第14話
「綾ちゃん」
突然、足音とともに背後から声が聞こえた。
ロープがたち切られ、綾の体は自由になる。
振り返ると不二子が笑って立っていた。
「不二子さ……」
安堵で涙があふれた。
すがりつこうとして途中で思いとどまる。
罠だ。
不二子のフリをして、水を共鳴させる周波数を聞き出すつもりだ。
綾は顔をこわばらせて後ずさりした。
「来ないで。ニセモノのくせに……」
「綾ちゃん。私は本物よ」
不二子は手をさし出した。
綾は警戒してその手を払いのける。
「ほ、本物って証拠がないわ」
「証拠ならあるわよ」
不二子は綾に歩み寄り、その耳にそっと囁いた。
「綾ちゃんいつもお風呂で……」
綾は弾かれたように不二子の顔を見上げた。
顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「ど、どうしてそれを……」
「ホンモノだからよ」
綾はワナワナと震える両手を不二子に差し出した。
抱きつくと思いきや、彼女の胸ぐらを勢いよく掴む。
「誰にも言ってないよね? ね、不二子さん、お願いだから言わないでよ?」
「ハイハイ」
不二子はクスリと笑みをこぼした。
「行きましょう」
綾を先に立たせ、不二子は銃を片手についていく。
誰かとすれちがっても『偽物が捕虜を歩かせている』と思わせる為だ。
「次元は?」
「一緒よ。ルパンたちとエネルギーシステムを見に行ったわ」
綾は祈るようにきつく両手を握りしめた。
悪夢の恐怖は不二子とのやり取りで頭の中からすっかり消えていた。
次元にカルロスが狙っている事を伝えなくては。
今はそればかりが頭を占めていた。
綾は足を止めた。
「不二子さん。私、次元の所へ行く」
「ダメよ。あなたはひと足先にここから脱出するの」
不二子は渋る綾の手を掴んで通路を進んだ。
「私はあなたを無事に助けださないといけないの。土下座したくないもの」
「え?」
「ううん、こっちの話」
不二子は歩き出した。
手をひかれ、綾も渋々歩き出す。
「でも不二子さん……」
綾が口を開いた時だ。
不二子がまた足を止めた。
顔は前方に向けたまま、綾を背中に庇うように立ち位置を変えた。
それだけで事態を察し、綾は顔を強張らせる。
突然、足音とともに背後から声が聞こえた。
ロープがたち切られ、綾の体は自由になる。
振り返ると不二子が笑って立っていた。
「不二子さ……」
安堵で涙があふれた。
すがりつこうとして途中で思いとどまる。
罠だ。
不二子のフリをして、水を共鳴させる周波数を聞き出すつもりだ。
綾は顔をこわばらせて後ずさりした。
「来ないで。ニセモノのくせに……」
「綾ちゃん。私は本物よ」
不二子は手をさし出した。
綾は警戒してその手を払いのける。
「ほ、本物って証拠がないわ」
「証拠ならあるわよ」
不二子は綾に歩み寄り、その耳にそっと囁いた。
「綾ちゃんいつもお風呂で……」
綾は弾かれたように不二子の顔を見上げた。
顔がみるみるうちに赤くなっていく。
「ど、どうしてそれを……」
「ホンモノだからよ」
綾はワナワナと震える両手を不二子に差し出した。
抱きつくと思いきや、彼女の胸ぐらを勢いよく掴む。
「誰にも言ってないよね? ね、不二子さん、お願いだから言わないでよ?」
「ハイハイ」
不二子はクスリと笑みをこぼした。
「行きましょう」
綾を先に立たせ、不二子は銃を片手についていく。
誰かとすれちがっても『偽物が捕虜を歩かせている』と思わせる為だ。
「次元は?」
「一緒よ。ルパンたちとエネルギーシステムを見に行ったわ」
綾は祈るようにきつく両手を握りしめた。
悪夢の恐怖は不二子とのやり取りで頭の中からすっかり消えていた。
次元にカルロスが狙っている事を伝えなくては。
今はそればかりが頭を占めていた。
綾は足を止めた。
「不二子さん。私、次元の所へ行く」
「ダメよ。あなたはひと足先にここから脱出するの」
不二子は渋る綾の手を掴んで通路を進んだ。
「私はあなたを無事に助けださないといけないの。土下座したくないもの」
「え?」
「ううん、こっちの話」
不二子は歩き出した。
手をひかれ、綾も渋々歩き出す。
「でも不二子さん……」
綾が口を開いた時だ。
不二子がまた足を止めた。
顔は前方に向けたまま、綾を背中に庇うように立ち位置を変えた。
それだけで事態を察し、綾は顔を強張らせる。