第7話
秘密の名前を呼ばれた途端、綾はハッと息を呑んで頭を抱え、俯いた。
そのまま身じろぎもしない綾を、ルパン達はじっと見守った。
やがてゆっくり顔を上げた綾の目からは大粒の涙があふれ、頬に筋を描いていた。
「あの夢は現実だったのね……」
綾は言った。
「ママは撃たれた……私があと少し早く家にたどり着いていれば、あの時点で犯人が分かっていたのに……」
「そう自分を責めないで。貴女が生きている事が、ご両親には何よりだと思うわ。犯人を目撃していたら、今貴女はここにはいない筈ですもの」
不二子が綾を抱きしめ、優しく背中を撫でた。
「綾が成長して声変わりした時点で、お宝は永久的に失われていたってオチか……」
次元が呟くと、ルパンは肩をすくめた。
そして、先程から宙に放ってはキャッチを繰り返していたUSBメモリを見つめる。
不二子から奪い取った、水エネルギーシステムの設計図だ。
「まぁ、別のお宝が手に入ったし、良しとするか……五エ門!」
ルパンがUSBを投げると、五エ門は瞬時に反応し、見事に斬り捨てる。
「何よ、別のお宝って」
綾を腕の中に置いたまま、不二子が耳ざとく聞き返した。
「そ、そりゃ……」
綾ちゃんの記憶だ。
本来あるべき記憶が戻って初めて、彼女は綾ちゃん本人になれたんだ。
なんて照れ臭くて言えないルパンは、口角を上げてニヤリと笑う。
「そりゃあ勿論、美女お2人さんに決まってるでしょ~」
そう誤魔化して女2人に飛びつこうとしたルパンだったが、その顔面に2つのパンチがめり込んだ。
チカチカ……
ピヨピヨピヨ……
頭上を星とヒヨコがグルグル回っているルパンを横目に、不二子と綾はハイタッチを交わして微笑み合う。
窓際で壁に寄り掛かりながら綾を見ていた次元は、人知れず小さくため息をついた。
これで良いんだろ、ミコ。
心の中でそっと呟く。
『うふふ、よくできました』
綾の笑顔の向こうに、ミコの笑顔が浮かび、そして消えていった。
次元は顔を見られまいと、帽子を目深にかぶり直した。
その口許には、小さく笑みが浮かんでいた。
おわり
そのまま身じろぎもしない綾を、ルパン達はじっと見守った。
やがてゆっくり顔を上げた綾の目からは大粒の涙があふれ、頬に筋を描いていた。
「あの夢は現実だったのね……」
綾は言った。
「ママは撃たれた……私があと少し早く家にたどり着いていれば、あの時点で犯人が分かっていたのに……」
「そう自分を責めないで。貴女が生きている事が、ご両親には何よりだと思うわ。犯人を目撃していたら、今貴女はここにはいない筈ですもの」
不二子が綾を抱きしめ、優しく背中を撫でた。
「綾が成長して声変わりした時点で、お宝は永久的に失われていたってオチか……」
次元が呟くと、ルパンは肩をすくめた。
そして、先程から宙に放ってはキャッチを繰り返していたUSBメモリを見つめる。
不二子から奪い取った、水エネルギーシステムの設計図だ。
「まぁ、別のお宝が手に入ったし、良しとするか……五エ門!」
ルパンがUSBを投げると、五エ門は瞬時に反応し、見事に斬り捨てる。
「何よ、別のお宝って」
綾を腕の中に置いたまま、不二子が耳ざとく聞き返した。
「そ、そりゃ……」
綾ちゃんの記憶だ。
本来あるべき記憶が戻って初めて、彼女は綾ちゃん本人になれたんだ。
なんて照れ臭くて言えないルパンは、口角を上げてニヤリと笑う。
「そりゃあ勿論、美女お2人さんに決まってるでしょ~」
そう誤魔化して女2人に飛びつこうとしたルパンだったが、その顔面に2つのパンチがめり込んだ。
チカチカ……
ピヨピヨピヨ……
頭上を星とヒヨコがグルグル回っているルパンを横目に、不二子と綾はハイタッチを交わして微笑み合う。
窓際で壁に寄り掛かりながら綾を見ていた次元は、人知れず小さくため息をついた。
これで良いんだろ、ミコ。
心の中でそっと呟く。
『うふふ、よくできました』
綾の笑顔の向こうに、ミコの笑顔が浮かび、そして消えていった。
次元は顔を見られまいと、帽子を目深にかぶり直した。
その口許には、小さく笑みが浮かんでいた。
おわり