第10話

歩道橋の上まで来ると、次元はヘリコプターを見上げた。
上空の高い位置でホバリングをしながら様子を見ていたヘリコプターが、カルロスの合図でゆっくりと下降してくる。
次元は愛銃の弾倉に入っていた38口径の弾を、1発だけ357マグナム弾に入れ替えた。
当たりどころさえ良ければ、上手くいくはずだ。
綾は迫ってくるヘリコプターを見ていられず、次元の背中に顔を押し付けた。
「綾。絶対に手をはなすなよ」
次元の手が一瞬綾の腕をギュッと掴み、すぐに離れた。
ヘリコプターに銃口を向ける。
先手を打つつもりか、ヘリコプターはロケット弾を発射した。
細長いロケット弾がヘリコプターから放たれた矢の様に飛びだした。
次元は狙いすましてマグナム弾をヘリコプターに打ち込んだ。
そしてすぐさまスロットルを全開にし、バイクをスタートさせる。
ロケット弾が歩道橋に命中するタイミングでバイクは歩道橋から飛び出し、爆風に吹き飛ばされる。
綾は固く目を瞑り、次元の体にまわした手に力を込めた。
バイクは絶妙なバランスを保って装甲車の列を飛び越え、その背後に着地する。
直後、ヘリコプターがバランスを崩して墜落、カルロスたちは騒然となった。
次元は振り返りもせず、そのままバイクを走らせた。
背後で聞こえた怒号も銃声も、風に流されてすぐに聞こえなくなった。
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