第12話

警察の狭い取調室は密度が100%を超えた。
大柄な『キャット・クラブ』のホステスたちに背の高い銭形。
小柄な綾と華奢な純夏は圧倒されて、部屋の隅で黙って立っていた。
「お前ら、何だってあんな場所に行ったんだ?」
調書を取りながら銭形が訊ねた。
「だからぁ、ジャスミンがあんまり彼を自慢するから、どんな男か見てみようってことになったのよ」
というような事を、ホステスたちは口々に説明する。
綾が狙われている事は、とりあえず伏せる事にしたようだ。
銭形は鬱陶しそうに手を振った。
「ああもう、やかましい! いっぺんに喋るな!」
銭形は苦労しながら調書を書き上げていく。
「それより私、疲れちゃった。座りたいんだけどぉ!」
ジャスミンが訴えた。
「この状況で、座るスペースなんかある訳なかろう」
「あるじゃない。コ・コ!」
イボンヌが無理やり銭形の膝に乗っかった。
「あー、姉さんズルい!」
「私も座りたいー!」
銭形の膝の取り合いになった。
取調室は大騒ぎである。
「えーい、大人しくせんと牢にぶち込むぞ!」
ホステスたちはすぐに大人しくなった。
「危険物は所持していないな?」
銭形は全員を壁に並べて、簡単なボディチェックをはじめた。
「わ、私は何も持ってないです!」
慌てて綾は叫び、銭形の手を払いのけた。
「そう言うやつが1番怪しい!」
銭形は綾の手首をつかんで動きを封じ、壁に押さえつけた。
しかし次の瞬間、声にならない叫びをあげてパッと手を放す。
「お、お、おま……!」
真っ赤になって綾を指さしている銭形。
純夏は綾をまじまじと見つめ、驚いて声をあげた。
「あなた……女の子?」
綾も銭形同様、顔を真っ赤にして頷いた。
「早く言えばいいのに。ごめんなさい」
純夏は丁寧に謝り、銭形に代わってポケットの中身などを確認した。
「でもなんでそんなややこしい変装を……?」
怪訝な顔で綾を見つめ、それから思い出したように声をあげた。
「警部! この子、朝比奈綾です!」
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