第9話
「関係者以外は立ち入り禁止です」
規制線の手前で2人は止められた。
純夏は警察バッジを掲げて見せた。
「刑事局捜査官の山中です。別件でジョン・コリンズ殺害事件について調べたいことがあります」
「ラス・エイバリ―の許可は」
「ボスは中です。入れてもらえれば許可は取ります」
「許可がない者は入れられない」
純夏が唇を噛んで黙りこむと、背後から銭形が身分証を提示して言った。
「ICPOの銭形だ。調べたいことがある、通してくれ」
規制線の前には2人の警官が立っていたが、銭形の身分証を見るとどうしたものかと顔を見合わせた。
「インターポールじゃ入れないわけにも……なぁ」
「だけど……」
2人が話し合っている背後を、ラスが横切っていく。
「ラス!」
純夏は規制線を乗り越えてラスに駆け寄った。
「君か。こんな所で何をしている」
振り返ったラスは明らかに不機嫌な顔になって純夏を見下ろした。
「聞いてください、ルパン三世がこの件に絡んでいるらしく……」
「ふん、ばかな事を」
ラスは一蹴した。
「バカとはなんだ、バカとは」
いつの間にか純夏の背後にやって来ていた銭形がラスの前へ進み出た。
「彼女もあんたの部下だろうが」
「銭形警部殿……」
ラスはますます渋い顔をした。
部下である純夏ならまだしも、銭形を無下に追い返すわけにもいかないのだろう。
「彼女の言っている事は間違いない。水エネルギーが絡む一連の事件にはルパンも絡んでいるんだ。少し中を調べさせてくれんか」
「しかし……」
ラスが渋っている間に、銭形は純夏を伴って中へと歩き出していた。
「警部殿……!」
ラスの制止する声と同時に、銭形達の足元でダダダと銃弾が跳ねた。
慌てて下がる銭形と純夏の前に、1人の男が立ちはだかる。
迷彩服を着てライフルを構えていた。
「なんだ貴様は! 危ない……」
「お引き取り頂こう」
銭形のわめき声にかぶせるようにして、高圧的な態度で男は言った。
「この件は政府が指揮している。部外者は一切立ち入り禁止だ」
「あんた、人の話を聞いてたか? こっちはルパンの手がかりを探してだなぁ……」
銭形が男の方へ詰め寄ろうとすると、男はライフルの銃口を向け威嚇した。
「帰れ。死にたくなければな」
「……」
「警部、行きましょう」
純夏が腕を引っ張るようにして銭形を規制線の外へと連れ出した。
銭形は悔しそうにじっと男を睨みつけていた。
ライフルの男はラスと何やら言葉を交わし、どこかへ去っていった。
「……ったく、どうなっとるんだ!」
「この国は、軍と政府の結びつきがとても強いんです。だから軍が少し暴力に訴えたとしてもあまり表沙汰にはなりません……それが政府の為となれば猶更」
「民主主義が聞いてあきれる」
銭形は足元の石を蹴り飛ばして車へと引き上げていく。
純夏が転がった石を目で追っていると、その延長線上に人影を見つけた。
セクシーでありながらどこか上品なスタイルの美女が敷地内をゆっくりと横切ってゆく。
あまりにもその場に不釣り合いに感じてじっと観察していると、視線に気づいた女がこちらを振り返り、それにつられて艶のある栗色の髪がふわりと舞った。
形の良い唇の端がキュッと上がる……鮮やかな微笑み。
女が優雅な足どりで去っていくのを、純夏はただ呆然と見つめていた。
規制線の手前で2人は止められた。
純夏は警察バッジを掲げて見せた。
「刑事局捜査官の山中です。別件でジョン・コリンズ殺害事件について調べたいことがあります」
「ラス・エイバリ―の許可は」
「ボスは中です。入れてもらえれば許可は取ります」
「許可がない者は入れられない」
純夏が唇を噛んで黙りこむと、背後から銭形が身分証を提示して言った。
「ICPOの銭形だ。調べたいことがある、通してくれ」
規制線の前には2人の警官が立っていたが、銭形の身分証を見るとどうしたものかと顔を見合わせた。
「インターポールじゃ入れないわけにも……なぁ」
「だけど……」
2人が話し合っている背後を、ラスが横切っていく。
「ラス!」
純夏は規制線を乗り越えてラスに駆け寄った。
「君か。こんな所で何をしている」
振り返ったラスは明らかに不機嫌な顔になって純夏を見下ろした。
「聞いてください、ルパン三世がこの件に絡んでいるらしく……」
「ふん、ばかな事を」
ラスは一蹴した。
「バカとはなんだ、バカとは」
いつの間にか純夏の背後にやって来ていた銭形がラスの前へ進み出た。
「彼女もあんたの部下だろうが」
「銭形警部殿……」
ラスはますます渋い顔をした。
部下である純夏ならまだしも、銭形を無下に追い返すわけにもいかないのだろう。
「彼女の言っている事は間違いない。水エネルギーが絡む一連の事件にはルパンも絡んでいるんだ。少し中を調べさせてくれんか」
「しかし……」
ラスが渋っている間に、銭形は純夏を伴って中へと歩き出していた。
「警部殿……!」
ラスの制止する声と同時に、銭形達の足元でダダダと銃弾が跳ねた。
慌てて下がる銭形と純夏の前に、1人の男が立ちはだかる。
迷彩服を着てライフルを構えていた。
「なんだ貴様は! 危ない……」
「お引き取り頂こう」
銭形のわめき声にかぶせるようにして、高圧的な態度で男は言った。
「この件は政府が指揮している。部外者は一切立ち入り禁止だ」
「あんた、人の話を聞いてたか? こっちはルパンの手がかりを探してだなぁ……」
銭形が男の方へ詰め寄ろうとすると、男はライフルの銃口を向け威嚇した。
「帰れ。死にたくなければな」
「……」
「警部、行きましょう」
純夏が腕を引っ張るようにして銭形を規制線の外へと連れ出した。
銭形は悔しそうにじっと男を睨みつけていた。
ライフルの男はラスと何やら言葉を交わし、どこかへ去っていった。
「……ったく、どうなっとるんだ!」
「この国は、軍と政府の結びつきがとても強いんです。だから軍が少し暴力に訴えたとしてもあまり表沙汰にはなりません……それが政府の為となれば猶更」
「民主主義が聞いてあきれる」
銭形は足元の石を蹴り飛ばして車へと引き上げていく。
純夏が転がった石を目で追っていると、その延長線上に人影を見つけた。
セクシーでありながらどこか上品なスタイルの美女が敷地内をゆっくりと横切ってゆく。
あまりにもその場に不釣り合いに感じてじっと観察していると、視線に気づいた女がこちらを振り返り、それにつられて艶のある栗色の髪がふわりと舞った。
形の良い唇の端がキュッと上がる……鮮やかな微笑み。
女が優雅な足どりで去っていくのを、純夏はただ呆然と見つめていた。