第12話
「『プリンセス』を捕らえました」
その報告が入ったのは、深夜遅くのことだった。
「かかったか」
カルロスは満足げに立ち上がり、外へ出た。
車が滑るように近づき、目の前で停まる。
ドアが開いてスラリとした足が出てきたと思うと、不二子が降りてきた。
その所作は優雅で、とても肩に人を担いでいるようには見えない。
不二子はゆっくりとカルロスに歩み寄り、担いでいた綾を引き渡した。
綾は気を失い、ぐったりと身体を預けている。
「ご苦労だった、ジョン・ドー。いや、峰不二子と呼んだ方が良いか」
「お好きなように」
「峰不二子そのものだ。おそらくルパンですら分かるまい」
「恐縮です」
ジョン・ドーは不二子の顔で妖艶に微笑んだ。
小さな呻き声をあげて綾が目を開けた。
完全には覚めやらぬ様子で、ぼんやりとしている。
「薬が強すぎたかしら」
ジョン・ドーが綾の顎に手をかけた。
綾はうつろな目でジョン・ドーを見つめ返したが、相手が誰かわかるとハッと目を見開いた。
「不二子さんの偽物だったのね。だからあんな事を言って……」
「あんな事? 私、何か余計な事を言ったかしら」
綾はフンと顔を背けた。
「本物の不二子さんなら、こんな事をしても無駄だって知ってる」
本物の不二子なら、ヘリオスの事件の時に綾が水を共鳴させる周波数を再現するのは不可能だと知っているはずなのだ。
『もしもエネルギーシステムが開発されていたら、それを動かし国を豊かにする為に力を貸して欲しいって言われたら……協力する?』
車の中でこう問われた時、綾は何かおかしいと気づいた。
気づいた時にはもう遅かったのだけれど。
「強気な発言だな。次元大介が助けに来ると思っているのか?」
からかうようにカルロスが言った。
「奴なら来るだろうな。あいつは甘ちゃんだ。自分が狙われているとは思ってないだろう」
「狙われている……?」
綾の訝しげな顔を見たカルロスは鼻を鳴らして冷笑した。
「わからないか? 俺は奴が目障りなんだ。奴がルパン三世の仲間になってからはやり合う事もなくなったと安心していたが、まさかこんな形で邪魔されるとはな」
綾の顎に手をかけて顔を覗き込む。
「目障りなものは早目に排除する。奴は腕は良いが、情がある分俺には勝てない。次に会うときは奴が死ぬ時だ」
綾の瞳が揺れ、肩が小さく震えた。
次元が殺されるかもしれない。
そう思うとじっとしてはいられなかった。
綾はカルロスの腕から逃れようと必死にもがいた。
「止めろ。腕をへし折られたいのか」
カルロスはプレハブの中へ綾を引っ張っていった。
その報告が入ったのは、深夜遅くのことだった。
「かかったか」
カルロスは満足げに立ち上がり、外へ出た。
車が滑るように近づき、目の前で停まる。
ドアが開いてスラリとした足が出てきたと思うと、不二子が降りてきた。
その所作は優雅で、とても肩に人を担いでいるようには見えない。
不二子はゆっくりとカルロスに歩み寄り、担いでいた綾を引き渡した。
綾は気を失い、ぐったりと身体を預けている。
「ご苦労だった、ジョン・ドー。いや、峰不二子と呼んだ方が良いか」
「お好きなように」
「峰不二子そのものだ。おそらくルパンですら分かるまい」
「恐縮です」
ジョン・ドーは不二子の顔で妖艶に微笑んだ。
小さな呻き声をあげて綾が目を開けた。
完全には覚めやらぬ様子で、ぼんやりとしている。
「薬が強すぎたかしら」
ジョン・ドーが綾の顎に手をかけた。
綾はうつろな目でジョン・ドーを見つめ返したが、相手が誰かわかるとハッと目を見開いた。
「不二子さんの偽物だったのね。だからあんな事を言って……」
「あんな事? 私、何か余計な事を言ったかしら」
綾はフンと顔を背けた。
「本物の不二子さんなら、こんな事をしても無駄だって知ってる」
本物の不二子なら、ヘリオスの事件の時に綾が水を共鳴させる周波数を再現するのは不可能だと知っているはずなのだ。
『もしもエネルギーシステムが開発されていたら、それを動かし国を豊かにする為に力を貸して欲しいって言われたら……協力する?』
車の中でこう問われた時、綾は何かおかしいと気づいた。
気づいた時にはもう遅かったのだけれど。
「強気な発言だな。次元大介が助けに来ると思っているのか?」
からかうようにカルロスが言った。
「奴なら来るだろうな。あいつは甘ちゃんだ。自分が狙われているとは思ってないだろう」
「狙われている……?」
綾の訝しげな顔を見たカルロスは鼻を鳴らして冷笑した。
「わからないか? 俺は奴が目障りなんだ。奴がルパン三世の仲間になってからはやり合う事もなくなったと安心していたが、まさかこんな形で邪魔されるとはな」
綾の顎に手をかけて顔を覗き込む。
「目障りなものは早目に排除する。奴は腕は良いが、情がある分俺には勝てない。次に会うときは奴が死ぬ時だ」
綾の瞳が揺れ、肩が小さく震えた。
次元が殺されるかもしれない。
そう思うとじっとしてはいられなかった。
綾はカルロスの腕から逃れようと必死にもがいた。
「止めろ。腕をへし折られたいのか」
カルロスはプレハブの中へ綾を引っ張っていった。