第3話
name change
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次元はソーントンさんの話の途中で戻ってきた。
背後のソファに座ったため、彼の表情を伺うことはできない。
彼は私を見てくれたかな。
帽子の下の視線が私の肩や背中を撫でていくのを想像して、少し恥ずかしくなる。
「王女ってのも、ずいぶんと忙しいんだな」
打ち合わせが終わったのを見計らい、次元が口を開いた。
「王女はのんびりお茶でも飲みながら、ずっとお喋りしてるもんだと思ってたぜ」
私だって数週間前まではそう思っていた。
王女が担う国政がこんなにたくさんあったなんて、知らなかった。
「そのドレスはレセプション用か? いやにめかし込むんだな。見せたい奴でもいるのか?」
「隣国の王子よ。今回のレセプションの本当の目的はね、私のお見合いなの」
「王族とは、そういうものです」
ソーントンさんが口をはさんだ。
「わが国の王家は代々女王の家系。それゆえ、結婚相手は相応しい方を議会で選ぶことになっております。それぐらい分かっておいでですよね、王女?」
やや説明くさいソーントンさんの言葉に、私は苦笑しながら頷いた。
「分かってます。せいぜい着飾って、王子様に気に入られないとね」
「プルーデンスなら大丈夫だ。俺が請合う」
次元は帽子を深くかぶりなおして、そっぽを向いた。
私は満足だった。
他の人たちのどんな言葉より、あなたの『大丈夫』が一番嬉しかった。
あぁ、私ったら。
喜んでいる場合じゃないのに。
レセプションで失敗は許されないのだから、気を引き締めないと。
「宝飾品は何も着けないんだな」
「え? ええっと……」
「アメリカ大統領が来た時は、舟形の珍しい宝石をしていただろう。新聞で見たぜ。あれは着けないのか」
私は曖昧な笑顔で誤魔化すしかなかった。
確かに、その写真は新聞で見たし、このブルーのドレスにもよく合いそうだけど。
さすがに王家の高価な宝飾品を、偽の王女に預ける気にはなれないだろう。
助け舟を求めてソーントンさんを見た。
「後で私が自らお持ちします」
私の考えに反して、ソーントンさんは事もなげに言う。
次元は警備の血が騒ぐのか、わずかに顔が上向いた。
「ついて行こうか? 警備として」
「結構です。あなたは王女のボディガードに専念してください」
ソーントンさんは厳しい顔で次元を見上げた。
「非常に貴重な宝石ですから、それ目当てに王女が狙われないとも限りません。今夜は王女の身辺にはいつも以上に警戒してください」
「俺はいつだって抜かりない」
「そうですね。失礼しました」
ソーントンさんは私に向かって一礼し、部屋を出て行った。
背後のソファに座ったため、彼の表情を伺うことはできない。
彼は私を見てくれたかな。
帽子の下の視線が私の肩や背中を撫でていくのを想像して、少し恥ずかしくなる。
「王女ってのも、ずいぶんと忙しいんだな」
打ち合わせが終わったのを見計らい、次元が口を開いた。
「王女はのんびりお茶でも飲みながら、ずっとお喋りしてるもんだと思ってたぜ」
私だって数週間前まではそう思っていた。
王女が担う国政がこんなにたくさんあったなんて、知らなかった。
「そのドレスはレセプション用か? いやにめかし込むんだな。見せたい奴でもいるのか?」
「隣国の王子よ。今回のレセプションの本当の目的はね、私のお見合いなの」
「王族とは、そういうものです」
ソーントンさんが口をはさんだ。
「わが国の王家は代々女王の家系。それゆえ、結婚相手は相応しい方を議会で選ぶことになっております。それぐらい分かっておいでですよね、王女?」
やや説明くさいソーントンさんの言葉に、私は苦笑しながら頷いた。
「分かってます。せいぜい着飾って、王子様に気に入られないとね」
「プルーデンスなら大丈夫だ。俺が請合う」
次元は帽子を深くかぶりなおして、そっぽを向いた。
私は満足だった。
他の人たちのどんな言葉より、あなたの『大丈夫』が一番嬉しかった。
あぁ、私ったら。
喜んでいる場合じゃないのに。
レセプションで失敗は許されないのだから、気を引き締めないと。
「宝飾品は何も着けないんだな」
「え? ええっと……」
「アメリカ大統領が来た時は、舟形の珍しい宝石をしていただろう。新聞で見たぜ。あれは着けないのか」
私は曖昧な笑顔で誤魔化すしかなかった。
確かに、その写真は新聞で見たし、このブルーのドレスにもよく合いそうだけど。
さすがに王家の高価な宝飾品を、偽の王女に預ける気にはなれないだろう。
助け舟を求めてソーントンさんを見た。
「後で私が自らお持ちします」
私の考えに反して、ソーントンさんは事もなげに言う。
次元は警備の血が騒ぐのか、わずかに顔が上向いた。
「ついて行こうか? 警備として」
「結構です。あなたは王女のボディガードに専念してください」
ソーントンさんは厳しい顔で次元を見上げた。
「非常に貴重な宝石ですから、それ目当てに王女が狙われないとも限りません。今夜は王女の身辺にはいつも以上に警戒してください」
「俺はいつだって抜かりない」
「そうですね。失礼しました」
ソーントンさんは私に向かって一礼し、部屋を出て行った。