今ひとつだな、アニー・ウォーカー

「綾に仕事……?」

「そ。ある屋敷のパーティ会場に潜り込み、その家のパソコンからデータを盗み出す。簡単でしょ?」

「まーかせて! 私コンピュータ得意だから」

得意気に笑う綾に、上機嫌で頷くルパン。

「ダメだ」

「えーっ。何でだよ次元ちゃ~ん」

「よく考えろ。綾は素人だぞ」

「心配ご無用。すでに何度かお仕事に連れてったさ」

「なに⁉︎」

次元は開いた口がふさがらない。

「電子ロックを外すのには目を見張るものがござる」

「よく言うよ五エ門。待ちきれなくて扉斬っちゃったクセに!」

次元は、軽口をたたいて皆と笑いあっている綾を見つめた。

最近綾がルパン達とよく出かけていたのは知っていたが、仕事の為だったとは。

知らなかったのは俺だけか……

「仕事なら俺が連れていく。勝手な事をするな」

次元はイライラしながら言った。

「綾は俺に守られてりゃあ良いんだ。俺にはミコとの約束がある」

「何それ……!」

綾の顔が険しくなった。

ばんっ。

テーブルを叩いて立ち上がる。

「もうっ! いっつもミコミコって……!」

キッ、と次元を睨みつける。

「次元は私じゃなくて、ママとの約束が大事なのよね!」

呆気にとられる一同を尻目に、綾はアジトを飛び出していった。

「はっ、何だよあの態度」

「次元……オメーが悪いんだよ」

ルパンはため息をついた。

「素直じゃないねぇ、お宅も。ママさんの約束を盾にしなきゃ好きな女も守れないのかよ」

「勝手に言ってろ」

「ほんじゃ言わして貰うが、綾ちゃんももう子供じゃない。お前がいつまでもそんな態度だと、俺が貰っちゃうよん」

「おまっ……!」

ガバッと顔を上げる次元。

「アハハ、今の顔! 綾ちゃんに見せたかったね」

「ふざけやがって……」

次元は舌打ちをして立ち上がった。

「どこ行くの、次元ちゃん?」

「……散歩だ、散歩!」

鼻息も荒く出ていく次元の背中を見送りながら、ルパンは肩をすくめた。

「ほんと、素直じゃないねぇ……」
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