第14話
不二子はプレハブに隠されたエレベーターを難無く見つけた。
降りていくエレベーターの中で、次元は両手をズボンのポケットに突っ込んで壁を睨んでいる。
対角線に立った不二子は不機嫌そうに腕組みをして天井の照明を見上げている。
険悪なムードだ。
ルパンは五エ門と顔を見合わせ、やれやれと肩をすくめた。
全員黙り込んでいるせいで、エレベーターの駆動音がやけに大きく聞こえる。
「……本当に大丈夫なんだろうな」
とうとう次元が口を開いた。
顔はあさっての方向を向いたままだ。
不二子は視線を次元に向けて、ため息をついた。
「信用しなさいよ」
「真っ先に捕まったクセに、よく言うぜ」
次元は鼻で笑った。
「あれは不意打ちだったからよ。今度は大丈夫。なんなら賭けても良いわ」
「賭ける? ハッ、冗談はよせよ」
相手にしない次元にムッとした不二子は目を細めて横目で彼を見た。
「負けるのが怖いんでしょ」
「なに?」
そこではじめて次元は不二子を振り返った。
口の端に挑戦的な笑みを浮かべる彼女にカッとなり、気づいたらこう言い返していた。
「そこまで言うなら賭けようじゃねぇか。何を賭ける?」
まんまとひっかかった。
内心舌を出しながら不二子は平然と言った。
「そうね。もし私が彼女を助けられなかったら、何でもいう事をきくわ」
「おめぇはいっつもソレだな。ルパンのいう事をきいてるのを見たことがねぇってのに、信用できるかよ」
次元が水をさした。
その背後で、ルパンがコントみたいにガクッと傾く。
思わず口を挟もうとしたルパンだったが、それより先に不二子が言った。
「じゃあ、何ならいいのよ?」
「そうだな……土下座でもして謝ってもらおうか」
「趣味わるいのね」
不二子はムッとした顔で呟いた。
「何とでも言え」
「じゃあ、私が勝ったら……」
不二子は視線を宙に這わせて少し考えた後、何かを思いついて意地悪そうにほほ笑んだ。
「甘い言葉でも囁いてみて」
1番嫌がりそうなところを的確に狙ってくる。
「はあ?」
「……何で心底嫌そうな顔するのよ」
不満そうに唇をとがらせる不二子を、次元は冷ややかに見つめた。
「思ってもねぇことを口にできるかよ」
「あら、思っていれば言えるのね?」
不二子はぽんと手を叩いた。
「なら、私が勝ったら、綾ちゃんに愛の言葉をあげるってことでヨロシク。約束よ」
「おい、それは……」
次元の言葉は、エレベーターが止まったのと同時に途切れる。
不二子は声の調子を整えるように咳払いをして髪をなでつけ、背筋を伸ばした。
「行くわよ」
不二子の小さな声。
直後、エレベーターの扉が開いた。
降りていくエレベーターの中で、次元は両手をズボンのポケットに突っ込んで壁を睨んでいる。
対角線に立った不二子は不機嫌そうに腕組みをして天井の照明を見上げている。
険悪なムードだ。
ルパンは五エ門と顔を見合わせ、やれやれと肩をすくめた。
全員黙り込んでいるせいで、エレベーターの駆動音がやけに大きく聞こえる。
「……本当に大丈夫なんだろうな」
とうとう次元が口を開いた。
顔はあさっての方向を向いたままだ。
不二子は視線を次元に向けて、ため息をついた。
「信用しなさいよ」
「真っ先に捕まったクセに、よく言うぜ」
次元は鼻で笑った。
「あれは不意打ちだったからよ。今度は大丈夫。なんなら賭けても良いわ」
「賭ける? ハッ、冗談はよせよ」
相手にしない次元にムッとした不二子は目を細めて横目で彼を見た。
「負けるのが怖いんでしょ」
「なに?」
そこではじめて次元は不二子を振り返った。
口の端に挑戦的な笑みを浮かべる彼女にカッとなり、気づいたらこう言い返していた。
「そこまで言うなら賭けようじゃねぇか。何を賭ける?」
まんまとひっかかった。
内心舌を出しながら不二子は平然と言った。
「そうね。もし私が彼女を助けられなかったら、何でもいう事をきくわ」
「おめぇはいっつもソレだな。ルパンのいう事をきいてるのを見たことがねぇってのに、信用できるかよ」
次元が水をさした。
その背後で、ルパンがコントみたいにガクッと傾く。
思わず口を挟もうとしたルパンだったが、それより先に不二子が言った。
「じゃあ、何ならいいのよ?」
「そうだな……土下座でもして謝ってもらおうか」
「趣味わるいのね」
不二子はムッとした顔で呟いた。
「何とでも言え」
「じゃあ、私が勝ったら……」
不二子は視線を宙に這わせて少し考えた後、何かを思いついて意地悪そうにほほ笑んだ。
「甘い言葉でも囁いてみて」
1番嫌がりそうなところを的確に狙ってくる。
「はあ?」
「……何で心底嫌そうな顔するのよ」
不満そうに唇をとがらせる不二子を、次元は冷ややかに見つめた。
「思ってもねぇことを口にできるかよ」
「あら、思っていれば言えるのね?」
不二子はぽんと手を叩いた。
「なら、私が勝ったら、綾ちゃんに愛の言葉をあげるってことでヨロシク。約束よ」
「おい、それは……」
次元の言葉は、エレベーターが止まったのと同時に途切れる。
不二子は声の調子を整えるように咳払いをして髪をなでつけ、背筋を伸ばした。
「行くわよ」
不二子の小さな声。
直後、エレベーターの扉が開いた。