第2話
とあるカフェレストラン。
「ジョン・コリンズさんって、あんた?」
ルパンは老齢の男性に声をかけた。
「あんたか、俺に聞きたい事があるってのは」
コリンズは探る様な目付きでルパンを見上げた。
「ヴァルナ研究所にいたって、綾ちゃんに聞いてね。リョウ・アサヒナ、朝比奈美湖の娘だ」
「リョウ……あぁ、覚えてるよ。可哀想な子だ、あの事件で母親を失っちまって」
こいつも事件と言ったか。
ルパンは言葉を続けた。
「その事件の事を知りたい。ヴァルナはなぜ潰れたんだ?」
「あんた……警察か?」
「ICPOの銭形だ。研究所爆破事件の真相を追ってる」
ルパンはしれっと嘘をついた。
コリンズはサッと周囲を見回し、テーブルの向こうから身を乗り出して、小さな声で言った。
「大きい声じゃ言えねえ。誰が聞いてるか分からんからな」
ルパンは頷いた。
「俺の息子も研究所で働いてた。ミコは息子の上司さ。事件の少し前、ミコが研究所に多額の資金援助をしている奴を突き止めたと、息子から聞いた」
「親会社のヴァルナエネルギーじゃないのか?」
「いいや、違う。政府さ。政府が水エネルギーを兵器利用する目的で、ヴァルナに資金提供をしていたんだ」
「政府……」
「それを知ったミコは研究所を辞めると言っていたらしい。その数週間後だよ、事件が起きたのは」
「するってーと、あの爆発は口封じ?」
「わしら生き残り組は違う考えだ。あの爆発は、研究をさせまいとする者の犯行だとな」
「研究を阻止する為って……政府は研究を後押ししてたんだろう?」
「だから、爆発は政府の仕業じゃない」
コリンズはいっそう顔を近付けて、囁く様に言った。
「ヘリオス社さ」
「なるほど」
ルパンは大きく頷いた。
ヘリオスエネルギーと言えば、主に太陽エネルギーを供給する大企業だ。
エネルギー供給会社としてヴァルナとヘリオスはライバル企業としてともに成長してきたが、ヴァルナの事故で明暗を分けるかたちになった。
「水エネルギーが実用化すれば太陽エネルギーは必要なくなるかも知れない。それで最初はエネルギーシステムを横取りしようとデータを狙い、それが叶わないと今度は破壊工作に出たって訳か」
コリンズは首肯した。
「ヴァルナが潰れた後、政府はどうしたんだろう」
「さぁな。ミコの旦那……エリックはすぐに町から出て行った。殺人兵器を作らされるのも、殺されるのも怖かったんだろう。娘もいるしな」
そうか。そういう事か。
ルパンは納得して頷いた。
「ありがとよ、じいさん。息子さんにも礼を言っておいてくれ」
ルパンはそう言って、2人分のコーヒー代を置いて席を離れた。
俯いたコリンズは小さく呟く。
「そいつは、天国に言ってくれ……」
「ジョン・コリンズさんって、あんた?」
ルパンは老齢の男性に声をかけた。
「あんたか、俺に聞きたい事があるってのは」
コリンズは探る様な目付きでルパンを見上げた。
「ヴァルナ研究所にいたって、綾ちゃんに聞いてね。リョウ・アサヒナ、朝比奈美湖の娘だ」
「リョウ……あぁ、覚えてるよ。可哀想な子だ、あの事件で母親を失っちまって」
こいつも事件と言ったか。
ルパンは言葉を続けた。
「その事件の事を知りたい。ヴァルナはなぜ潰れたんだ?」
「あんた……警察か?」
「ICPOの銭形だ。研究所爆破事件の真相を追ってる」
ルパンはしれっと嘘をついた。
コリンズはサッと周囲を見回し、テーブルの向こうから身を乗り出して、小さな声で言った。
「大きい声じゃ言えねえ。誰が聞いてるか分からんからな」
ルパンは頷いた。
「俺の息子も研究所で働いてた。ミコは息子の上司さ。事件の少し前、ミコが研究所に多額の資金援助をしている奴を突き止めたと、息子から聞いた」
「親会社のヴァルナエネルギーじゃないのか?」
「いいや、違う。政府さ。政府が水エネルギーを兵器利用する目的で、ヴァルナに資金提供をしていたんだ」
「政府……」
「それを知ったミコは研究所を辞めると言っていたらしい。その数週間後だよ、事件が起きたのは」
「するってーと、あの爆発は口封じ?」
「わしら生き残り組は違う考えだ。あの爆発は、研究をさせまいとする者の犯行だとな」
「研究を阻止する為って……政府は研究を後押ししてたんだろう?」
「だから、爆発は政府の仕業じゃない」
コリンズはいっそう顔を近付けて、囁く様に言った。
「ヘリオス社さ」
「なるほど」
ルパンは大きく頷いた。
ヘリオスエネルギーと言えば、主に太陽エネルギーを供給する大企業だ。
エネルギー供給会社としてヴァルナとヘリオスはライバル企業としてともに成長してきたが、ヴァルナの事故で明暗を分けるかたちになった。
「水エネルギーが実用化すれば太陽エネルギーは必要なくなるかも知れない。それで最初はエネルギーシステムを横取りしようとデータを狙い、それが叶わないと今度は破壊工作に出たって訳か」
コリンズは首肯した。
「ヴァルナが潰れた後、政府はどうしたんだろう」
「さぁな。ミコの旦那……エリックはすぐに町から出て行った。殺人兵器を作らされるのも、殺されるのも怖かったんだろう。娘もいるしな」
そうか。そういう事か。
ルパンは納得して頷いた。
「ありがとよ、じいさん。息子さんにも礼を言っておいてくれ」
ルパンはそう言って、2人分のコーヒー代を置いて席を離れた。
俯いたコリンズは小さく呟く。
「そいつは、天国に言ってくれ……」