Mの襲来
name change
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「それで、お嬢さん。お名前は?」
モリアーティがアオイに訊ねた。
「あ……」
「言わなくていい!」
ホームズがピシャリと遮ったが、モリアーティを彼の古い友人だと思っているアオイは少し怒った顔をした。
「せっかくお友達がわざわざ訪ねてきてくださったのに、そんな言い方はないんじゃないですか?」
「そうそう、彼女の言うとおりだよホームズ君」
「友達じゃないだろう!」
「ひどいな。僕は悲しいよ……」
モリアーティが落胆の色を見せると、アオイは気の毒に思ったのかモリアーティの隣に座りなおして言った。
「ごめんなさい、ホームズさんは素直じゃないから。本当は会えて嬉しいんですよ」
「君は優しいんだね」
モリアーティは微笑んだ。
サッとアオイに向き直って彼女の手をとる。
「で、名前はなんていうの?」
「アオイです」
「アオイ……アオイちゃんか」
モリアーティは彼女にくっつくように座りなおした。
ホームズの眉間にいっそうシワが寄る。
私の頭の奥で危険を知らせる鐘が鳴った。
これ以上彼を刺激したら、モリアーティに鉛玉をVRの形に撃ち込むかもしれない。バリツで窓から突き落とすかもしれない。
モリアーティは素知らぬ顔で彼女の耳元に唇を寄せ、何事か囁いた。
「…………」
アオイは顔を赤らめて視線を伏せた。
「はははっ。かわいいねぇアオイちゃん」
確かに、その困った表情は保護欲をかきたてられるというか、思わず抱きしめたくなるほどだ。
それだけにホームズが気になり、横目で確認する。
彼の手が、拳が、細かく震えていた。
警報発令中だと気づいた私は青くなった。
彼が立ち上がり、有無を言わせない調子で告げた。
「ワトソン君! そろそろお帰りだ!」
「そうか! それは残念だ!」
二人がかりでモリアーティを立たせた。
ホームズが自ら事件を起こすような事態は何としても避けたい。
「えー、もうちょっと話をしたいなぁ。まだアオイちゃんのこと何も聞いてないし……」
モリアーティは未練がましくアオイを振り返ろうとした。
「いやー、実に名残惜しい!」
「君も忙しいだろうから引き留めないよ、元気でな!」
我々はモリアーティの言葉をかき消すように声を張り、両わきをガッチリ抱えて振り向かせない。
そのまま階下の玄関に向かい、ドアの外へ放り出す。
「ひどいなぁ。僕は客だろ?」
モリアーティはヘラヘラと笑う。
「ヤードに送った犯罪者全員を招待した方がまだマシだ!」
「今度アオイに近づいたらただじゃおかないからな!」
二階のアオイに聞かれない程度の声で警告する。
「あ、待ってください」
アオイが降りてきたので、ホームズも私も口をつぐんだ。
「私もお見送りを」
アオイは私とホームズの間に割って入ってきて、モリアーティに優しく声をかけた。
「また、いらしてくださいね」
余計な一言だった。
モリアーティは勝ち誇ったような笑みをホームズに残して、ゆっくりと通りの向こうへ姿を消した。
終わり
モリアーティがアオイに訊ねた。
「あ……」
「言わなくていい!」
ホームズがピシャリと遮ったが、モリアーティを彼の古い友人だと思っているアオイは少し怒った顔をした。
「せっかくお友達がわざわざ訪ねてきてくださったのに、そんな言い方はないんじゃないですか?」
「そうそう、彼女の言うとおりだよホームズ君」
「友達じゃないだろう!」
「ひどいな。僕は悲しいよ……」
モリアーティが落胆の色を見せると、アオイは気の毒に思ったのかモリアーティの隣に座りなおして言った。
「ごめんなさい、ホームズさんは素直じゃないから。本当は会えて嬉しいんですよ」
「君は優しいんだね」
モリアーティは微笑んだ。
サッとアオイに向き直って彼女の手をとる。
「で、名前はなんていうの?」
「アオイです」
「アオイ……アオイちゃんか」
モリアーティは彼女にくっつくように座りなおした。
ホームズの眉間にいっそうシワが寄る。
私の頭の奥で危険を知らせる鐘が鳴った。
これ以上彼を刺激したら、モリアーティに鉛玉をVRの形に撃ち込むかもしれない。バリツで窓から突き落とすかもしれない。
モリアーティは素知らぬ顔で彼女の耳元に唇を寄せ、何事か囁いた。
「…………」
アオイは顔を赤らめて視線を伏せた。
「はははっ。かわいいねぇアオイちゃん」
確かに、その困った表情は保護欲をかきたてられるというか、思わず抱きしめたくなるほどだ。
それだけにホームズが気になり、横目で確認する。
彼の手が、拳が、細かく震えていた。
警報発令中だと気づいた私は青くなった。
彼が立ち上がり、有無を言わせない調子で告げた。
「ワトソン君! そろそろお帰りだ!」
「そうか! それは残念だ!」
二人がかりでモリアーティを立たせた。
ホームズが自ら事件を起こすような事態は何としても避けたい。
「えー、もうちょっと話をしたいなぁ。まだアオイちゃんのこと何も聞いてないし……」
モリアーティは未練がましくアオイを振り返ろうとした。
「いやー、実に名残惜しい!」
「君も忙しいだろうから引き留めないよ、元気でな!」
我々はモリアーティの言葉をかき消すように声を張り、両わきをガッチリ抱えて振り向かせない。
そのまま階下の玄関に向かい、ドアの外へ放り出す。
「ひどいなぁ。僕は客だろ?」
モリアーティはヘラヘラと笑う。
「ヤードに送った犯罪者全員を招待した方がまだマシだ!」
「今度アオイに近づいたらただじゃおかないからな!」
二階のアオイに聞かれない程度の声で警告する。
「あ、待ってください」
アオイが降りてきたので、ホームズも私も口をつぐんだ。
「私もお見送りを」
アオイは私とホームズの間に割って入ってきて、モリアーティに優しく声をかけた。
「また、いらしてくださいね」
余計な一言だった。
モリアーティは勝ち誇ったような笑みをホームズに残して、ゆっくりと通りの向こうへ姿を消した。
終わり
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