あの時と同じ。冥界に行って狐の血が活発した時と――。
殺生丸は地面に横たわっている鈴を鋭く見る。
―――――――
「不思議なものでな。いくら妖怪の血が薄れたとしても、人間の血は妖怪にはとうてい敵わんのさ」
―――――――
朴仙翁の言葉を思い出す。
奈落の瘴気に当てられて犬夜叉と同様に妖怪化したか。
殺生丸は一層目を細めた。
天生牙では鈴を救えなかったか。いや。そもそもこの奈落の体内に鈴を連れてきてしまった……。この殺生丸の落ち度か。
やがて鈴はうめき声を上げてふらふらと四つ足で立ち上がる。目が爛々と狂気に満ちている。
その目が殺生丸を捉えると鈴は鋭い爪を立てて四本足で向かってくる。
「……」
前に妖怪化した時は全く違う。何も考えていない。ただ戦うだけの獣、か……。
殺生丸は鈴の攻撃を天生牙で受け止める。その瞬間、殺生丸の腰に差してある鈴の九字兼定がガタガタと震えだす。
鈴のもとへ帰りたがっているのか……。だが。しばらく待て……。
殺生丸は勢いだけで鈴を跳ね返す。鈴は華麗に受け身をとると、再び鋭い爪を向けてくる。
九字兼定が鈴の周囲にある瘴気を退け妖怪化を抑えていたはずだ。だから九字兼定を与えれば元に戻るはずだが。
殺生丸はフッと息を吐く。
――試してみるか……。
殺生丸は天生牙を鞘へ戻す。頭の中にあるのは妖怪化した犬夜叉と人間のかごめのことだ。
そうこうしているうちに鈴の鋭い爪は殺生丸に迫り、遂に殺生丸の左肩を貫いた。徐々に白い着物が赤黒く染まっていく。
戻ってこい――。
殺生丸は鈴の腕を強引に掴むと、鈴の爪を自身の左肩にさらにのめり込ませる。
おそらく犬夜叉はかごめの血の匂いで正気に戻った。ならば――。鈴も――。賭けてみる価値はある。
「……鈴」
名前を呼んだ――。
―主人公視点―
「……鈴」
誰かに名前を呼ばれた気がする――。誰だっけ。分からない。でもとっても大切な人のような――。
そう思った途端にかぐわしい匂いが鼻につく。
こんなにいい匂いなら。きっとこの世で一番強い人……。強くて、大切で、好きで、愛おしい……――。
「…………せっしょう、まる、さま?」
その名前を呼んだ瞬間、急に視界が開けてくる。目の前には殺生丸さま。そしてその殺生丸さまは……。
「っ!!!」
血だらけ!!!
そしてそんな殺生丸さまを傷つけているのは――――私だ。
私はおそるおそる殺生丸さまの左肩から爪を引き抜く。
な、なんで……。私。殺生丸さまを……。
細かく震える私の手を殺生丸さまが優しく包む。
「ど、して」
どうして私に優しくしてくれるんだろう。殺生丸さまを傷つけて……。それなのに。どうして……。
殺生丸さまは腰から九字兼定を私に渡す。
「…………大事に持っておけ。この刀が奈落の瘴気を退けていた」
「……」
私はおずおずと九字兼定を受け取る。殺生丸さまは怪我など何もなかったかのように「行くぞ」と背を向けた。
「っ! 殺生丸さま!!!」
私が声を張り上げると殺生丸さまは足を止めた。
「そのっ…………。ごめん、なさい」
「…………」
「…………」
しばらくの沈黙――。
殺生丸さまはわずかに振り返る。
「……別にいい。賭けには勝った」
「賭け?」
そんな私の問いに答えることなく殺生丸さまは光の方角へ向かって行く。私は琥珀君と共に阿吽に乗り込んだ。
それにしても……。何故か殺生丸さまが上機嫌なのが不思議だった。
鈴の匂いが変わっていく。酸っぱい臭い。あの時と同じ。冥界に行って狐の血が活発した時と――。
殺生丸は地面に横たわっている鈴を鋭く見る。
―――――――
「不思議なものでな。いくら妖怪の血が薄れたとしても、人間の血は妖怪にはとうてい敵わんのさ」
―――――――
朴仙翁の言葉を思い出す。
奈落の瘴気に当てられて犬夜叉と同様に妖怪化したか。
殺生丸は一層目を細めた。
天生牙では鈴を救えなかったか。いや。そもそもこの奈落の体内に鈴を連れてきてしまった……。この殺生丸の落ち度か。
やがて鈴はうめき声を上げてふらふらと四つ足で立ち上がる。目が爛々と狂気に満ちている。
その目が殺生丸を捉えると鈴は鋭い爪を立てて四本足で向かってくる。
「……」
前に妖怪化した時は全く違う。何も考えていない。ただ戦うだけの獣、か……。
殺生丸は鈴の攻撃を天生牙で受け止める。その瞬間、殺生丸の腰に差してある鈴の九字兼定がガタガタと震えだす。
鈴のもとへ帰りたがっているのか……。だが。しばらく待て……。
殺生丸は勢いだけで鈴を跳ね返す。鈴は華麗に受け身をとると、再び鋭い爪を向けてくる。
九字兼定が鈴の周囲にある瘴気を退け妖怪化を抑えていたはずだ。だから九字兼定を与えれば元に戻るはずだが。
殺生丸はフッと息を吐く。
――試してみるか……。
殺生丸は天生牙を鞘へ戻す。頭の中にあるのは妖怪化した犬夜叉と人間のかごめのことだ。
そうこうしているうちに鈴の鋭い爪は殺生丸に迫り、遂に殺生丸の左肩を貫いた。徐々に白い着物が赤黒く染まっていく。
戻ってこい――。
殺生丸は鈴の腕を強引に掴むと、鈴の爪を自身の左肩にさらにのめり込ませる。
おそらく犬夜叉はかごめの血の匂いで正気に戻った。ならば――。鈴も――。賭けてみる価値はある。
「……鈴」
名前を呼んだ――。
―主人公視点―
「……鈴」
誰かに名前を呼ばれた気がする――。誰だっけ。分からない。でもとっても大切な人のような――。
そう思った途端にかぐわしい匂いが鼻につく。
こんなにいい匂いなら。きっとこの世で一番強い人……。強くて、大切で、好きで、愛おしい……――。
「…………せっしょう、まる、さま?」
その名前を呼んだ瞬間、急に視界が開けてくる。目の前には殺生丸さま。そしてその殺生丸さまは……。
「っ!!!」
血だらけ!!!
そしてそんな殺生丸さまを傷つけているのは――――私だ。
私はおそるおそる殺生丸さまの左肩から爪を引き抜く。
な、なんで……。私。殺生丸さまを……。
細かく震える私の手を殺生丸さまが優しく包む。
「ど、して」
どうして私に優しくしてくれるんだろう。殺生丸さまを傷つけて……。それなのに。どうして……。
殺生丸さまは腰から九字兼定を私に渡す。
「…………大事に持っておけ。この刀が奈落の瘴気を退けていた」
「……」
私はおずおずと九字兼定を受け取る。殺生丸さまは怪我など何もなかったかのように「行くぞ」と背を向けた。
「っ! 殺生丸さま!!!」
私が声を張り上げると殺生丸さまは足を止めた。
「そのっ…………。ごめん、なさい」
「…………」
「…………」
しばらくの沈黙――。
殺生丸さまはわずかに振り返る。
「……別にいい。賭けには勝った」
「賭け?」
そんな私の問いに答えることなく殺生丸さまは光の方角へ向かって行く。私は琥珀君と共に阿吽に乗り込んだ。
それにしても……。何故か殺生丸さまが上機嫌なのが不思議だった。