第4話
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
綾の笑い声が聞こえた気がして、俯いていた次元はハッと顔を上げた。
すぐ近くに彼女がいる。
自分に会いに来たのではと通信機を確認するが、彼女は何も発信していない。
(何しに出てきた?)
薄暗い木立の中に目をこらすと、白いものがふわふわと横切っていくのが見えた。
それが綾の羽織った白いシャツだと分かると、次元はユニシアの街中で追いかけっこをした日を思い出した。
あの時は風船が割れた音を銃声と勘違いして、かなり怯えていた。
その彼女が、今は不安も動揺も見せず、ソーントンの裏をかこうとしているのだ。
(たいした役者だぜ……)
次元の口元に笑みが浮かんだ。
『もう大丈夫。あなたがそばにいる』
『ほら、ちゃんと守ってくれる』
自分に全幅の信頼をおいて行動する彼女が、とても愛しかった。
「プルーデンス」
声をかけようとしたタイミングで、別のほうから声がした。
次元は慌てて木陰に身をひそめる。
「クラウス!」
綾が髪を揺らして振り返り、パッと笑みをうかべた。
「あなたに会えるなんて、嬉しい偶然だわ」
クラウスの手をとり、これ以上ないほど嬉しそうな顔で言う。
「少し歩かない?」
二人は木立の中をゆっくり歩き出した。
「ねぇ、知っているかしら。私が重要な公務の時に身につけているルナトーンって宝石にはね、伝説があるの」
通信機のスイッチが入り、会話がより鮮明に聞こえてくる。
彼女がスイッチを入れたようだ。
「この国にもソルライトって宝石がある」
クラウスが語り出した。
次元は通信機に聞き耳をたてる。
「語り部によれば、大昔この国とユニシアがひとつの国だった時、病床の王が自分の子供に国と一緒に宝石を分け与えたそうだ。姉姫にはユニシアとルナトーンを、弟王子にはこの国とソルライトを。ただし、この宝石にはそれぞれ取り扱いに注意が必要だった。新月、満月の夜には決して手にしてはいけないとね」
「新月の夜にルナトーンを持つ者はウサギに姿を変えられてしまうんですって。ソルライトは?」
綾は立ち止まり、クラウスを見上げた。
「ソルライトは怒れる竜の真っ赤に燃える鱗が泉に落ちて出来たと言われている。だから、満月の夜にこの宝石を持つ者は怒れる竜に取り憑かれるそうだ」
「ねぇ、竜になってしまった人はいた?」
綾は訊ねた。
「ルナトーンは厳重に保管されていて、新月の夜には決して持ち出せないようになっているの。伝説をそこまで信じるなんて、おかしいでしょ? もしかしたら、伝説は本当の話だったりして」
「信じてなかったのか?」
「えっ?」
驚くクラウスに、綾も驚く。
「語り部は言ってたよ、口承伝承だから本当の意味での伝説なのであって、お伽話とか噂とは違うって。だからソルライトも満月の夜には持ち出せないようになっているんだ」
クラウスはソルライトと竜について、綾に詳しく話してくれた。
綾の首尾にルパンは満足だろうが、次元は違った。
彼女とクラウスの距離がとても近いことに苛ついていた。
クラウスに呼びかけられて振り向いた時の、あの笑顔は何だ。
まるで恋人を見つけたような顔をして。
すぐ近くに彼女がいる。
自分に会いに来たのではと通信機を確認するが、彼女は何も発信していない。
(何しに出てきた?)
薄暗い木立の中に目をこらすと、白いものがふわふわと横切っていくのが見えた。
それが綾の羽織った白いシャツだと分かると、次元はユニシアの街中で追いかけっこをした日を思い出した。
あの時は風船が割れた音を銃声と勘違いして、かなり怯えていた。
その彼女が、今は不安も動揺も見せず、ソーントンの裏をかこうとしているのだ。
(たいした役者だぜ……)
次元の口元に笑みが浮かんだ。
『もう大丈夫。あなたがそばにいる』
『ほら、ちゃんと守ってくれる』
自分に全幅の信頼をおいて行動する彼女が、とても愛しかった。
「プルーデンス」
声をかけようとしたタイミングで、別のほうから声がした。
次元は慌てて木陰に身をひそめる。
「クラウス!」
綾が髪を揺らして振り返り、パッと笑みをうかべた。
「あなたに会えるなんて、嬉しい偶然だわ」
クラウスの手をとり、これ以上ないほど嬉しそうな顔で言う。
「少し歩かない?」
二人は木立の中をゆっくり歩き出した。
「ねぇ、知っているかしら。私が重要な公務の時に身につけているルナトーンって宝石にはね、伝説があるの」
通信機のスイッチが入り、会話がより鮮明に聞こえてくる。
彼女がスイッチを入れたようだ。
「この国にもソルライトって宝石がある」
クラウスが語り出した。
次元は通信機に聞き耳をたてる。
「語り部によれば、大昔この国とユニシアがひとつの国だった時、病床の王が自分の子供に国と一緒に宝石を分け与えたそうだ。姉姫にはユニシアとルナトーンを、弟王子にはこの国とソルライトを。ただし、この宝石にはそれぞれ取り扱いに注意が必要だった。新月、満月の夜には決して手にしてはいけないとね」
「新月の夜にルナトーンを持つ者はウサギに姿を変えられてしまうんですって。ソルライトは?」
綾は立ち止まり、クラウスを見上げた。
「ソルライトは怒れる竜の真っ赤に燃える鱗が泉に落ちて出来たと言われている。だから、満月の夜にこの宝石を持つ者は怒れる竜に取り憑かれるそうだ」
「ねぇ、竜になってしまった人はいた?」
綾は訊ねた。
「ルナトーンは厳重に保管されていて、新月の夜には決して持ち出せないようになっているの。伝説をそこまで信じるなんて、おかしいでしょ? もしかしたら、伝説は本当の話だったりして」
「信じてなかったのか?」
「えっ?」
驚くクラウスに、綾も驚く。
「語り部は言ってたよ、口承伝承だから本当の意味での伝説なのであって、お伽話とか噂とは違うって。だからソルライトも満月の夜には持ち出せないようになっているんだ」
クラウスはソルライトと竜について、綾に詳しく話してくれた。
綾の首尾にルパンは満足だろうが、次元は違った。
彼女とクラウスの距離がとても近いことに苛ついていた。
クラウスに呼びかけられて振り向いた時の、あの笑顔は何だ。
まるで恋人を見つけたような顔をして。