第16話

数年後。
フランス、リヨン。
1台のタクシーが止まり、1人の女性が降り立った。
彼女が目の前の建物に顔を向けると、長い黒髪が背中で揺れる。
純夏だった。
視線の先には国際刑事警察機構――ICPOの本部がある。
ようやくここまでたどり着いた。
純夏はキラキラした瞳でINTERPOLの文字を見上げ、笑みを浮かべた。
あの事件の後すぐ、純夏は刑事局からICPOに出向願いを出した。
政府が新しくなり国の体質が変わろうとする時期に、彼女のような真面目で優秀な人材がいなくなるのは刑事局にとって痛手で、当初はまったく認めてもらえなかった。
しかし彼女は諦めなかった。
「やるべき事をやれ」
銭形の言葉を胸に、根気よく時期を待ち、やれることをきちんとこなし続けた。
そしてやっと、この場所に立つことができた。
今度こそ、ルパンを逮捕する。
専任捜査官の辞令を握りしめ、決意を固めた。
目的の部屋が見えると、純夏は足を止めた。
(うー、緊張するな……)
自分を見下ろして身だしなみをチェックし、髪を撫でつけながら小さく深呼吸する。
あの人はどんな顔をして迎えてくれるだろう。
喜んでくれるだろうか。
淡い期待を胸に、純夏はドアをノックした。



おわり
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