第11話
一方、銭形のオフィスでは。
「うー……っと。疲れたなぁ……」
銭形は椅子に座って足をデスクに投げ出し、ため息をつきながら背筋をそらした。
ヴァルナには何も見つけられなかった。
立ち入りすら許可されず、追い返される始末だ。
それならばとルパンの足取りを追ってみたが、こちらも手がかりはなかった。
いくつか見つけたアジトは、あるものは破壊され、あるものは政府の監視がついていた。
政府もやっきになってルパンを追っているらしい。
「政府は何が目的なんだろうなぁ。ジョン・コリンズを抹殺し、ルパンを追いかけ回し……」
「警部!」
隣に座っていた純夏が、自分の手帳と資料を見比べながら声を上げた。
「何だ」
「この前ヴァルナの元職員に聞き込みをした時、ヴァルナにひそかに資金提供をしていたのは政府だったという噂を聞いたんですが」
銭形は足を下ろして純夏の顔を見た。
「本当か?」
「はい。それが本当なら、政府がヴァルナ跡地にこだわるのは、もしかして水エネルギーシステムのせいではないでしょうか」
銭形はクリアボードに歩み寄ると、そこに『政府』と書き込み、『ヴァルナ研究所』まで双方向の矢印でつないだ。
そして矢印の上に『資金提供!』と記入し、『水エネルギーシステム』の付箋を矢印の下に移動させる。
「だが資料によれば、爆破事件後に政府は情報の開示を条件に融資を申し出ているな。政府が既にエネルギーシステムを手にしていたのなら、融資の必要はなかったはずだ」
「……そうですね」
「だがおそらく、ジョン・コリンズ氏はエネルギーシステムの秘密を知ってしまったがために殺されたんだ。でなきゃ政府が捜査に口出しなんかせんだろう。犯罪の隠ぺいとか、かく乱が目的なんじゃない。警察に嗅ぎまわられて、エネルギーシステムの秘密がばれるのをおそれているんだ」
2人はクリアボードを見つめてしばらく黙りこんだ。
すると純夏は『水エネルギーシステム』の付箋を半分に折った。
「警部。例えば、水エネルギーシステムはほぼ完成していたとします」
「うん……?」
銭形は純夏の動きをじっと見つめた。
純夏は『ルパン』の付箋をはがし、それも半分に折った。
そして半分になった『ルパン』を半分の『水エネルギーシステム』とつなげて、一つの付箋にする。
「これだわ!」
純夏は自分の考えに満足して頷いた。
「システムを完成させる鍵は、ルパンが持っているんです。だから彼は政府に追われているんですよ!」
銭形も純夏の考えに大きくうなずいた。
「なるほど。で、ルパンは今どこだ?」
「探しましょう! 刑事は足でかせげって、よく言うでしょう?」
純夏はコートとバッグを取り上げた。
部屋を出ようとしたところで、銭形のデスクの電話が鳴る。
「はい……あぁ、私です」
応対した彼女の顔が、さっと曇った。
上司のラスだろうと、銭形は思った。
「はい……えっ?」
一瞬目を見開いたかと思うと、受話器を置く時には彼女の表情は複雑になっていた。
ラスの話が冗談なのか本気なのかを決めかねているような、そんな顔つきだ。
「どうした?」
気になった銭形は訊ねた。
純夏は言いにくそうに、首をかしげながら答えた。
「公務執行妨害のオカマを捕えに来い、との事です」
「うー……っと。疲れたなぁ……」
銭形は椅子に座って足をデスクに投げ出し、ため息をつきながら背筋をそらした。
ヴァルナには何も見つけられなかった。
立ち入りすら許可されず、追い返される始末だ。
それならばとルパンの足取りを追ってみたが、こちらも手がかりはなかった。
いくつか見つけたアジトは、あるものは破壊され、あるものは政府の監視がついていた。
政府もやっきになってルパンを追っているらしい。
「政府は何が目的なんだろうなぁ。ジョン・コリンズを抹殺し、ルパンを追いかけ回し……」
「警部!」
隣に座っていた純夏が、自分の手帳と資料を見比べながら声を上げた。
「何だ」
「この前ヴァルナの元職員に聞き込みをした時、ヴァルナにひそかに資金提供をしていたのは政府だったという噂を聞いたんですが」
銭形は足を下ろして純夏の顔を見た。
「本当か?」
「はい。それが本当なら、政府がヴァルナ跡地にこだわるのは、もしかして水エネルギーシステムのせいではないでしょうか」
銭形はクリアボードに歩み寄ると、そこに『政府』と書き込み、『ヴァルナ研究所』まで双方向の矢印でつないだ。
そして矢印の上に『資金提供!』と記入し、『水エネルギーシステム』の付箋を矢印の下に移動させる。
「だが資料によれば、爆破事件後に政府は情報の開示を条件に融資を申し出ているな。政府が既にエネルギーシステムを手にしていたのなら、融資の必要はなかったはずだ」
「……そうですね」
「だがおそらく、ジョン・コリンズ氏はエネルギーシステムの秘密を知ってしまったがために殺されたんだ。でなきゃ政府が捜査に口出しなんかせんだろう。犯罪の隠ぺいとか、かく乱が目的なんじゃない。警察に嗅ぎまわられて、エネルギーシステムの秘密がばれるのをおそれているんだ」
2人はクリアボードを見つめてしばらく黙りこんだ。
すると純夏は『水エネルギーシステム』の付箋を半分に折った。
「警部。例えば、水エネルギーシステムはほぼ完成していたとします」
「うん……?」
銭形は純夏の動きをじっと見つめた。
純夏は『ルパン』の付箋をはがし、それも半分に折った。
そして半分になった『ルパン』を半分の『水エネルギーシステム』とつなげて、一つの付箋にする。
「これだわ!」
純夏は自分の考えに満足して頷いた。
「システムを完成させる鍵は、ルパンが持っているんです。だから彼は政府に追われているんですよ!」
銭形も純夏の考えに大きくうなずいた。
「なるほど。で、ルパンは今どこだ?」
「探しましょう! 刑事は足でかせげって、よく言うでしょう?」
純夏はコートとバッグを取り上げた。
部屋を出ようとしたところで、銭形のデスクの電話が鳴る。
「はい……あぁ、私です」
応対した彼女の顔が、さっと曇った。
上司のラスだろうと、銭形は思った。
「はい……えっ?」
一瞬目を見開いたかと思うと、受話器を置く時には彼女の表情は複雑になっていた。
ラスの話が冗談なのか本気なのかを決めかねているような、そんな顔つきだ。
「どうした?」
気になった銭形は訊ねた。
純夏は言いにくそうに、首をかしげながら答えた。
「公務執行妨害のオカマを捕えに来い、との事です」