第4話
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「さて。目的は何だ」
部屋に入るとパルドアは綾をカウチソファに座らせた。
パルドアにあてがわれている部屋らしく、パルドアと彼の従者の他には誰もいない。
「目的って……」
綾は口ごもった。
本当のことなど言えるわけがない。
「何か誤解をしているようだわ。私はユニシアの王女。正真正銘、本物よ」
背筋を伸ばしてパルドアを見据える。
しかし彼はまったく動じず、口の端に笑みさえ浮かべて言った。
「では、庭にいた男は何者だ? ずいぶん情熱的な口づけを受けていたようだが」
「!」
綾は言葉に詰まった。
顔が首の付け根まで朱を注いだように真っ赤になる。
『あれは私だ』と言ったようなものだった。
「さすがは浮名を馳せたプルーデンス王女」
パルドアは顔中に笑みを広げた。
「もし貴女が本物の王女だとしても、クラウス王子との婚約はご破算だ。私は国王陛下に見たままを申し上げる」
「そんな!」
綾はソファから立ち上がった。
かつてはスキャンダルの多かったプルーデンスも、今ではクラウス一筋だ。
愛し合う二人の仲を引き裂くような事態にだけはしたくなかった。
「お願い、それだけは……!」
「王女としての体面を保ちたいと言うなら、」
パルドアは綾の肩を押さえてソファに押し戻した。
「歓迎パーティの席で自ら婚約破棄を宣言するんだ。それであなたは恥を晒さずにすむし、私の目的もかなう」
「あなたの目的って……」
「私には娘がいるんだが」
レディ・ローラ。
パルドア伯夫妻が目に入れても痛くないほど可愛がっている一人娘だ。
「ローラはいずれクラウス様の妻になる予定だった。あなたが横槍を入れてこなければ」
「お見合いは両国の王が決めたことよ」
「だが婚約した!」
パルドアは興奮した様子で声を荒げた。
綾はビクリと体を硬直させる。
パルドアは自分を落ち着かせようと一呼吸おいてから再び口を開いた。
「婚約を破棄してさえくれれば、庭園でのことは忘れよう。私は娘を王子の妻にし、国王から新たな爵位を授かる」
それが目的だったのだ。
綾はみすみすそのチャンスを与えてしまったのである。
「私を脅すの? 国際問題になるわよ。私の名誉を傷つけようものなら私の母、ユニシアの女王が黙っていない」
「本物なら、な」
パルドアは冷静だった。
彼にとっては本物かどうかは問題ではなかった。
どちらにせよ、公になれば婚約はご破算。
そうなれば彼の目的は果たせたも同然だ。
「そちらこそ、脅そうなどと考えないことだ。この事を誰かに話したり、万が一にも私が行方不明になったりすれば即手紙が国王のもとに届くようになっている。庭園で見たものを仔細に書きとめた手紙がね」
「卑怯な……」
綾はパルドアをにらみつけたが、彼は気にも留めなかった。
「くれぐれも破滅のナイフがお前の背中を狙っていることを忘れるな」
部屋に入るとパルドアは綾をカウチソファに座らせた。
パルドアにあてがわれている部屋らしく、パルドアと彼の従者の他には誰もいない。
「目的って……」
綾は口ごもった。
本当のことなど言えるわけがない。
「何か誤解をしているようだわ。私はユニシアの王女。正真正銘、本物よ」
背筋を伸ばしてパルドアを見据える。
しかし彼はまったく動じず、口の端に笑みさえ浮かべて言った。
「では、庭にいた男は何者だ? ずいぶん情熱的な口づけを受けていたようだが」
「!」
綾は言葉に詰まった。
顔が首の付け根まで朱を注いだように真っ赤になる。
『あれは私だ』と言ったようなものだった。
「さすがは浮名を馳せたプルーデンス王女」
パルドアは顔中に笑みを広げた。
「もし貴女が本物の王女だとしても、クラウス王子との婚約はご破算だ。私は国王陛下に見たままを申し上げる」
「そんな!」
綾はソファから立ち上がった。
かつてはスキャンダルの多かったプルーデンスも、今ではクラウス一筋だ。
愛し合う二人の仲を引き裂くような事態にだけはしたくなかった。
「お願い、それだけは……!」
「王女としての体面を保ちたいと言うなら、」
パルドアは綾の肩を押さえてソファに押し戻した。
「歓迎パーティの席で自ら婚約破棄を宣言するんだ。それであなたは恥を晒さずにすむし、私の目的もかなう」
「あなたの目的って……」
「私には娘がいるんだが」
レディ・ローラ。
パルドア伯夫妻が目に入れても痛くないほど可愛がっている一人娘だ。
「ローラはいずれクラウス様の妻になる予定だった。あなたが横槍を入れてこなければ」
「お見合いは両国の王が決めたことよ」
「だが婚約した!」
パルドアは興奮した様子で声を荒げた。
綾はビクリと体を硬直させる。
パルドアは自分を落ち着かせようと一呼吸おいてから再び口を開いた。
「婚約を破棄してさえくれれば、庭園でのことは忘れよう。私は娘を王子の妻にし、国王から新たな爵位を授かる」
それが目的だったのだ。
綾はみすみすそのチャンスを与えてしまったのである。
「私を脅すの? 国際問題になるわよ。私の名誉を傷つけようものなら私の母、ユニシアの女王が黙っていない」
「本物なら、な」
パルドアは冷静だった。
彼にとっては本物かどうかは問題ではなかった。
どちらにせよ、公になれば婚約はご破算。
そうなれば彼の目的は果たせたも同然だ。
「そちらこそ、脅そうなどと考えないことだ。この事を誰かに話したり、万が一にも私が行方不明になったりすれば即手紙が国王のもとに届くようになっている。庭園で見たものを仔細に書きとめた手紙がね」
「卑怯な……」
綾はパルドアをにらみつけたが、彼は気にも留めなかった。
「くれぐれも破滅のナイフがお前の背中を狙っていることを忘れるな」