第6話

「ヘリオスがエネルギーシステムを作り上げていたとはな」
車を運転しながらルパンが言った。
「綾ちゃんのパパさんも、口を割らなかったから殺された。ヘリオスも情報を狙っていたんだ」
「政府は絡んでないのか?」
「恐らく。あの爆発事件以降、政府は手を引いたと思う。一方、ヘリオスは水面下でずっと独自に開発研究を続けていた。不二子がリークした綾ちゃんの情報からシステムを完成させ、残るはエネルギーを発生させるキーとなる周波数を見つけるだけになった……」
ルパン達の乗ったミニクーパーが、その車体に似合わぬスピードで町を走り抜けていく。
「なぁルパンよ……綾のあの悪夢、正夢だと思うか?」
次元が訊いた。
「あぁ。おそらくはパパさんが催眠で意識下に隠した事実だろう」
「ミコは撃たれた……俺は約束を反故にしたのか……」
重い沈黙。
「まだ決まっちゃいねぇさ。綾ちゃん、守ってやれよ」
ルパンが言った。
「でないと、パパさんとママさんにとり憑かれるぞ」
「……違ぇねぇ」
次元はため息をつき、気持ちを切り替えた。
「それで、どこへ行く」
マグナムのシリンダーを開け弾の装填を確認しながら次元が訊いた。
「決まってるっしょ? キルケーを追うのさ」
「不二子がキルケーか? 違えねぇ。オメェは猿かなんかに変えられたんだ」
「ほっとけ!」
「俺が言いたいのは、どこにいるかわかってんのかって事だよ」
「父親んとこさ」
「キルケーの父……あっ、ヘリオスか!」
「鈍いよ次元ちゃん……っと!」ルパンがハンドルを大きくきった。
タイヤを軋ませて車がカーブを脱線し、崖下に見えていたビルの屋上に着地する。
「近道しましたぁ」
ヘリオス社の屋上で、ルパンは満足そうに笑った。
「では先生、お願いいたしやす」
次元が芝居がかった調子で言うと、五エ門が気合い一閃。
「ていっ!」
ビルの天井に、マンホール様の丸い穴が開いた。
「またつまらぬモノを……」
「はいはい、つまらぬ物を斬らせてすいませんね。行くぞ次元」
「あいよ」
五エ門を軽くあしらい、二人は穴の中に消えた。
1/4ページ
スキ