クリスマス

時は経ち、現在。

「あ? クリスマスプレゼントだと?」

次元はプレゼントをねだる綾を鼻であしらった。

「俺ぁサンタじゃねーんだ。誰かれ構わずプレゼントなんざ配らねぇよ」

それを聞くと綾は不満そうに口をとがらせた。

「サンタさんでしょ。ナサニエルくれたじゃない」

「ナサニエル?」

「彼よ」

綾は背中から古びたカエルのぬいぐるみを取り出して見せた。

「お前、まだ持ってたのか、それ!」

次元は驚いて素っ頓狂な声を出した。

「友達だもん」

綾はぬいぐるみをギュッと抱きしめた。

「もっとも、黒ずくめのサンタさんがくれたナサニエルは事件の時に燃えちゃったから、この子は2世だけどね。同じ物を探すの、苦労したんだぁ」

「2世ね……」

何故か、当時次元が巻いてやったリボンまでが忠実に再現されている。

「ま、いいや。プレゼントなんてどうでも」

壁にチラリと目を走らせた綾は、思い直したようにそう呟いた。

何を見つけたのか、悪戯っぽい笑みを浮かべている。

ナサニエルをソファに横たえ、それから次元の手をとって壁際へ引っ張っていった。

「なんだよ」

「いいから、いいから」

次元を壁際に立たせた綾は、肩に手をかけて背伸びをし、そっとキスをした。

「メリークリスマス、次元」

呆然とする次元の頭上を指さし、にっこり笑う。

振り返って仰ぎ見ると、ヤドリギのリースが飾られていた。

「クリスマスは、ヤドリギの下にいる人にキスしてもいいんだって」

「そうか。良いことを聞いたぜ」

次元はヤドリギの実をひとつもぎ取ると、綾を抱き寄せた。

「メリークリスマス、綾」



おわり
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