第12話

「みんな無事なの……?」
車の後部座席に収まると、綾は訊ねた。
「無事よ。あれ位で死ぬような連中じゃないのは、あなたもよく知ってるでしょ?」
「政府は、エネルギーシステムの事をどこまで知ってるのかな……ママが生きてた頃は、水エネルギーシステムを兵器利用するために開発の援助をしてたってパパは言ってたけど、今は何が目的なんだろう」
「……あなたはどうなの?」
「え?」
「もしもエネルギーシステムが開発されていたら、それを動かし国を豊かにするために力を貸して欲しいって言われたら……協力する?」
不二子はじっと前を見つめて運転している。
綾は呆然と不二子の後姿を見つめた。
「でも、それは……」
不二子がダイナーの駐車場に車を停め、綾は口をつぐんだ。
「コーヒー買ってくるわ。お気に入りはカフェモカだったわね?」
「うん。ありがとう」
ダイナーへ入っていく不二子の背中を見送りながら、綾はため息をついた。
国を豊かにするため?
そのためなら、攻撃ヘリや機関銃で攻撃したり人を誘拐したりしても良いと言うのだろうか。
関係ない人を殺しても?
……ママにはわかっていたんだ。
私が巻き込まれる事を恐れていたけど、それだけじゃなかった。
いつかこんな争いが起きると、分かっていたんだ。
だから開発を中止して……。
ふいにポケットの中でスマホが震えた。
我に返った綾は慌ててスマホを引っ張り出し、画面を確認する。
着信は、峰不二子。
ハッとダイナーへ顔を向けると、不二子が両手にカップを持って入り口から戻ってくるのが見えた。
不二子の視線はじっと綾に注がれている。
綾は着信を告げて震え続けるスマホに視線を落とした。
どうして。
不二子さんはここにいるのに。
「何よ、電源切ってなかったの?」
顔を上げると、戻ってきた不二子の顔からスッと笑みが消えた。
「邪魔が入るからって言ったのに」
これは、どういうことなの。
綾は愕然として不二子を見つめた。
どうして、不二子さんから着信があるの……?
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