第7話
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『金色ウサギと赤い竜』に最後までおつきあいいただきまして、ありがとうございました!
~ おまけ ~
朝からテレビがつけっぱなしだった。
有名人のゴシップにグルメリポート、昨夜のスポーツ解説、ファッションの最新トレンド、今週の天気。
ルパンも五エ門も、それぞれ手すさびの仕事をしながら、流れてくる情報を聞くとはなしに聞いている。
「あれ、次元。どこかへお出かけ?」
次元が身支度を整えているのに目ざとく気づいたルパンは彼を呼び止めた。
次元は落ちつかなそうに目を泳がせたあと、ボソリと言葉を返した。
「ちょっとな。……タバコを切らしちまってよ」
「ふーん……」
ルパンは興味なさそうに返事をしたが、次元の行き先がタバコ屋でない事は分かっていた。
というのも……
『こんなに早く賞をいただけるなんて、思いませんでした。たいへん光栄です。この映画に関わった全ての方に感謝を』
テレビから綾の声が流れてきたからだった。
『それから、私を気にかけて何度もお手紙をくださった、さる高貴なお方にもお礼を申し上げます。本当にありがとうございます』
ロイヤルブルーのドレスを着て、華やかな笑顔を振りまく綾の姿を、ルパンはぼんやりと眺めた。
『最後に……俺の前で下手な芝居をするなと言ってくれた最愛の恩人にも、感謝を述べたいと思います。彼がいなければここには立てていないと思うから……この受賞に彼が何て言ってくれるのか、楽しみにしています』
綾は一足先に授賞式の会場を抜け出した。
家まで送るというスタッフや受賞祝いに誘う役者仲間をやんわりといなし、地味な格好に着替えた綾は裏手の業者用の搬入口へ向かった。
表はレッドカーペットが敷かれ、お祭り騒ぎで、とても出て行く気にはなれなかった。
新人女優がノミネートされたとかなり話題になったのが数ヶ月前。
それから授賞式の今日まで次元からは何の音沙汰もなく、綾は完全に落ち込んでいた。
努力という言葉では足りないぐらい頑張った。
目が回るような忙しさで、プルーデンス王女から体調を心配する手紙が届いた程だった。
そうして、やっとここまでたどり着いたのに。
綾はドアを自分の体の分だけ開け、そこからすり抜けるようにして外に出た。
(会いに来てくれると思ったのに)
気疲れと落胆から思わず大きなため息をつく。
「浮かねぇ顔だな」
綾はピタリと足を止めた。
パッと顔を上げる。
柱に寄りかかり、わずかに帽子のつばを上げて、次元が綾を見ていた。
綾は言葉も忘れてぼう然と次元を見つめる。
「よう」
次元はゆっくりと綾に歩み寄った。
そして、お互いの顔が隠れて見えなくなるほどの大きな花束を差し出す。
綾の金髪に映える、真っ赤な薔薇の花束を。
「次元っ……!」
大きな瞳を潤ませ両腕を投げ出して、綾は次元の胸に飛び込んだ。
おわり
~ おまけ ~
朝からテレビがつけっぱなしだった。
有名人のゴシップにグルメリポート、昨夜のスポーツ解説、ファッションの最新トレンド、今週の天気。
ルパンも五エ門も、それぞれ手すさびの仕事をしながら、流れてくる情報を聞くとはなしに聞いている。
「あれ、次元。どこかへお出かけ?」
次元が身支度を整えているのに目ざとく気づいたルパンは彼を呼び止めた。
次元は落ちつかなそうに目を泳がせたあと、ボソリと言葉を返した。
「ちょっとな。……タバコを切らしちまってよ」
「ふーん……」
ルパンは興味なさそうに返事をしたが、次元の行き先がタバコ屋でない事は分かっていた。
というのも……
『こんなに早く賞をいただけるなんて、思いませんでした。たいへん光栄です。この映画に関わった全ての方に感謝を』
テレビから綾の声が流れてきたからだった。
『それから、私を気にかけて何度もお手紙をくださった、さる高貴なお方にもお礼を申し上げます。本当にありがとうございます』
ロイヤルブルーのドレスを着て、華やかな笑顔を振りまく綾の姿を、ルパンはぼんやりと眺めた。
『最後に……俺の前で下手な芝居をするなと言ってくれた最愛の恩人にも、感謝を述べたいと思います。彼がいなければここには立てていないと思うから……この受賞に彼が何て言ってくれるのか、楽しみにしています』
綾は一足先に授賞式の会場を抜け出した。
家まで送るというスタッフや受賞祝いに誘う役者仲間をやんわりといなし、地味な格好に着替えた綾は裏手の業者用の搬入口へ向かった。
表はレッドカーペットが敷かれ、お祭り騒ぎで、とても出て行く気にはなれなかった。
新人女優がノミネートされたとかなり話題になったのが数ヶ月前。
それから授賞式の今日まで次元からは何の音沙汰もなく、綾は完全に落ち込んでいた。
努力という言葉では足りないぐらい頑張った。
目が回るような忙しさで、プルーデンス王女から体調を心配する手紙が届いた程だった。
そうして、やっとここまでたどり着いたのに。
綾はドアを自分の体の分だけ開け、そこからすり抜けるようにして外に出た。
(会いに来てくれると思ったのに)
気疲れと落胆から思わず大きなため息をつく。
「浮かねぇ顔だな」
綾はピタリと足を止めた。
パッと顔を上げる。
柱に寄りかかり、わずかに帽子のつばを上げて、次元が綾を見ていた。
綾は言葉も忘れてぼう然と次元を見つめる。
「よう」
次元はゆっくりと綾に歩み寄った。
そして、お互いの顔が隠れて見えなくなるほどの大きな花束を差し出す。
綾の金髪に映える、真っ赤な薔薇の花束を。
「次元っ……!」
大きな瞳を潤ませ両腕を投げ出して、綾は次元の胸に飛び込んだ。
おわり
3/3ページ