第3話

アジトにて。
綾はぼんやりと窓の外の暗闇をを眺めている。
「大丈夫か? 彼女」
ルパンは綾から視線を外して、次元に囁いた。
「しばらく放っておいてやってくれ」
「……狙ったのは政府か」
「さぁな」
次元はリビングを見渡した。
「ところで、不二子はどうした」
「来てないぜ。何でだ?」
「あの女、ヴァルナのことを綾に根掘り葉掘りきいた様なんだ。なんか怪しい」
「そ、そうか?」
ルパンが白々しくそっぽを向いた。
次元はふうん、と頷き、いきなりルパンの首に腕を絡めて締め付けた。
「テメー。何を考えてやがる」
「ぐえっ。ギブ、ギブ!」
「不二子に唆されやがったな。綾は何も知らない。言った筈だぜ」
ルパンは次元の腕から逃れようともがきながら言った。
「だってよ次元。水から無尽蔵にエネルギーを作るシステムなんか手に入れたら、こりゃボロ儲け! なぁんて……」
「バカバカしい」
次元は鼻で笑った。
「完成もしていない物を……」
「完成していたのかも」
窓際からの声に、ルパン達は振り返った。
綾がこちらを見ていた。
ずっと話を聞いていたらしい。
「不二子さんと話してから、ずっと考えてたの。記念日でもないのにママがパーティなんて、絶対おかしいって。もしかして、あれは水エネルギーシステムが完成したお祝いだったんじゃないかな……」
「まさか。完成してたらヴァルナは潰れていないぜ」
「そうなんだけど……」
考えれば考える程、訳がわからなくなってくる。
頭が痛みはじめ、綾は顔をしかめた。
「綾ちゃん」
不二子がやってきた。
「心配したわ。ごめんなさいね、私がついて行けば良かった」
「テメェが一番心配なんだ。何を企んでやがる」
「企むだなんて、やぁね次元」
不二子は艶然と笑って、ソファに腰かけた。
「でも、考えてもみてよ。データなり設計図なりがあるなら、ちょっと見てみたいじゃない」
「それで彼女を売ったのか」
「とんでもない。私は綾ちゃんからデータを手に入れようと思っただけ。綾ちゃんを狙った連中の事は知らないわ」
不二子は悪びれもせずに言った。
「研究データなんて、何も残って……ない。家には何も、無いわ……」
綾は顔を歪ませて言った。
頭がガンガンする。
割れてしまいそうだ。
「綾ちゃん……どうかした?」
綾の異変に気付いたルパンが、彼女に歩み寄って顔を覗き込んだ。
「頭が……」
そう言ったきり、綾は意識を失い、ルパンの腕に倒れ込んだ。



つづく
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