第14話

エレベーターを見に行っていた五エ門が戻ってきた。
カルロスを見て、放っておいても大丈夫そうだと判断すると、素早く綾に駆け寄る。
「綾、大丈夫か」
泣いている綾と彼女の腕に抱かれた次元を見た五エ門は、憤怒の形相でカルロスを睨みつけた。
「奴にやられたのか!」
斬鉄剣を抜いて飛びかかろうとしたが、後ろから袴を引かれて踏みとどまる。
綾が裾を掴んでいた。
ボロボロと涙をこぼし、すがるように見上げている。
「お願い、助けて。助けて……」
五エ門は片膝をつき、次元の傷を確認した。
「心配無用。急所は外れている」
「でも、血がこんなに……どうしたらいいか……」
綾の言葉は涙声で、最後の方は震えていた。
「綾。綾、しっかりしろ」
五エ門は綾の目を覗き込んだ。
彼女の目は宙を泳いでいて、視線が合わない。
その頬を軽くはたいて、無理やり視線を捉える。
「狼狽えるな。助けたいのだろう?」
そのひと言が、綾の顔つきを変えた。
涙が止まり、力のある眼差しで五エ門を見上げる。
それでいい、と五エ門も頷き返す。
「敵が多くてエレベーターへは近寄れぬ。西側に搬入用シャフトがあったから、そっちへ行こう。手を貸してくれ」
五エ門は次元を背中に背負うと歩き出した。
綾が部屋の入口で振り返ると、カルロスはまだコンソールパネルと格闘していた。
「綾、時限装置が動いている。早く」
五エ門に急かされ、綾は慌ててその場を離れた。
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