第3話
フィアット500はなめらかにアスファルトを滑っていく。
次元は片手をハンドルに添え、煙草を燻らしながら黙って前を見つめている。
綾は窓を開け、後ろへと流れゆく景色をぼんやりと眺めていた。風で彼女の髪が踊っている。
「ありがとう、次元。来てくれて」
「気にするな」
「どうして私の居場所が分かったの?」
「ほらよ」
次元はポケットから綾の携帯を取り出し、彼女に放った。
「あぁ、GPS。不二子さんに会ったんだ」
説明するまでもなく、綾は事を飲み込んだ。
「不二子からお前が自宅に向かったと聞いた」
「不二子さん怒ってないかな……途中で帰っちゃったから」
沈黙。
綾は次元の顔を見上げた。怖い顔をしている。
「次元……?」
「悪いが話は後だ」
次元が急にアクセルを踏み込んだ。
タイヤが軋み音を立て、スピードが上がった。
「おいでなすったぜ」
後ろを振り返ると、1台の黒い車が猛スピードで迫ってくるのが見えた。
「伏せろ!」
頭を押されて身を屈めると、黒い車からの発砲でリアウインドが砕け散った。
フィアットは大通りを外れ、細い路地をくねくねと曲がった。
後ろの車が見えなくなった。
「あ、まいたみたい」
「だな」
2人は顔を見合わせて微笑んだ。
……のもつかの間。
「甘かったか」
次元の呟きで後ろを見ると、黒い車が再び追いついてきていた。
「何で見つかったんだ」
次元が舌打ちした。
綾はしばし考えていたが、ふいに思いついて大声で叫んだ。
「あぁっ! 郵便!」
綾はカバンから郵便物を引っ張り出し、窓から投げ捨てた。
「多分、郵便物に発信器みたいな物を着けておいて、それが移動すると報せがいくようになってたんだわ!」
「張り込むより効率的だ。敵さんも考えたな」
手紙が道路に散らばったのを見届けてから、綾は次元に視線を戻した。
2速に落とし、カーブに差し掛かる。3速。カウンターを当てて、カーブで後ろが持っていかれるのを防ぐ。
「ちっ……馬力が足りねぇ」
バックミラーを見ながら次元が言った。
黒い車はどんどん距離を詰めてくる。
「綾、運転代われ」
「えぇっ⁉」
綾は慌ててハンドルに手を伸ばした。
次元はサンルーフから身を乗り出し、追跡車に向かって銃を構えた。
相手が発砲するよりも早く引き金を引く。
黒い車がスピンしながらコースアウトし、道路脇の木に激突するのがバックミラーに映った。
「ま、こんなもんか」
呟いて次元は運転席に戻った。
助手席に戻った綾は、深く息を吐いてシートに沈み込んだ。
次元は片手をハンドルに添え、煙草を燻らしながら黙って前を見つめている。
綾は窓を開け、後ろへと流れゆく景色をぼんやりと眺めていた。風で彼女の髪が踊っている。
「ありがとう、次元。来てくれて」
「気にするな」
「どうして私の居場所が分かったの?」
「ほらよ」
次元はポケットから綾の携帯を取り出し、彼女に放った。
「あぁ、GPS。不二子さんに会ったんだ」
説明するまでもなく、綾は事を飲み込んだ。
「不二子からお前が自宅に向かったと聞いた」
「不二子さん怒ってないかな……途中で帰っちゃったから」
沈黙。
綾は次元の顔を見上げた。怖い顔をしている。
「次元……?」
「悪いが話は後だ」
次元が急にアクセルを踏み込んだ。
タイヤが軋み音を立て、スピードが上がった。
「おいでなすったぜ」
後ろを振り返ると、1台の黒い車が猛スピードで迫ってくるのが見えた。
「伏せろ!」
頭を押されて身を屈めると、黒い車からの発砲でリアウインドが砕け散った。
フィアットは大通りを外れ、細い路地をくねくねと曲がった。
後ろの車が見えなくなった。
「あ、まいたみたい」
「だな」
2人は顔を見合わせて微笑んだ。
……のもつかの間。
「甘かったか」
次元の呟きで後ろを見ると、黒い車が再び追いついてきていた。
「何で見つかったんだ」
次元が舌打ちした。
綾はしばし考えていたが、ふいに思いついて大声で叫んだ。
「あぁっ! 郵便!」
綾はカバンから郵便物を引っ張り出し、窓から投げ捨てた。
「多分、郵便物に発信器みたいな物を着けておいて、それが移動すると報せがいくようになってたんだわ!」
「張り込むより効率的だ。敵さんも考えたな」
手紙が道路に散らばったのを見届けてから、綾は次元に視線を戻した。
2速に落とし、カーブに差し掛かる。3速。カウンターを当てて、カーブで後ろが持っていかれるのを防ぐ。
「ちっ……馬力が足りねぇ」
バックミラーを見ながら次元が言った。
黒い車はどんどん距離を詰めてくる。
「綾、運転代われ」
「えぇっ⁉」
綾は慌ててハンドルに手を伸ばした。
次元はサンルーフから身を乗り出し、追跡車に向かって銃を構えた。
相手が発砲するよりも早く引き金を引く。
黒い車がスピンしながらコースアウトし、道路脇の木に激突するのがバックミラーに映った。
「ま、こんなもんか」
呟いて次元は運転席に戻った。
助手席に戻った綾は、深く息を吐いてシートに沈み込んだ。