第14話

「ねぇ綾ちゃん。不二子はどうした?」
ルパンが訊ねた。
「ジョン・ドーに見つかって……」
綾は不二子そっくりに化けた変装師がいる事、逃げる時に見つかって、本物の不二子が逃がしてくてれた事を早口に説明した。
「変装師か。一杯食わされたな」
ルパンは渋い顔をした。
綾は次元の顔を見上げた。
「次元。カルロスがあなたを狙ってる」
「俺を?」
コク、と頷いた綾は不安そうに、大丈夫かと問いかけるような目で次元を見ている。
「次元もやっぱり『過ぎたモノ』だったってコトだろ?」
そう言ってルパンはニヤリと笑う。
「行こうぜ。不二子に加勢してやらねぇと」
「待てよルパン。仕上げが残ってるぜ」
次元は綾から腕離れ、エネルギーシステムを管理しているコンピューターに近寄った。
コンソールパネルには赤や緑のランプが点滅を繰り返している。
そこへ、爆弾の最後の一個を取り付けた。
「なんだこれは。少し大きくないか?」
他のよりひと回り大きい起爆装置を手に、ルパンを振り返る。
「よくぞ気づいてくれました、次元ちゃん」
ルパンは得意満面で胸を張った。
「そいつにはちょっとした仕掛けをね」
「仕掛け……?」
装置と爆弾を接続しながら次元が訊ねた。
ルパンはニヤリと口角を上げる。
「まぁ、保険みたいなもんさ」
「大丈夫かよ……」
いまいち不安を拭いきれない様子の次元に、ルパンは澄ました顔で背中を向けた。
「じゃあ、俺は不二子に加勢してくるわ。五エ門は行きに使ったエレベーターの様子を見てきてくれ。敵さんが待ち受けてっかもしれないからな。次元、起爆装置のスイッチを入れ忘れんなよ」
「分かってるよ。さっさと行け」
ルパンはヒラヒラと片手を振って、部屋を出て行った。
次元は最後の起爆装置を取り付け、スイッチを入れて立ち上がった。
「よし、終わっ……」
終わったと言い切る前に、次元の顔つきが変わる。
開け放ったままの入口に、銃を手にしたカルロスが立っていた。
一瞬で総毛立ち、背中に冷たいものが走った。
反射的にホルスターから銃を抜いたが、綾が弾道に入っていた。
「綾!」
彼女を避けようと体をかたむけたが、奴はそれを分かっていて、うまく綾を盾にして銃を構える。
次元の呼びかけに綾が振り向いた。
銃声。
全てが一瞬の出来事だった。
衝撃と、少し遅れて焼けつくような痛み。
ゆっくりと前のめりに倒れていきながら、次元は体に弾がめり込んだ事よりも、泣き出しそうな顔の綾を気にしていた。
大丈夫だから、泣くな。
言ってやりたかったが、体がいうことを聞かなかった。
音がなくなり、視界が暗転。
意識が途切れた。
「じげ、ん……?」
綾は目の前の光景が信じられずに何度も目を瞬かせた。
彼は横たわったまま、微動だにしない。
「じ……」
体が震えた。
「いやぁ───!」
綾の絶叫が響き渡った。
7/10ページ
スキ