第1話
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『次元が宝石泥棒だと言いたいんですか』
綾の声はわずかに震えていた。
『次元はあの夜から姿を見ていません。行方も分かりません。気になって調べてみたら、王宮に申告していた経歴はまったくのデタラメでした』
『でも、トフィーは次元じゃないわ。……と思うわ』
ついさっきまで会話をしていたのだから、次元じゃないことは分かっている。
しかしそれを言う訳にもいかず、綾は弱々しく否定することしかできなかった。
『とにかく、我々はルナトーンを取り戻さなければなりません。ウサギは私どもが回収します』
『ち、ちょっと待って! 待ってください!』
ソーントンを止める綾の声。
『お話は分かりましたけど、トフィーを渡すかどうかは別問題です。だってそうでしょう? 考えてみたら、このウサギがあなたの言う『姿を変えられたウサギ』なのかどうかなんて分からないもの』
『綾さん、』
『万が一そうだとしても、元の人間に戻す方法は分かっているんですか?』
『それは、まだこれから。でも手がかりはあるんです』
『では、人間に戻す方法が分かるまでトフィーは私が預かります。さっきも言ったように、トフィーがルナトーンと関係のあるウサギだという証拠はないでしょう? 新月の夜にレセプション会場にいたっていうのは、状況証拠に過ぎないわ』
ソーントンが黙り込み、妙な空気の沈黙が訪れた。
それは通信機のこちら側でも同じだった。
ルパンも次元も固唾を呑んで事の成り行きを見守っている。
いや、正確には聞いているだけだが。
『仕方ありません』
小さなため息とともに、ソーントンが呟いた。
その冷ややかな口調に、次元がハッと息を呑む。
『いやっ……何を!』
数人の乱れた足音と、綾の悲鳴。
『ウサギの世話がしたいというなら、そうさせてあげましょう。一緒に来てもらいます』
『いやっ、放して……!』
陶器の割れる音とともに聞こえた鈍い音。
抵抗する綾を暴力で黙らせたと気づいた次元はすごい形相で立ち上がった。
ルパンは声を上げそうになる次元の口を慌ててふさぐ。
「むー! むー!」
「しーっ、しーっ! バレちゃうでしょーが!」
『ウサギを忘れるな』
ソーントンの声が遠くから聞こえた。
足音が近づいてくる。
すると通信機からゴソゴソという音がした。
「なんだ?」
ルパンは耳を澄ます。
ゴソゴソという音は少しの間続き、やがてカツンという小さな音を最後に通信は途絶えた。
綾の声はわずかに震えていた。
『次元はあの夜から姿を見ていません。行方も分かりません。気になって調べてみたら、王宮に申告していた経歴はまったくのデタラメでした』
『でも、トフィーは次元じゃないわ。……と思うわ』
ついさっきまで会話をしていたのだから、次元じゃないことは分かっている。
しかしそれを言う訳にもいかず、綾は弱々しく否定することしかできなかった。
『とにかく、我々はルナトーンを取り戻さなければなりません。ウサギは私どもが回収します』
『ち、ちょっと待って! 待ってください!』
ソーントンを止める綾の声。
『お話は分かりましたけど、トフィーを渡すかどうかは別問題です。だってそうでしょう? 考えてみたら、このウサギがあなたの言う『姿を変えられたウサギ』なのかどうかなんて分からないもの』
『綾さん、』
『万が一そうだとしても、元の人間に戻す方法は分かっているんですか?』
『それは、まだこれから。でも手がかりはあるんです』
『では、人間に戻す方法が分かるまでトフィーは私が預かります。さっきも言ったように、トフィーがルナトーンと関係のあるウサギだという証拠はないでしょう? 新月の夜にレセプション会場にいたっていうのは、状況証拠に過ぎないわ』
ソーントンが黙り込み、妙な空気の沈黙が訪れた。
それは通信機のこちら側でも同じだった。
ルパンも次元も固唾を呑んで事の成り行きを見守っている。
いや、正確には聞いているだけだが。
『仕方ありません』
小さなため息とともに、ソーントンが呟いた。
その冷ややかな口調に、次元がハッと息を呑む。
『いやっ……何を!』
数人の乱れた足音と、綾の悲鳴。
『ウサギの世話がしたいというなら、そうさせてあげましょう。一緒に来てもらいます』
『いやっ、放して……!』
陶器の割れる音とともに聞こえた鈍い音。
抵抗する綾を暴力で黙らせたと気づいた次元はすごい形相で立ち上がった。
ルパンは声を上げそうになる次元の口を慌ててふさぐ。
「むー! むー!」
「しーっ、しーっ! バレちゃうでしょーが!」
『ウサギを忘れるな』
ソーントンの声が遠くから聞こえた。
足音が近づいてくる。
すると通信機からゴソゴソという音がした。
「なんだ?」
ルパンは耳を澄ます。
ゴソゴソという音は少しの間続き、やがてカツンという小さな音を最後に通信は途絶えた。