ドン、という突き上げるような衝撃に足もとが揺れた。

崖下から竜がうなり声を上げる。



「ルパン⁉︎」



綾は崖の縁まで駆けて行って下を覗き込んだ。

竜はせわしなく翼を上下させて体勢を整えていた。

崖から岩がバラバラと落下している。

空間に余裕のない崖際で一斉射撃を避けた竜は、避けたはずみで体を崖に叩きつけてしまったのだ。



「ちと分が悪いようだな。拙者、ルパンに加勢してまいる」



五エ門はそう言うが早いか地面を蹴って崖から飛び降りた。



「あ、ちょっと！」



綾が驚いている間に五エ門は敏捷に岩肌を飛び下りていき、地面に着地すると、そのまま戦車の列に突っ込んでいった。



「ゴエモン⁉︎」



戦車に搭載されたAIが敵と認識するよりも早く、五エ門が居並ぶ砲身の間を駆け抜ける。

周囲の炎に照らされて斬鉄剣がギラリと光った。

一瞬の出来事だった。

静かに刀身をおさめる五エ門の背後では戦車がことごとくバラバラになった。



「すごいわゴエモン！」



綾は手を叩いた。

子供のようにピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ。



「綾！」



切羽詰ったような次元の声が飛んだ。

振り返った綾の目が、次元の焦った顔を捉える。

どうしてそんな顔をしているの？

綾はキョトンとして彼を見つめ返した。



「下を見ろ！」

「えっ？」



言われたとおり地面に目を向ければ、すぐ足もとに亀裂が走っていた。

それは綾の見ている前でみるみる大きな裂け目へと広がっていく。

崖に竜が衝突した衝撃で、展望台の突き出していた部分が崩れ落ちようとしているのだった。



「綾！」



綾は次元が差し出した手の方へ自分の手を伸ばしたが、足元がぐらりと揺れて体勢を崩した。

視界に空が広がった。

落ちる！

綾は目を瞑った。