主人と僕の旅路 3
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殺生丸さまが神楽を庇った。助けた。その事実が心と足を重くする。
殺生丸さまの後ろを歩いていく。けれど足が重くて重くて、思うように動いてくれない。
なんだか体がだるい……。
だんだんと殺生丸様の背中が遠くなっていく。
「ゼェゼェ」と息を荒くしながら、地面を踏みしめる。
どうしたんだろう。変だ。足が重くて体がだるい。おまけに頭も痛くなってきた。
殺生丸さまが急に立ち止まる。距離の開いたまま、私も立ち止まる。
「……」
殺生丸さまは無言のまま、私に近付く。そして邪見に目をやった。
「……邪見」
「は、はいっ」
「休める場所を探してこい」
「へ?」
邪見と私はお互いに顔を見合わせ合って首を傾げる。
「鈴……」
急に殺生丸様に名前を呼ばれる。
「あ、はい」
「……何かあればすぐに言えと言った筈だ」
???
ガンガンと音が鳴り響く頭でどういうことか一生懸命考える。けれど答えは出そうにない。
すると殺生丸様は私をジッと見つめたかと思うと、片手で抱きかかえられた。
「え!! せ、殺生丸様っ」
「……体調を崩しているのだろう」
「え?」
体調?
私は殺生丸様に抱きかかえられたまま、おでこに手を当てる。
頭がガンガンと鳴り響く頭は、自分が風邪だと主張していた。
私は洞窟で横たわっていた。ゴホゴホと咳き込む。
殺生丸様と神楽のことで頭がいっぱいになって、自分が風邪を引いていることに気がつかないなんて……。
殺生丸様と邪見は二人で私を置いてどこかへ行ってしまった。
帰って来てくれるとは思うけれど……。
久々に感じる孤独で涙目になってしまう。
私、また迷惑かけたかな……。このままじゃ殺生丸様に好かれるどころか、嫌われてしまう……。
私は顔を手で覆う。
嫌だ、嫌だ、嫌だ……。殺生丸様に嫌われるのも、私以外の誰かに優しい言葉を囁くのも嫌だ。何より……。
――こんな醜い感情を持っている私が一番嫌だ――
一筋の涙が頬を伝う。
それをグッと強く手で拭った。その時、覚えのある妖気が近付いて来るのを感じる。
この妖気は――。
「神楽……」
――殺生丸視点――
「これだから人間という生き物はっ」
邪見は畑を掘り起こしながらブツブツと「何でわしが……」と呟いている。
殺生丸は邪見を横目で見る。
最初に出会った時、水をかけられた時からよく分からない女だと思っていたが……。共に過ごしていく中で徐々に考えが読めるようになっていた。
だが……。
今は鈴の考えていることが何一つ分からない。
一体何を考えている……――
その時、
「!」
嫌な臭いが鼻につく。
あの神楽とかいう妖怪の血の臭い……。それに。
――鈴が近くにいる――
―主人公視点―
だるい体を気合だけで動かす。バクバクと心臓が音を立てる。
嫌な予感。
この嫌な予感は神楽が裏切るつもりだと聞いたあの時と同じもの。
「ゼェゼェ」と息を切らしながら、妖気に近付いていく。
そして……。神楽を見つけた。
「神楽!」
しゃがみ込んでいる神楽を見て、ありったけの声で名前を叫ぶ。
神楽はうつむいている顔をゆっくりと上げる。
「ああ、あんたかい。陰陽師」
「……その、傷……」
着物は血だらけ。心臓部分には穴が開いている。その穴から瘴気が徐々に流れ出ていた。
「……奈落にやられちまってよ。ザマァねぇな」
「……」
「せっかく、心臓が戻って自由になったっていうのによ」
神楽は苦笑いを浮かべる。死ぬかもしれないのに、余裕綽々で焦っている様子もない。
その様子がなんだか無性に腹が立った。
「どうして……。どうしてっ! そんな風にいられるの」
「……」
「私がっ、馬鹿みたいじゃない」
こんな時に言う言葉じゃないのは分かっていた。それでも、今までの鬱憤がたまって口が閉まらない。
「私だけいつも焦ってばかりっ。神楽が殺生丸様のこと好きなのかもしれないと焦って、落ち込んで。暗くなって」
「……」
「それなのに神楽はっ。神楽はっ」
私の言葉を神楽は変わらず苦笑いのまま聞いている。
「神楽は余裕で。だから腹が立つのっ」
「……無茶苦茶だな」
「そうだよ。無茶苦茶だよ! だって……。神楽はずるいもの。神楽ももっと焦ればよかったんだ。落ち込めばよかったんだ。そうすれば、優越感に浸れていたのに」
きっと神楽も殺生丸様のことを……。なのに神楽は私に対して嫉妬心を感じていない様子で。だから、心の底ではそんな余裕な神楽が羨ましかった。
ザァと風が吹いて、桃色の花びらが舞い上がる。
「あんたは自由だ」
ポツリと神楽が呟く。
「この先、自分が望む相手といくらでも幸せになれる。――殺生丸を頼んだ」
「そんなの……ズルい」
風邪のせいなのか、それとも今胸にある痛みのせいなのか。声がかすれる。
「神楽は……ズルい」
「……そうだな。だから、この先殺生丸と幸せにならなかったら許さないよ」
「……」
「これはあたしからの呪いさ」
――呪い――
胸に軽く手を当てる。サク……と後ろから足音が聞こえる。
この妖気は……。
私はグッと涙をこらえて後ろを見る。
――殺生丸さま――
殺生丸様は私の隣に静かに立つ。
「奈落の瘴気の臭いを追ってきた」
殺生丸さまの言葉に、神楽はまた視線を下に向ける。
「がっかりしたかい。奈落じゃなくてよ」
「……」
一瞬の沈黙。
花畑は風に揺らいでいる。
私は一歩後ろに下がった。
きっと……。この先は私が出てはいけない。
「おまえだと分かっていた」
ザワ……と風が強くなっていく。
神楽は一瞬、殺生丸様に目をやった後顔を下げる。
「そう……か……」
ブワ……とひと際多く瘴気が流れ出す。
その光景が花と交わって、とても美しい光景に見えた。
-神楽視点―
――この先殺生丸と幸せにならなかったら許さないよーー
何であんなことを言ったのか、自分でも分からない。ただ、鈴がずっと羨ましかったのかもしれない。
殺生丸に出会って、自由に生きて、恋をしていた。
そんな鈴が羨ましかった。
だから少し意地悪をした。きっと一番聞きたくないであろう『呪い』という言葉で。
殺生丸と少し後ろに鈴の姿が見える。グッと口を噛み締め涙をこらえている。
全く、恋敵がいなくなったら普通は喜ぶだろうが……。
体から瘴気が出てくる。
「……いくのか」と殺生丸の声。
「ああ……。もういい……」
――おまえだとわかっていた――
その一言で全てが救われた。
殺生丸の顔が映る。
――最後に……会えた――
ついでに鈴の今にも泣きそうなヒドイ面も見ておく。
泣くな……。私はあんたに……。
――自分の人生を託せたんだから――
―主人公視点―
体全体から瘴気が溢れ、風に乗って神楽の姿は消えた。風と共に花びらが舞い上がる。
泣くな、泣くな……。ここで泣いたら駄目だ。
唇を噛んで必死に耐える。
「……鈴、行くぞ」
私は黙って小さく頷く。
今、口を開いたら大声を上げて泣いてしまうから。
「待てよ、殺生丸」
いつの間にか犬夜叉さんたちは後ろにいる。
「神楽は……苦しんで……いたか?」
殺生丸さまは空を見上げる。
空には一枚の羽根が風に揺れて漂っていた。
「笑っていた……」
殺生丸さまの後ろを歩いていく。けれど足が重くて重くて、思うように動いてくれない。
なんだか体がだるい……。
だんだんと殺生丸様の背中が遠くなっていく。
「ゼェゼェ」と息を荒くしながら、地面を踏みしめる。
どうしたんだろう。変だ。足が重くて体がだるい。おまけに頭も痛くなってきた。
殺生丸さまが急に立ち止まる。距離の開いたまま、私も立ち止まる。
「……」
殺生丸さまは無言のまま、私に近付く。そして邪見に目をやった。
「……邪見」
「は、はいっ」
「休める場所を探してこい」
「へ?」
邪見と私はお互いに顔を見合わせ合って首を傾げる。
「鈴……」
急に殺生丸様に名前を呼ばれる。
「あ、はい」
「……何かあればすぐに言えと言った筈だ」
???
ガンガンと音が鳴り響く頭でどういうことか一生懸命考える。けれど答えは出そうにない。
すると殺生丸様は私をジッと見つめたかと思うと、片手で抱きかかえられた。
「え!! せ、殺生丸様っ」
「……体調を崩しているのだろう」
「え?」
体調?
私は殺生丸様に抱きかかえられたまま、おでこに手を当てる。
頭がガンガンと鳴り響く頭は、自分が風邪だと主張していた。
私は洞窟で横たわっていた。ゴホゴホと咳き込む。
殺生丸様と神楽のことで頭がいっぱいになって、自分が風邪を引いていることに気がつかないなんて……。
殺生丸様と邪見は二人で私を置いてどこかへ行ってしまった。
帰って来てくれるとは思うけれど……。
久々に感じる孤独で涙目になってしまう。
私、また迷惑かけたかな……。このままじゃ殺生丸様に好かれるどころか、嫌われてしまう……。
私は顔を手で覆う。
嫌だ、嫌だ、嫌だ……。殺生丸様に嫌われるのも、私以外の誰かに優しい言葉を囁くのも嫌だ。何より……。
――こんな醜い感情を持っている私が一番嫌だ――
一筋の涙が頬を伝う。
それをグッと強く手で拭った。その時、覚えのある妖気が近付いて来るのを感じる。
この妖気は――。
「神楽……」
――殺生丸視点――
「これだから人間という生き物はっ」
邪見は畑を掘り起こしながらブツブツと「何でわしが……」と呟いている。
殺生丸は邪見を横目で見る。
最初に出会った時、水をかけられた時からよく分からない女だと思っていたが……。共に過ごしていく中で徐々に考えが読めるようになっていた。
だが……。
今は鈴の考えていることが何一つ分からない。
一体何を考えている……――
その時、
「!」
嫌な臭いが鼻につく。
あの神楽とかいう妖怪の血の臭い……。それに。
――鈴が近くにいる――
―主人公視点―
だるい体を気合だけで動かす。バクバクと心臓が音を立てる。
嫌な予感。
この嫌な予感は神楽が裏切るつもりだと聞いたあの時と同じもの。
「ゼェゼェ」と息を切らしながら、妖気に近付いていく。
そして……。神楽を見つけた。
「神楽!」
しゃがみ込んでいる神楽を見て、ありったけの声で名前を叫ぶ。
神楽はうつむいている顔をゆっくりと上げる。
「ああ、あんたかい。陰陽師」
「……その、傷……」
着物は血だらけ。心臓部分には穴が開いている。その穴から瘴気が徐々に流れ出ていた。
「……奈落にやられちまってよ。ザマァねぇな」
「……」
「せっかく、心臓が戻って自由になったっていうのによ」
神楽は苦笑いを浮かべる。死ぬかもしれないのに、余裕綽々で焦っている様子もない。
その様子がなんだか無性に腹が立った。
「どうして……。どうしてっ! そんな風にいられるの」
「……」
「私がっ、馬鹿みたいじゃない」
こんな時に言う言葉じゃないのは分かっていた。それでも、今までの鬱憤がたまって口が閉まらない。
「私だけいつも焦ってばかりっ。神楽が殺生丸様のこと好きなのかもしれないと焦って、落ち込んで。暗くなって」
「……」
「それなのに神楽はっ。神楽はっ」
私の言葉を神楽は変わらず苦笑いのまま聞いている。
「神楽は余裕で。だから腹が立つのっ」
「……無茶苦茶だな」
「そうだよ。無茶苦茶だよ! だって……。神楽はずるいもの。神楽ももっと焦ればよかったんだ。落ち込めばよかったんだ。そうすれば、優越感に浸れていたのに」
きっと神楽も殺生丸様のことを……。なのに神楽は私に対して嫉妬心を感じていない様子で。だから、心の底ではそんな余裕な神楽が羨ましかった。
ザァと風が吹いて、桃色の花びらが舞い上がる。
「あんたは自由だ」
ポツリと神楽が呟く。
「この先、自分が望む相手といくらでも幸せになれる。――殺生丸を頼んだ」
「そんなの……ズルい」
風邪のせいなのか、それとも今胸にある痛みのせいなのか。声がかすれる。
「神楽は……ズルい」
「……そうだな。だから、この先殺生丸と幸せにならなかったら許さないよ」
「……」
「これはあたしからの呪いさ」
――呪い――
胸に軽く手を当てる。サク……と後ろから足音が聞こえる。
この妖気は……。
私はグッと涙をこらえて後ろを見る。
――殺生丸さま――
殺生丸様は私の隣に静かに立つ。
「奈落の瘴気の臭いを追ってきた」
殺生丸さまの言葉に、神楽はまた視線を下に向ける。
「がっかりしたかい。奈落じゃなくてよ」
「……」
一瞬の沈黙。
花畑は風に揺らいでいる。
私は一歩後ろに下がった。
きっと……。この先は私が出てはいけない。
「おまえだと分かっていた」
ザワ……と風が強くなっていく。
神楽は一瞬、殺生丸様に目をやった後顔を下げる。
「そう……か……」
ブワ……とひと際多く瘴気が流れ出す。
その光景が花と交わって、とても美しい光景に見えた。
-神楽視点―
――この先殺生丸と幸せにならなかったら許さないよーー
何であんなことを言ったのか、自分でも分からない。ただ、鈴がずっと羨ましかったのかもしれない。
殺生丸に出会って、自由に生きて、恋をしていた。
そんな鈴が羨ましかった。
だから少し意地悪をした。きっと一番聞きたくないであろう『呪い』という言葉で。
殺生丸と少し後ろに鈴の姿が見える。グッと口を噛み締め涙をこらえている。
全く、恋敵がいなくなったら普通は喜ぶだろうが……。
体から瘴気が出てくる。
「……いくのか」と殺生丸の声。
「ああ……。もういい……」
――おまえだとわかっていた――
その一言で全てが救われた。
殺生丸の顔が映る。
――最後に……会えた――
ついでに鈴の今にも泣きそうなヒドイ面も見ておく。
泣くな……。私はあんたに……。
――自分の人生を託せたんだから――
―主人公視点―
体全体から瘴気が溢れ、風に乗って神楽の姿は消えた。風と共に花びらが舞い上がる。
泣くな、泣くな……。ここで泣いたら駄目だ。
唇を噛んで必死に耐える。
「……鈴、行くぞ」
私は黙って小さく頷く。
今、口を開いたら大声を上げて泣いてしまうから。
「待てよ、殺生丸」
いつの間にか犬夜叉さんたちは後ろにいる。
「神楽は……苦しんで……いたか?」
殺生丸さまは空を見上げる。
空には一枚の羽根が風に揺れて漂っていた。
「笑っていた……」