第6話

「リョウ!」
呼び声と共に銃声が響いた。
ドアが蹴り飛ばされ、銃火が暗闇を切り裂いた。
綾の背後で、男が手にしていた注射器が砕け散る。
「次元っ!」
綾は叫んでドアの方を振り返った。
廊下からの明かりで金色に縁取られた、黒いシルエット。
「チッ……!」
男は懐から銃を取り出し、室内に駆け込んできた次元に銃口を向けた。
次元の眼差しとマグナムの銃口は、じっと男を捉えて動かない。
「俺を撃とうってのか。良い度胸だ」
低い低い、怒気を含んだ声。
「オートマチックのデメリットを知ってるか」
「黙れ……!」
向き合った二つの銃が、同時に火を吹いた。
男の弾は、次元の帽子を吹き飛ばした。
次元の弾は、男の腕に命中していた。
「オートマチックは命中率が悪いんだ」
次元は帽子を拾い上げ、目深にかぶり直してから綾に歩み寄った。
縄をほどいて綾を立ち上がらせる。
綾は次元の体に腕を回して抱きついた。
「ありがとう……来てくれて」
「あぁ」
次元は頷いた。
「終わったかぁ? 次元」
ルパンがやってきた。
綾の無事を確かめ、よしよしと頭を撫でる。
「それにしても次元、いつもながら仕事の早いこと!」
ルパンは感心しながら、既に戦意をなくしてうなだれている男を椅子に縛り上げた。
「その人誰なの……?」
綾がおそるおそる訊ねた。
「ヘリオスエネルギーの社長さ。ヴァルナを潰し、水エネルギーシステムを横取りし、おまけに君からママとパパを奪った」
綾は首を振った。
「何が何だかわかんないよ。水エネルギーシステムなんて……何で今更? 何故ママとパパは殺されたの? なぜ私にエネルギーシステムの事を聞くの? 誰も答えてくれない……!」
ルパンはポケットからUSBメモリを取り出した。
綾のパソコンから取り込んだファイルが入っている。
それを、そっと綾の掌に乗せた。
「こいつが、きっと君に答えをくれるさ」
「ルパン!」
五エ門が駆け込んできた。
「パトカーが来るぞ!」
「なにぃ?」
ルパン達は慌てて窓に駆け寄り、カーテンの隙間から外を見やった。
パトカーがサイレンを鳴らしながら、群れをなしてこちらに向かって来るのが見えた。
「不二子の奴、腹いせにとっつぁん呼びつけやがったな!」
「ずらかろうぜ!」
4人は顔を見合わせ、一斉に走り出した。
部屋の中には、椅子に縛り付けられたヘリオスエネルギーの社長が残された。
その額に張り付けられた紙には、彼の罪状が細かく記されていた。
ルパン三世のサインとともに。



つづく
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