第2話
name change
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コックに促されるままに隣の車両へ移ってきた綾だったが、バスルームの天井を見るなり呆然と立ち尽くした。
「穴、開いてる……」
彼女が指差す先は円形にきれいにくり抜かれており、やや強い風が吹き込んでいた。
「あぁ、それ? 俺が侵入してきたトコ」
背後から聞こえた、コックとはまったく違う声質に驚いて振り向く。
先程までコックだった男が顔のマスクをはがし、変装を解いていた。
「あなた誰……?」
「やだなぁ綾ちゃん。俺だよ。ルパン三世」
「ルパン!」
綾の顔に喜びが広がった。
「おい、ロープは結んできたぜ」
天井の穴からひょいと顔を出した次元が車内に飛び降りてくると、綾は両腕を広げて彼に抱きついた。
「次元! 来てくれたのね!」
「再会を喜ぶのは後だ。俺は前、次元は後ろを頼む。綾ちゃん、通信機つけて」
早口にルパンの指示が飛ぶ。
綾は頭の中ですばやく自分の位置を確認した。
列車は6両編成。個室のある御料車は4両目で、今いるのが3両目だ。
次元はウサギを抱いた綾とともに、3両目と4両目の間の連結部分に移動した。
『五エ門、聞こえるか。3両目を切り離すぞ。いいな?』
ルパンの声が通信機から聞こえた。
「ゴエモンって?」
綾が次元を見上げた。
「俺たちの仲間だ。天井を刀で切り抜いた奴さ。今はこの先の分岐点で転轍機のレバーを動かす準備をしている」
「転轍機って……いったい何をするつもりなの?」
「この車両だけを頂いちまおうって寸法さ」
次元は列車の進行方向を見た。
分岐点が迫っている。
「2両目と4両目をロープでつないだ。2両目が通り過ぎた直後に転轍機を動かして3両目だけを支線に引き入れ、4両目の直前でレバーを戻す。本線の先は下り坂だから運転手はブレーキをかけるだろう。スピードの落ちた2両目に4両目が突っ込んできて、ガッチャン! 勝手に連結されるって仕組みだ」
綾は目を丸くしている。
次元は笑った。
「ソーントンに見せつけるつもりなんだろう。その気になりゃテメェの鼻先をかすめて何でも盗める、ってな」
やがて、綾の目にも分岐点の標識が見えてきた。
次元は車両の間の踏み板を外し、手動で連結の解除にとりかかった。
彼が3両目にある緊急用の解除レバーを引くのを、綾は固唾を呑んで見守った。
「穴、開いてる……」
彼女が指差す先は円形にきれいにくり抜かれており、やや強い風が吹き込んでいた。
「あぁ、それ? 俺が侵入してきたトコ」
背後から聞こえた、コックとはまったく違う声質に驚いて振り向く。
先程までコックだった男が顔のマスクをはがし、変装を解いていた。
「あなた誰……?」
「やだなぁ綾ちゃん。俺だよ。ルパン三世」
「ルパン!」
綾の顔に喜びが広がった。
「おい、ロープは結んできたぜ」
天井の穴からひょいと顔を出した次元が車内に飛び降りてくると、綾は両腕を広げて彼に抱きついた。
「次元! 来てくれたのね!」
「再会を喜ぶのは後だ。俺は前、次元は後ろを頼む。綾ちゃん、通信機つけて」
早口にルパンの指示が飛ぶ。
綾は頭の中ですばやく自分の位置を確認した。
列車は6両編成。個室のある御料車は4両目で、今いるのが3両目だ。
次元はウサギを抱いた綾とともに、3両目と4両目の間の連結部分に移動した。
『五エ門、聞こえるか。3両目を切り離すぞ。いいな?』
ルパンの声が通信機から聞こえた。
「ゴエモンって?」
綾が次元を見上げた。
「俺たちの仲間だ。天井を刀で切り抜いた奴さ。今はこの先の分岐点で転轍機のレバーを動かす準備をしている」
「転轍機って……いったい何をするつもりなの?」
「この車両だけを頂いちまおうって寸法さ」
次元は列車の進行方向を見た。
分岐点が迫っている。
「2両目と4両目をロープでつないだ。2両目が通り過ぎた直後に転轍機を動かして3両目だけを支線に引き入れ、4両目の直前でレバーを戻す。本線の先は下り坂だから運転手はブレーキをかけるだろう。スピードの落ちた2両目に4両目が突っ込んできて、ガッチャン! 勝手に連結されるって仕組みだ」
綾は目を丸くしている。
次元は笑った。
「ソーントンに見せつけるつもりなんだろう。その気になりゃテメェの鼻先をかすめて何でも盗める、ってな」
やがて、綾の目にも分岐点の標識が見えてきた。
次元は車両の間の踏み板を外し、手動で連結の解除にとりかかった。
彼が3両目にある緊急用の解除レバーを引くのを、綾は固唾を呑んで見守った。