第11話

「……あっ!」
純夏が短い声をあげブレーキを踏んだ。
いきなり前方から走り寄って来る人影が見えたのだ。
太陽を背にした人影は黒い影のままどんどん近づいてきて、パトカーの目前でパッと地面から飛び上がった。
「てぇぇぇいっ!」
一瞬何かが煌めいたと思うと、次の瞬間にはパトカーは真っ二つになっていた。
勿論、銭形とルパンをつないでいた手錠も真っ二つ。
「サンキュー五エ門。助かったぜ」
ルパンは五エ門を振り返った。
「ニュースを見たのでな。車はすぐそこだ」
「あれ、免許持ってたっけ? 五エ門ちゃん」
ルパンは手錠の残骸を道路に投げ捨て、五エ門と共に一目散に駆け出した。
「免許……?」
「あ、なんでもない」
ルパンは聞かなかった事にしようと思ったが、五エ門は真顔で言葉を続けた。
「拙者の生まれた村では、18になったら誰でも運転して良いのだ」
「ウソつけ! 耕運機じゃねぇんだぞ!」
ルパン達はギャーギャーわめきながら走り去り、後には銭形と純夏、それに真っ二つになったパトカーが残された。
「怪我はないか?」
銭形は純夏に手を差し出した。
純夏はその手につかまって立ち上がると、銭形を見上げた。
「警部、どうします?」
銭形は純夏を見下ろして、思わず笑顔になる。
ヴァルナでの自信なさげな表情はどこにもない。
刑事の顔つきだった。
「お前さんなら、どうする?」
「ヴァルナに戻りましょう。ルパンの言ってた事が気になります。政府がどう関わっているのか、見極めなきゃいけません」
「あぁ。行こう」
2人はどちらともなく頷き合い、走り出した。
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