第1話
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『探しましたよ。カフェはお辞めになっていましたし、引越しもされていて』
声から察するに、客は年配の男のようだった。
次元はすぐにそれがユニシアの王宮秘書、ソーントンだと気づいた。
『ユニシア王家から頂いた報酬でしばらくは暮らしていけますから。今はお芝居に専念しているんです』
『あなたの出演した 『 As you wish 』 、見ましたよ』
『嫌だ。ほんの端役だったのに』
綾の照れたような声。
言葉のわりには嬉しそうだ。
「『 As you wish 』 って……」
ルパンはチラリと次元を見た。
「ははーん。急に芝居なんか見たがるから変だと思ったぜ。彼女が出てるからだったのか」
次元は決まり悪そうにソッポを向いている。
『良い舞台でしたよ。あなたの評判も良かったみたいですね』
『私、王女の身がわりをして学んだんです。他人が持つイメージはその人のほんの一面に過ぎないって。だから与えられた役も多面的に捉えるようにしたんです。本当に、王宮では良い経験をさせていただきました』
カチャンと陶器の音がする。
ソーントンにお茶を用意したのだろう。
『それで今日は』と、綾が用向きを訊ねた。
『あのレセプションの日にあなたが会場でウサギを見つけたと、警備主任からつい最近になって聞きましてね』
『トフィーが何か……』
『トフィー?』
『あの子の名前です。蜂蜜みたいな毛色だからハニーにしようと思ったんですけど、どうも恋人を呼んでるみたいで気恥ずかしくて。キャラメルにしました。子供っぽいかしら』
『私も子供の頃はクラッシュトフィーを齧るのが大好きでしたよ』
ソーントンは笑った。
『あなたがウサギを引き取ったと聞いたので、急いで伺ったのです。申し訳ない事をしました。ウサギはこちらで引き取ります』
『えっ、ちょっと待ってください』
綾の焦った声。
『警備主任が処分するって言ったから引き取ったんです。殺すなんてかわいそうだわ』
『彼は言葉を間違えたんでしょう。飼い主が見つかるまでちゃんと世話しますよ』
少しの沈黙の後、綾が口を開いた。
『あの、飼い主が見つかるまで私にトフィーを預けてくれませんか? トフィーの為にペットOKのアパートに越したばかりですし』
『ですが……お芝居の勉強のお邪魔ではないですか?』
『たいした事じゃありません。そりゃあ、あの子も最初は餌を食べなかったり私の手を噛んだりしましたけど、ようやく慣れてきたところで……』
『そうして差し上げたいのは山々ですが……』
真剣に頼み込む綾に、ソーントンは躊躇いをみせた。
一度口をつぐんで考え込むと、小さなため息をついた。
『仕方ありません。極秘事項ですが、ウサギを引き取りに来た本当の理由をご説明しましょう』
声から察するに、客は年配の男のようだった。
次元はすぐにそれがユニシアの王宮秘書、ソーントンだと気づいた。
『ユニシア王家から頂いた報酬でしばらくは暮らしていけますから。今はお芝居に専念しているんです』
『あなたの出演した 『 As you wish 』 、見ましたよ』
『嫌だ。ほんの端役だったのに』
綾の照れたような声。
言葉のわりには嬉しそうだ。
「『 As you wish 』 って……」
ルパンはチラリと次元を見た。
「ははーん。急に芝居なんか見たがるから変だと思ったぜ。彼女が出てるからだったのか」
次元は決まり悪そうにソッポを向いている。
『良い舞台でしたよ。あなたの評判も良かったみたいですね』
『私、王女の身がわりをして学んだんです。他人が持つイメージはその人のほんの一面に過ぎないって。だから与えられた役も多面的に捉えるようにしたんです。本当に、王宮では良い経験をさせていただきました』
カチャンと陶器の音がする。
ソーントンにお茶を用意したのだろう。
『それで今日は』と、綾が用向きを訊ねた。
『あのレセプションの日にあなたが会場でウサギを見つけたと、警備主任からつい最近になって聞きましてね』
『トフィーが何か……』
『トフィー?』
『あの子の名前です。蜂蜜みたいな毛色だからハニーにしようと思ったんですけど、どうも恋人を呼んでるみたいで気恥ずかしくて。キャラメルにしました。子供っぽいかしら』
『私も子供の頃はクラッシュトフィーを齧るのが大好きでしたよ』
ソーントンは笑った。
『あなたがウサギを引き取ったと聞いたので、急いで伺ったのです。申し訳ない事をしました。ウサギはこちらで引き取ります』
『えっ、ちょっと待ってください』
綾の焦った声。
『警備主任が処分するって言ったから引き取ったんです。殺すなんてかわいそうだわ』
『彼は言葉を間違えたんでしょう。飼い主が見つかるまでちゃんと世話しますよ』
少しの沈黙の後、綾が口を開いた。
『あの、飼い主が見つかるまで私にトフィーを預けてくれませんか? トフィーの為にペットOKのアパートに越したばかりですし』
『ですが……お芝居の勉強のお邪魔ではないですか?』
『たいした事じゃありません。そりゃあ、あの子も最初は餌を食べなかったり私の手を噛んだりしましたけど、ようやく慣れてきたところで……』
『そうして差し上げたいのは山々ですが……』
真剣に頼み込む綾に、ソーントンは躊躇いをみせた。
一度口をつぐんで考え込むと、小さなため息をついた。
『仕方ありません。極秘事項ですが、ウサギを引き取りに来た本当の理由をご説明しましょう』