第15話
綾はホッとした様子で、やってきたルパンを見上げた。
「時限爆弾が爆発するには早すぎるから、心配したよ」
「うん、あれね。時限装置だけじゃなく、IF式も組み込んどいたんだ」
「イフしき?」
首をかしげる綾にルパンは得意そうに頷いた。
「そそ。てっとり早く言うと、起爆装置に『エネルギーが溜まって兵器が発射体制になったら爆発しろ、さもなくば時限装置に従え』ってプログラムしといたんだ」
「それじゃ、今の爆発は……」
「エネルギーシステムが地下研究所ごとドッカーン! ってね」
ルパンは綾の頭に手を置いた。
くしゃっと優しく髪をかきまわす。
「終わったんだよ」
綾は何も言えず黙っていた。
『ありがとう』でもない。
『ごめんなさい』も違う。
今の気持ちを表す言葉が見つからず、綾はただ黙って頷いた。
ルパンは軽く頷きかえし、それから、手にしていた帽子を次元の頭にのせた。
「ホレ、ちゃんと被っとけ。……やられたのか?」
「カルロスに撃たれたの」
次元の代わりに綾が答える。
「なら、今の爆発でかたきは討てたな」
ルパンは綾のかたわらに屈みこみ、次元のジャケットをめくって傷を確かめた。
「あー……」
その短い嘆詞だけで、綾はさっと顔色を変えた。
震える手で次元の頬に触れる。
ママもパパももういない。
綾にとって大切な人は、次元の他にはもういないのだ。
「いや。嫌だよ……」
涙がこぼれ、次元の頬に落ちた。
「お願い。私を1人にしないで……」
「うぅ……」
小さなうめき声をあげて、次元がうっすらと目を開けた。
困ったような顔をして、綾を見つめる。
「泣くな……そばにいるって……言っただろうが」
「だって……」
「急所は外した。死にゃあしねぇよ」
「だってルパンが……」
次元が舌打ちをしてルパンを睨んだ。
ルパンはヘラヘラと笑っている。
「いや、俺はなーんも……『あー』って言っただけだぜ?」
「覚えとけ。メルヴィルのオッサンに取られた代金ともども、後できっちり返してもらうからな」
「またまた、次元ちゃんたらぁ。怒ると傷に障りますわよぉ?」
「ケッ!」
いつものようなやり取りを交わす2人を見て、綾は胸をなでおろした。
「よかった……次元に何かあったら私、どうしようかと……」
またも涙腺が崩壊し、ボロボロと泣きながら次元の胸にすがりつく。
「私、次元が好きなの。好きで好きで、もう、どーしようもないの。だからどこにもいかないで。いつだって私の手の届くところにいてほしいの。お願い……」
「……った……」
「え? 何?」
次元の声が聞き取れずに、綾は訊き返した。
「わかったからしがみつくな! 痛ぇんだよ!」
「あ、あぁ! ごめんなさい……!」
綾は慌てて体を起こし、次元を見た。
次元は視線を合わせないように、帽子を深くかぶりなおして顔を隠している。
「やだねぇ。いい年して照れてやんの」
後ろでルパンが笑っていた。
「時限爆弾が爆発するには早すぎるから、心配したよ」
「うん、あれね。時限装置だけじゃなく、IF式も組み込んどいたんだ」
「イフしき?」
首をかしげる綾にルパンは得意そうに頷いた。
「そそ。てっとり早く言うと、起爆装置に『エネルギーが溜まって兵器が発射体制になったら爆発しろ、さもなくば時限装置に従え』ってプログラムしといたんだ」
「それじゃ、今の爆発は……」
「エネルギーシステムが地下研究所ごとドッカーン! ってね」
ルパンは綾の頭に手を置いた。
くしゃっと優しく髪をかきまわす。
「終わったんだよ」
綾は何も言えず黙っていた。
『ありがとう』でもない。
『ごめんなさい』も違う。
今の気持ちを表す言葉が見つからず、綾はただ黙って頷いた。
ルパンは軽く頷きかえし、それから、手にしていた帽子を次元の頭にのせた。
「ホレ、ちゃんと被っとけ。……やられたのか?」
「カルロスに撃たれたの」
次元の代わりに綾が答える。
「なら、今の爆発でかたきは討てたな」
ルパンは綾のかたわらに屈みこみ、次元のジャケットをめくって傷を確かめた。
「あー……」
その短い嘆詞だけで、綾はさっと顔色を変えた。
震える手で次元の頬に触れる。
ママもパパももういない。
綾にとって大切な人は、次元の他にはもういないのだ。
「いや。嫌だよ……」
涙がこぼれ、次元の頬に落ちた。
「お願い。私を1人にしないで……」
「うぅ……」
小さなうめき声をあげて、次元がうっすらと目を開けた。
困ったような顔をして、綾を見つめる。
「泣くな……そばにいるって……言っただろうが」
「だって……」
「急所は外した。死にゃあしねぇよ」
「だってルパンが……」
次元が舌打ちをしてルパンを睨んだ。
ルパンはヘラヘラと笑っている。
「いや、俺はなーんも……『あー』って言っただけだぜ?」
「覚えとけ。メルヴィルのオッサンに取られた代金ともども、後できっちり返してもらうからな」
「またまた、次元ちゃんたらぁ。怒ると傷に障りますわよぉ?」
「ケッ!」
いつものようなやり取りを交わす2人を見て、綾は胸をなでおろした。
「よかった……次元に何かあったら私、どうしようかと……」
またも涙腺が崩壊し、ボロボロと泣きながら次元の胸にすがりつく。
「私、次元が好きなの。好きで好きで、もう、どーしようもないの。だからどこにもいかないで。いつだって私の手の届くところにいてほしいの。お願い……」
「……った……」
「え? 何?」
次元の声が聞き取れずに、綾は訊き返した。
「わかったからしがみつくな! 痛ぇんだよ!」
「あ、あぁ! ごめんなさい……!」
綾は慌てて体を起こし、次元を見た。
次元は視線を合わせないように、帽子を深くかぶりなおして顔を隠している。
「やだねぇ。いい年して照れてやんの」
後ろでルパンが笑っていた。