第10話
3人ともしばらく押し黙ったままだった。
ハンドルを握るルパンは時々ルームミラーに視線をおくり、後部座席の2人を見た。
2人は顔をそれぞれ窓の外に向け、物思いに沈んでいる。
「コリンズのじいさんは、なんであんな所で殺されてたんだろうな」
ルパンが言った。
カルロスの事を考えていた次元だったが、ルパンの言葉に思考をいったん中止した。
渋々応える。
「何でって、知られちゃマズい事を知ってしまったんだろう。見ちゃいけねぇもんを見たとか」
「じゃ、その捜査に政府がしゃしゃり出てきたってことは……」
「殺したのは政府、って事だな。撹乱か隠蔽が目的だ」
「つーまーり、だ。あそこには政府がひた隠しにするなにか秘密があり、偶然にもそれを知ったじいさんは口封じの為に殺された……そういう訳だな」
「そういう訳だ」
ルパンと次元の意見が合意したところで、綾はようやく口を開いた。
おそるおそる訊ねる。
「不二子さんは政府に捕まってるの……?」
「本当に捕まったのかどうか」
次元は綾を振り返り、冷ややかに言った。
「ひと儲けできるかもしれねぇとみて政府についたんじゃないと言えるか? あの女が」
もちろん、政府とヴァルナ研究所を結び付けているものが水エネルギーだろうと、綾も気づいていた。
かつて政府が兵器利用を目的にヴァルナに資金援助をしていた事も知っている。
爆発事故の後政府は手を引いたと考えられていたが、実はそうではなく、政府はまだあきらめていなかったとしたら……。
綾が顔色を失っていくのを見て、ルパンは助け船を出した。
「だけど、エネルギーシステムの設計図はもうないんだぜ? 政府がどんなに欲しがったって、どうしようもないだろ?」
次元はまなじりを上げ、ゆっくり前を向いた。
「本気でそう思ってるか?」
「えーと……」
言葉を濁すと、次元の表情は更に険しくなった。
「まさかおめぇ、設計図を持ってるなんて言わねぇよな?」
「ナイナイナイ! ないないづくしと出たわいな、ヨホホイホイ♪ てなモンよ」
「……」
次元は余計険しい顔になってしまった。
車内の緊迫した空気を和まそうとしたのだが、逆効果だったようだ。
「次元だって見たでしょうよ。五エ門がUSBをばっさりやるとこ!」
「スペアじゃないって言いきれんのか。不二子がバックアップをとってないって?」
ルパンはその意見を鼻で笑って一蹴した。
「綾ちゃんの話じゃ、不二子は腕を撃たれてるんだぜ? 乙女の大事なお肌を傷つけた相手と取引なんて、する訳ないでしょーが」
「命あってのモノダネって事もある」
脅迫されればUSBくらい渡すだろう。
そう言われて、カチンときたルパンは言い返した。
「わかった。そんなに言うなら不二子を助け出して直接訊いてみればいい!」
綾がうれしそうに微笑んで頷いた。
次元はルパンに向かってさらに何か言いかけたが、綾のホッとしたような顔が目に入ると、思いとどまって引き下がるしかなかった。
ハンドルを握るルパンは時々ルームミラーに視線をおくり、後部座席の2人を見た。
2人は顔をそれぞれ窓の外に向け、物思いに沈んでいる。
「コリンズのじいさんは、なんであんな所で殺されてたんだろうな」
ルパンが言った。
カルロスの事を考えていた次元だったが、ルパンの言葉に思考をいったん中止した。
渋々応える。
「何でって、知られちゃマズい事を知ってしまったんだろう。見ちゃいけねぇもんを見たとか」
「じゃ、その捜査に政府がしゃしゃり出てきたってことは……」
「殺したのは政府、って事だな。撹乱か隠蔽が目的だ」
「つーまーり、だ。あそこには政府がひた隠しにするなにか秘密があり、偶然にもそれを知ったじいさんは口封じの為に殺された……そういう訳だな」
「そういう訳だ」
ルパンと次元の意見が合意したところで、綾はようやく口を開いた。
おそるおそる訊ねる。
「不二子さんは政府に捕まってるの……?」
「本当に捕まったのかどうか」
次元は綾を振り返り、冷ややかに言った。
「ひと儲けできるかもしれねぇとみて政府についたんじゃないと言えるか? あの女が」
もちろん、政府とヴァルナ研究所を結び付けているものが水エネルギーだろうと、綾も気づいていた。
かつて政府が兵器利用を目的にヴァルナに資金援助をしていた事も知っている。
爆発事故の後政府は手を引いたと考えられていたが、実はそうではなく、政府はまだあきらめていなかったとしたら……。
綾が顔色を失っていくのを見て、ルパンは助け船を出した。
「だけど、エネルギーシステムの設計図はもうないんだぜ? 政府がどんなに欲しがったって、どうしようもないだろ?」
次元はまなじりを上げ、ゆっくり前を向いた。
「本気でそう思ってるか?」
「えーと……」
言葉を濁すと、次元の表情は更に険しくなった。
「まさかおめぇ、設計図を持ってるなんて言わねぇよな?」
「ナイナイナイ! ないないづくしと出たわいな、ヨホホイホイ♪ てなモンよ」
「……」
次元は余計険しい顔になってしまった。
車内の緊迫した空気を和まそうとしたのだが、逆効果だったようだ。
「次元だって見たでしょうよ。五エ門がUSBをばっさりやるとこ!」
「スペアじゃないって言いきれんのか。不二子がバックアップをとってないって?」
ルパンはその意見を鼻で笑って一蹴した。
「綾ちゃんの話じゃ、不二子は腕を撃たれてるんだぜ? 乙女の大事なお肌を傷つけた相手と取引なんて、する訳ないでしょーが」
「命あってのモノダネって事もある」
脅迫されればUSBくらい渡すだろう。
そう言われて、カチンときたルパンは言い返した。
「わかった。そんなに言うなら不二子を助け出して直接訊いてみればいい!」
綾がうれしそうに微笑んで頷いた。
次元はルパンに向かってさらに何か言いかけたが、綾のホッとしたような顔が目に入ると、思いとどまって引き下がるしかなかった。