第12話

「リョーちゃぁん!」
綾を追ってヴァルナにやってきたホステスたちは、大騒ぎをしながら敷地内を走り回った。
当然、追い払おうとする警官たちと揉み合いになる。
「ちょっと、押さないでよ!」
「やだ~、ジャスミンのカレ素敵!」
「それは今関係ないでしょ!」
「ちょっと姉さんたち! どさくさに紛れて私のエリックに手ださないでよ!」
「やめてよ、痛いじゃないの! ……ヤロー、痛ぇって言ってんだろーが!」
男とはいえ、所詮はオカマ。
手ごわい抵抗をみせていたが、警官たちは数にものを言わせてホステスたちを押さえつけた。
そこへ、規制線を飛び越えて銭形と純夏が駆けつける。
「なんだ、ここは」
警官に囲まれたオカマの集団を見て、銭形はいぶかしげに呟いた。
「こいつら……なんでこんな所に?」
「さぁな、突然押しかけてきやがったんだ。気分が悪くなるからさっさと連れてってくれ」
警官たちはとにかく早くしょっ引けと言わんばかりだ。
警官なんだから自分らで連行すれば良いじゃないかと銭形は思う。
「とにかく全員、公務執行妨害で署に連行します」
純夏が宣言すると、ホステスの1人が叫んだ。
「全員じゃないわ! リョーちゃんがまだどこかにいるの!」
「なに? あと1人残ってるのか」
銭形は敷地内をぐるりと見渡した。
ちょうどプレハブの横で、赤いドレス姿のホステスに迷彩服の男が歩み寄るところだった。
「そいつらを車に乗せとけ。あいつはわしが連れてくる」
銭形はコートを翻して駆け出した。
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