第13話
規制線の前に再び現れた銭形を見て、見張りに立っていた二人の警官はうんざり顔になった。
「またあなたですか。いくらICPOの警部とはいえ、中には入れませんよ」
「そうか? あのカルロスとかいう奴が欲しがっていた女を連れてきたんだがな」
「えっ?」
警官たちは視線を銭形の背後にやった。
金髪のかつらをかぶった赤いドレスの女の姿がチラリと見える。
もっとよく見ようと首を伸ばしたが、銭形がズイと身を乗り出してきた。
「入らせてもらうぞ。いいな?」
警官たちが顔を見合わせて躊躇しているうちに、銭形は女を連れて規制線をくぐり抜け敷地の奥へと歩き出していた。
あまりにもあっという間で、後に警官たちに女の印象を尋ねると『目の前でブロンドが風になびいて輝いていた』くらいしか出てこなかった程だ。
銭形は足早に奥までくると、目的のプレハブを見つけた。
見取り図であらかじめ目をつけておいた、ななめ向かいのプレハブにもぐりこむ。
窓の下にしゃがみ込み一息つくと、背後で苦しそうに息を弾ませている女を振り返った。
「大丈夫か、純夏」
「捕まるんじゃないかって、もうドキドキでしたよ。見張りの警官が何も知らされてなくて良かった」
ブロンドのかつらとドレスを脱ぎ捨てた純夏は胸を押さえながら答えた。
「私でもこれぐらいで手が震えたんですから、朝比奈綾はさぞ怖い思いをしたんでしょうね……」
「ルパン達が必ず助けに来るさ。そこを取り押さえるために、こうして危険を冒してまで張り込みにきたんだ」
純夏はそっと首を伸ばし、窓から外を窺った。
制服の警官や迷彩服の軍人、それに捜査官か役人か判断がつかないスーツ姿の男たち。
大勢の人間が敷地内を忙しく動き回っている。
「警官も軍人も大勢います。いくらルパンでも無理でしょう」
「いや、必ず奴は来る。不可能を可能にする男、それがルパンだからな!」
銭形は自信たっぷりに断言した。
それはルパン専任捜査官の勘というより、確信に近い。
「長丁場になるかもしれん。今のうちに飲んでおけ」
そう言って銭形はポケットから取り出したものを純夏の前に置いた。
紙パックの成分無調整特濃牛乳。
「これを買うために、さっきコンビニに寄ったんですか」
『次は牛乳にするよ』
病院での銭形の言葉を思い出し、純夏はクスクスと笑った。
「ふふっ、ねぇ警部、アンパンはないんですか?」
「アンパン? 腹が減っとるのか」
「いえ、違いますけど」
「何だ、おかしな奴だな……」
なおもクスクス笑っている純夏に、銭形は首をかしげた。
「またあなたですか。いくらICPOの警部とはいえ、中には入れませんよ」
「そうか? あのカルロスとかいう奴が欲しがっていた女を連れてきたんだがな」
「えっ?」
警官たちは視線を銭形の背後にやった。
金髪のかつらをかぶった赤いドレスの女の姿がチラリと見える。
もっとよく見ようと首を伸ばしたが、銭形がズイと身を乗り出してきた。
「入らせてもらうぞ。いいな?」
警官たちが顔を見合わせて躊躇しているうちに、銭形は女を連れて規制線をくぐり抜け敷地の奥へと歩き出していた。
あまりにもあっという間で、後に警官たちに女の印象を尋ねると『目の前でブロンドが風になびいて輝いていた』くらいしか出てこなかった程だ。
銭形は足早に奥までくると、目的のプレハブを見つけた。
見取り図であらかじめ目をつけておいた、ななめ向かいのプレハブにもぐりこむ。
窓の下にしゃがみ込み一息つくと、背後で苦しそうに息を弾ませている女を振り返った。
「大丈夫か、純夏」
「捕まるんじゃないかって、もうドキドキでしたよ。見張りの警官が何も知らされてなくて良かった」
ブロンドのかつらとドレスを脱ぎ捨てた純夏は胸を押さえながら答えた。
「私でもこれぐらいで手が震えたんですから、朝比奈綾はさぞ怖い思いをしたんでしょうね……」
「ルパン達が必ず助けに来るさ。そこを取り押さえるために、こうして危険を冒してまで張り込みにきたんだ」
純夏はそっと首を伸ばし、窓から外を窺った。
制服の警官や迷彩服の軍人、それに捜査官か役人か判断がつかないスーツ姿の男たち。
大勢の人間が敷地内を忙しく動き回っている。
「警官も軍人も大勢います。いくらルパンでも無理でしょう」
「いや、必ず奴は来る。不可能を可能にする男、それがルパンだからな!」
銭形は自信たっぷりに断言した。
それはルパン専任捜査官の勘というより、確信に近い。
「長丁場になるかもしれん。今のうちに飲んでおけ」
そう言って銭形はポケットから取り出したものを純夏の前に置いた。
紙パックの成分無調整特濃牛乳。
「これを買うために、さっきコンビニに寄ったんですか」
『次は牛乳にするよ』
病院での銭形の言葉を思い出し、純夏はクスクスと笑った。
「ふふっ、ねぇ警部、アンパンはないんですか?」
「アンパン? 腹が減っとるのか」
「いえ、違いますけど」
「何だ、おかしな奴だな……」
なおもクスクス笑っている純夏に、銭形は首をかしげた。