「わーっ！　こっちは1人なんだぞ、ちったぁ手加減してくれよ！」
そんな事をわめきながら、ルパンは車を蛇行させて攻撃ヘリの機関砲を避けた。
走りながらワルサーを向けようとするが、上手くいかずに諦める。
「次元がいないと無理だぁ！　……良いよな、あいつは綾ちゃんが一緒で……不二子ちゃん、かむぶぁーっく！」
タイヤをきしませてUターンし、フェイントをかけてヘリコプターの真下をくぐり抜ける。
機関砲がフィアットをかすめ、窓ガラスが砕けた。
「くそー、税金だと思って弾ぁ大盤振る舞いしやがって！　この税金ドロボー！」
少なくとも本物のドロボーが言えた事ではない。
「しっかし、問題はどこまで封鎖されてっか、だな……」
ルパンはアクセルを踏みきったフルスピードで道路を突っ走っていた。
一般車両や一般人がいた場合、奴らはどうするのだろうか。
攻撃を止めてくれるなら封鎖されてない場所へ逃げ込むのも手だが、次元の言葉がそれを思いとどまらせる。
『主義も信念も道義心もなく、金さえ出せば相手が子供だろうが平気で殺す』
目的の為に手段を選ばず一般人が巻き添えになったらと思うと、下手な事は出来なかった。
「あーあ、まいったマイッタ隣の神社、ってな」
そう言って肩をすくめていると、ヘリコプターの音に混じって、聞き慣れたサイレンが聞こえてきた。
バックミラーに、ものすごい勢いで迫ってくるパトカーが映る。
「ルパ～ン！　逮捕だ～！」
助手席の窓から上半身を乗り出して、銭形が手錠を振り回していた。
「面倒なのが来たよ……とっつぁん、オレ今あんたの相手してる場合じゃないんだってば！」
「うるせぇ！　問答無用だ！」
純夏がフィアットを追い越し、ハンドルを切ってフィアットの進路を遮った。
目の前に純夏が飛び出してきた瞬間、ルパンは慌ててブレーキを踏む。
おかげで激しい衝突にならずに済んだ。
銭形がルパンを引きずり出し、手錠をかける。
純夏はフィアットを邪魔にならないよう路肩に移動させた。
「いやーまいった！ 可愛い顔して無茶するねぇ、お嬢サン」
ルパンは苦笑しながら、チラリと上空のヘリコプターを見上げる。
ヘリは車にルパンしか乗ってなかった事が分かると、そのままどこかへ飛び去って行った。
「ワリィ次元、ドジっちまった！　後は頼んだぜー！」
とりあえず空に向かって、その場にいない相棒に謝っておく。
そしてルパンはパトカーの後部座席に押し込まれた。