クリスマス

クリスマスの晩は、雪がちらついていた。

見苦しくない程度に身なりを整え、時間きっかりにチャイムを鳴らす。

バタバタと足音がして、ドアが勢いよく開き、綾が飛びついてきた。

「いらっしゃい次元! ママ、ホントに次元が来てくれたよ!」

「良い子にしてたのか? 良い子じゃなきゃプレゼントはあげるなとサンタに言われてる」

「プレゼント? ホントに?」

綾は目を輝かせた。

興奮して頬も真っ赤だ。

「友達を連れてきてやったぞ」

そう言って背中から取り出したのは、大きなカエルのぬいぐるみ。

愛嬌のある顔で、手足は短く、胴体が恐ろしく長い。

タオル地でできており、抱き心地が良かった。

綾はじーっとカエルの顔を見つめていたが、やがて満面の笑みを浮かべてぬいぐるみを抱きしめた。

早速自分の椅子の隣にカエルの席を用意してやっている。

「ありがとう。あの子すごく嬉しそう」

美湖は嬉しそうに笑った。

「でも次元。あれ、あなたのチョイス?」

「あいつが売れ残っていたんだ」

「あのリボンは?」

「店主が包装はセルフだって言いやがって……」

「じゃ、あれ、あなたがやったの?」

美湖はカエルの首にぐるぐると巻きついている赤いリボンを指差した。

パッと見、カエルの絞殺に見えなくもない。

「リボンぐらい無いと、プレゼントに見えないだろうと思って」

美湖は俺の顔を見つめ、それから声をあげて笑った。

そんなに笑うこたぁ、ないだろーが。

嬉しそうに笑う綾と、楽しそうに笑う美湖に囲まれて。

俺は少々、居心地が悪かった。




おわり
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